大手百貨店、第3四半期も増収増益
大都市、特にインバンドの多い地域がけん引している
大手百貨店の2024年度第3四半期は、引き続き増収増益となった。コロナ禍明けのリベンジ消費は一巡したが、訪日客の旺盛な消費が続いている。国内客の売上げも、都心店を中心に堅調な推移となった。数年来進めてきた構造改革が奏功し、営業利益や純利益は前期より4~5割増加している。
三越伊勢丹、営業利益と経常利益が過去最高
三越伊勢丹ホールディングスの連結業績(4~12月)は総額売上高が9786億円(前期比7.5%増)、売上高が4174億円(3.9%増)、営業利益が599億円(46.4%増)、純利益が464億円(49.4%増)となった。重点戦略である「高感度上質戦略」「個客とつながるCRM戦略」が奏功し、増収に寄与した。販売管理費は1950億円で、経費構造改革などによって前期比1.3%減を記録。営業利益と経常利益は共に08年の経営統合後で最高となった。
百貨店事業は総額売上高が9099億円(7.5%増)、売上高が3478億円(3.2%増)、営業利益は498億円(45.8%増)。国内の主力店舗のうち伊勢丹新宿本店の総額売上高は14.0%増の3149億円で、通期で3000億を超えることは稀だったが、第3四半期で超過した。インバウンドが好調な三越銀座店も927億円(20.6%増)と大きく伸長。三越日本橋本店(1226億円、6.4%増)、札幌丸井三越(463億円、2.8%増)、名古屋三越(475億円、3.2%増)、岩田屋三越(1909億円、9.1%増)も好調に推移した。
J.フロント、インバウンドが回復
J.フロント リテイリングの連結業績(3~11月)は総額売上高が9141億円(11.6%増)、売上収益が3159億円(10.3%増)、営業利益が511億円(66.7%増)、純利益が370億円(71.4%増)となった。うち百貨店事業は総額売上高が5901億円(11.2%増)、売上収益が1870億円(11.1%増)、営業利益が252億円(53.8%)だった。
百貨店事業は、外商や免税売上げが堅調に推移したことなどが増収につながった。免税売上高が好調な心斎橋店(21.6%増)や京都店(14.4%増)に加え、売場改装を実施してきた神戸店(8.2%増)、札幌店(16.7%増)、ターミナル店舗である東京店(8.4%増)などがけん引した。改装中の名古屋店は工事の影響があったものの、第3四半期累計で4.9%増、9~11月で1.0%の増収となっている。
免税売上高は為替の影響などにより一時減速したものの、月が進むごとに回復し、9~11月で27%増だった。12月に入り来店客数は増加基調となり、さらに伸長する見通し。販売費および一般管理費は、主に人件費、修繕費、売上比例経費の増加などで、前期より11億円増加した。名古屋店の改装に伴う修繕費は第4四半期にも計上を見込む。
高島屋、国内売上げは高額品がけん引
高島屋の連結業績(3~11月)は総額営業収益が7543億円(10.5%増)、営業収益が3617億円(8.2%増)、営業利益が415億円(25.0%増)、経常利益が418億円(16.8%増)、純利益が260億円(7.5%増)だった。うち国内百貨店業は営業収益が2302億円(8.6%増)、営業利益が206億円(41.0%増)と増収営業増益だった。
国内百貨店のうち、全体売上高の約85%を占める国内客は3.7%増となった。国内客の売上高は外商(6.6%増)や高額品(9.7%増)に加え、外商以外(2.4%増)やファッション(3.0%増)も伸長。主要取引先との正価品の品揃え強化策が効果を発揮した。免税売上高は第1四半期が329億円、第2四半期が292億円、第3四半期が250億円で累計871億円。24年2月期(687億円)を上回り、過去最高を更新した。
商品利益率は22.22%で、前期比0.41ポイントの低下。利益率の低い高額商品の売上高が大きく伸長するなど、商品構成比の変化による影響が出た。しかし商品利益額は売上高の増加によって前年を上回っている。販管比率は19.6%で、前期より1.2ポイント改善した。
阪急阪神百貨店、第4四半期は改装で下方修正
エイチ・ツー・オー リテイリングの連結業績(4~12月)は総額売上高が8740億円(9.0%増)、売上高が5149億円(3.9%増)、営業利益が289億円(30.4%増)、純利益が374億円(110.7%増)となった。うち百貨店事業は総額売上高が4816億円(13.4%増)、営業利益が233億円(52.3%増)だった。
百貨店事業の国内売上高は3%増、インバウンドは90%増と引き続き好調だった。免税売上高は第3四半期累計で約1000億円となり、24年3月期の800億円を上回った。通期見通しは、前回予想の1260億円から1300億円に上方修正した。店舗別では阪急本店、博多阪急を中心とした都心店が伸長。販管費は売上げ連動の経費が増加したものの、計画内の数値となった。
第4四半期(1~3月)は阪神梅田本店と川西阪急が改装工事に入るため、百貨店事業は減益を見込む。総額売上高は1499億円(1.7%減)、営業利益は37億円(6億円のマイナス)の見通し。通期の予想は総額売上高が6315億円(9.4%増)、営業利益が270億円(9億円のプラス)で、昨年11月に発表した予想よりそれぞれ30億円、9億円上方修正した。
(都築いづみ)