五代 龍村平藏 襲名記念展(展示・販売)
1894年(明治27年)に織物業を創業し、古代織物の研究と復元、それを基盤としながら「美術織物」という新しい分野を確立した龍村美術織物。「織りの技法に創意工夫を加えた創造」と「古の織物を徹底的に研究する復元」の二つの世界に没頭した初代 龍村平藏の作品は、かの有名な文豪 芥川龍之介氏に「おそるべき芸術的完成」と言わしめ、その精神と技は、大正、昭和、平成、令和と時代を超えて受け継がれています。
1927年(昭和2年)に、高島屋は初代 龍村平藏の展覧会を開催以降、90有余年、四代にわたる龍村平藏の織物美をご紹介してまいりました。そしてこのたび、「五代 龍村平藏 襲名記念展」を日本橋高島屋で開催し、五代平藏が襲名のメッセージを込めた作品はじめ、新たな作品の数々を展示・販売いたします。
また、五代平藏は、「あらゆるジャンルと共創したい」との思いから、4名の作家(ガラス工芸作家、表具師、木目込み作家、日本画家)とコラボレートした新たな作品づくりに挑戦。
美術織物をアート作品としてとらえ日本画界の若手人気作家、福井江太郎氏とコラボレートした“鑑賞する錦帯”をはじめ、見る角度により変化する織物の美しい表情を楽しんでいただける「木目込みオブジェ」、織物を飛び出しデザインだけがガラスと融合した「呼継ガラス」(ガラス工芸)、織物表現の可能性に挑んだ「アートパネル」など、五代 平藏ならではの感性によって実現した、織物とアートのコラボレーションによる新たな魅力を発信いたします。「最高之品質」を継承しながらも、美術織物の革新と創造をめざす「五代 龍村平藏」の新たな世界をご覧いただけます。
株式会社龍村美術織物 代表取締役社長
1973年生まれ。1997年日本大学文理学部心理学科卒業。
2007年龍村美術織物入社。2012年取締役、2016年常務取締役を経て、2019年代表取締役社長に就任。
「この度、五代 龍村平藏を襲名するにあたり、襲名記念コレクションに相応しい柄とはどんなものかを考えた時、ものづくりに対する、代々の平藏の考えを踏襲しつつも、それだけにとどまらない、力渦巻き躍動感あふれる思いを世に発散・解放したい心境を「和の躍動 和の解放」というメッセージのもと表現したいと思いました。錦上での、いわゆる喜びの所信表明です。」
~五代 龍村平藏 × 日本画家 福井江太郎 コラボレーション作品~
五代 龍村平藏と、気鋭の日本画家 福井江太郎氏による、織物とアートがコラボレーションした、まさに“鑑賞する”錦帯。年齢も近く、共に、正統をバックボーンに持ちながら伝統の枠にとどまらず、それぞれ織物と日本画の未来を切り拓く二人。日本橋高島屋限定の、夢のコラボレーション作品として実現しました。福井江太郎氏にとっては、自らの絵が織りとなる初めての経験となった“着る美術品”は、帯をアートとして鑑賞しても、身に着けても楽しい、新たな価値を発信いたします。
左)誕 162万8000円 元原画名: 福井江太郎作 「玭」SEI
右)躍 168万3000円 元原画名: 福井江太郎作 「花・燦」
1969 年 生まれ。
1995年 多摩美術大学大学院美術研究科修了
1996年 初の個展を銀座で開催(以降、毎年開催)
2004年 平成15年度文化庁買上優秀美術作品に選出される
2006年、13年 紺綬褒章受章
2018年 高島屋のお中元・お歳暮のビジュアルイメージを担当
日時:11月23日(土)午後3時/会場:日本橋高島屋8階催会場
※入場無料・先着順 (約40分)
【アートパネル】
掛け軸や表装の世界をアートの域にまで昇華させた新進気鋭の表具師・井上光雅堂(いのうえこうがどう)とのコラボレーション作品を制作しました。
・龍吟(りゅうぎん)
中国の工芸品からインスパイア。質感の異なる多種の糸を使用し、コンパクトながらレリーフのような立体感を表現しました。 サイズ(cm)W43×H27×D3 165万円
【木目込みオブジェ】
織物は平面と思われがちですが、経糸と緯糸が交差組織した立体物です。その立体感を更に際立たせるためにオブジェに仕上げ、見る角度により変化する織物の美しい表情を楽しんでいただけるようにいたしました。オブジェのモチーフはいずれも人形師 幸一光(こういっこう)氏がデザインした「吉祥をつかさどる動物」を用いて、ハッピーアイテムとして制作いたしました。
・anima犀(大)(あにまさい)
正倉院の宝物裂の中にもモチーフとして登場し、「宝尽くし」文様の中でもその角を用いて作った犀角杯が描かれるなど吉祥の象徴とされてきた「犀」。その愛らしくも神秘的な姿を、美術織物をまとったオブジェに仕上げました。 サイズ(cm)W38×H20×D16 38万5000円
【呼継ガラス】(よびつぎガラス)
四代平藏の時代から親交のあるガラス工芸作家 西中千人(にしなか ゆきと)氏とのコラボレーション作品。西中氏の作品は一度制作した作品を叩き壊し、またその破片を組み上げていく「呼継(よびつぎ)」により制作されています。いわば「破壊と再生」です。五代のスローガン「和の躍動」「和の解放」にも通ずるその手法に共感し今回のコラボレーションとなりました。織物を飛び出し、デザインだけがガラスと融合し、「和の躍動 」「和の解放」をガラスの煌めきとともに表現いたします。
・呼継大皿 ぎやまん真葛 (よびつぎおおざら ぎやまんまくず)
襲名記念柄「彩釉鳳凰錦」をモチーフに、鳳凰に描かれた吉祥文様と、
ビビッドでエネルギッシュな暖色系の呼継で「和の解放」を表現しました。
サイズ(cm)直径39×高さ11.5 110万円
「あらゆるジャンルと共創したい」と願う五代。京都の老舗「亀屋良長」と、初代の代表作「威毛錦(おどげにしき)」から着想を得た上生菓子。 1個627円
販売場所:8階催会場 「五代 龍村平藏 襲名記念展」にて
販売日時:11月22日(金)午後4時30分から販売予定
※1日限りの限定販売
宝来帆船図 (ほうらいはんせんず) 袋帯
ジャカード織機と、綴織(※)の両方の良さを兼ね備える「紋綴錦」を、今回は技術継承も兼ねて、初代作の紋綴の意匠に創意を加えて制作しました。配色は龍村らしさは残しつつ、特に波の色と船上の宝を彩る「挿し色のバランス」にこだわって、フォーマルきものに合わせやすい作品に仕上げました。五代平藏の襲名への思いに相応しく、勢いの良い船出を祝する柄です。 371万8000円(税込み)
(※)ジャカード装置で経糸の上げ下げを制御するジャカード織機に対して、人の手で経糸をすくって緯糸を織り込んでいく技法が綴織。この両方の良さを兼ね備えるのが紋綴です。
画像下左) 瑞雲麗峰錦 (ずいうんれいほうにしき)
歴代平藏の面影は残しつつ、今まであまり取りあげてこなかったモチーフを、五代平藏なりの感覚で仕上げた、高揚感・躍動感・力の漲りを渦巻き湧き立つ瑞雲で表現。浮世絵の雲、風景写真の雲、欄間の彫刻の雲、自身で見た夏空の雲の塊…ここに織り出されている雲はそれら全てが混ざり合った心象風景を表現しています。 220万円(税込み)
画像下右) 彩釉鳳凰錦 (さいゆうほうおうにしき)
鳳凰が一羽佇んでいる姿が凛としていながら何とも愛らしい、二代宮川香山作の茶道具(水注)をモチーフにしました。織物の制作においては、特に光の当たり具合、釉薬と陶器の質感、鳳凰の眼の表情にこだわり、金銀糸、漆糸、色糸を駆使して完成。龍村錦帯にはモチーフを錦上にまるで実物そのもののように表現する「~が如く」というものがあり、その表現方法を取り入れました。 176万円(税込み)
古代神獣文 (こだいしんじゅうもん)
古代の架空の猛獣「饕餮(とうてつ)」を模した青銅器がモチーフ。この意匠を見た五代平藏は、可愛らしくもあると感じましたが、「魔物・不吉までも食べてしまう魔除け」の願いが込められていることを知り、神々しい金銀で立体的に表現、この帯をお締めいただく方の守り神になってもらおうと考え制作した作品です。151万8000円(税込み)
聚宝錦 (しゅうほうきん)
これまで龍村が復元した大名物唐物肩衝茶入 銘「安国寺」の仕覆8点の中から「萌黄地宝尽し織金錦」をモチーフに帯にしました。本歌の意匠そのままではなく、輪郭のみを抽出して表現し、素朴になり過ぎないようグラデーションや色の切り替えを施すことで、宝尽くしの文様がデジタル画面を浮遊するようなシャープで洗練された表情に仕上がりました。 74万8000円(税込み)
アートパネル/現代空間に映えるORIMONO作品名「Weaving Waves Ⅰ」
代々の平藏は古代裂の復元から新たな表現方法のヒントを得てきましたが、五代平藏が「帯」以外の新たな分野に挑戦するのが「アートパネル」です。
自身が好きな夏丸帯のひとつである「絽金藻魚かご紗(ろきんもうおかごしゃ)」(川面を透け感のある捩り織り「紗」で、そこに泳ぐ小魚を「絽金」で表現した涼やかな織物)の織り技法を再解釈し、現代に通じるアートとして考え制作しました。水面の表情をテーマに、「絽」「紗」とならぶ「羅」を用いて、経糸は職人による絶妙なグラデーションで、パネル台には新進気鋭の表具師が金銀箔で羅織りにアクセントを加えることで、自身がいつか訪れてみたいと思っているリゾート地、イングランドのワイト島の穏やかな海岸線を表現した作品です。 価格:385万円 縦85cm×横65cm
龍村錦帯とは
「龍村錦帯」は、1927年(昭和2年)に「第一回錦帯作品展」を開催して以来90有余年、龍村平藏と高島屋が、膨大な資料の中から蘊蓄を傾けて制作してきた高島屋オリジナルの帯であり、美術織物の最高峰を志すブランドとして現在に受け継がれています。
龍村と高島屋のゆかり
龍村と高島屋は、1897年頃(明治30年頃)、創業間もない龍村を高島屋が支援し、初代平藏の叔父が経営していた「丸亀屋」を丸ごと譲り受ける形で高島屋が大阪へ進出するなど、深い関わりと長い歴史があります。この大阪出店は高島屋が飛躍する一つの契機となり、平藏にとっても織物業の拡大を果たす好機となりました。 1927年(昭和2年)、高島屋で「第一回錦帯作品展」を開催。戦後は1955年(昭和30年)に高島屋創業125周年記念催として復活「龍村平藏作錦繍美術展」を開催。
さらに1956(昭和31年)の大阪店新館完成時には龍村コーナーを開設するなど、龍村と高島屋はますますその結び付きを強くして行き、「龍村平藏作錦帯」はオリジナルブランド「龍村錦帯」として今日に至っています。
新宿店: 12月11日(水)~17日(火) 11階呉服サロン
※五代 龍村平藏のインタビューなどを以下のURLからご覧いただけます
https://www.takashimaya.co.jp/store/special/gofuku/tatumura.html
【お問い合わせ】日本橋高島屋 03‐3211‐4111(代表)