コーセー、インド化粧品会社に出資 市場開拓を加速
コーセーは15日、インドで急成長中のスキンケアブランド「foxtale(フォックステイル)」を手掛ける同国のFoxtale Consumer Private Limited(以下、フォックステイル社)への出資および戦略的提携の締結を発表した。コーセーは14日付でフォックステイル社の発行済み株式の10%を取得するとともに、両社で近く合弁会社を設立。新しいブランドの開発などに取り組む。コーセーは2013年にコーセーインディアを立ち上げ、14年からは同国専用のスキンケアブランド「Spawake(スパウェイク)」を展開するなど、早くから市場を開拓してきた。売上げは新型コロナウイルス禍を除いて右肩上がりだが、近年は同国の急激な経済成長を背景に国内外の多くのブランドが参入。競合が激化しており、フォックステイル社との提携で成長力に弾みを付ける。
コーセーは中期戦略でASEANやインドなどグローバルサウスの市場開拓に注力し、その一環として「地域に根付いたブランドの新たな獲得」を掲げる。昨年12月には「パンピューリ」の名称で化粧品やフレグランスなどの販売、スパサービスなどを手掛けるタイのピューリ社を買収しており、フォックステイル社への出資は第2弾に当たる。
コーセーが15日に開いたインド戦略発表会で、牧島伸彦アジア事業部グローバルサウス事業戦略部長は「インドの24年の化粧品市場は約2.6兆円に上る。当社は14州・68都市でリアル店舗を中心にスパウェイクの商品を販売し、売上げはコロナ禍を除いて右肩上がりだが、プレミアムマス市場やプレミアム市場を中心に競合が激化。特に19年以降はインドのローカルブランドが相次ぎ参入し、急成長を遂げている。(コーセーが進出してから)10年間で市場が大きく変化し、この先も厳しい展開が予想される。攻略のスピードを上げるため、フォックステイル社との提携を決めた」と説明した。
フォックステイル社に白羽の矢を立てた理由は、優れた商品力と成長性だ。「美容液をはじめ、特長のあるスキンケアを揃える。販売開始は22年だが、売上高は24年3月期が24億円、25年3月期には56億円を見込む。(好業績を評価して)インド内外のベンチャーキャピタルにも支援されている」(田中健一経営企画部副部長)。牧島氏は「フォックステイルのSKUは20ほどと少ないが、インターネット通販サイトではリピーターが50%もいる。すなわち、お客様の情報をしっかりと持っており、“深いデータ”に基づく商品開発が強みだ。これだけのSKUで、これほどの売上げを確保するブランドはない」と称賛する。
また、小林一俊社長は「群雄割拠の市場で、フォックステイル社はデータに裏打ちされたマーケティング力で売上げを伸ばしている。最も感心したのは、Romita Mazumdar(ロミータ・マズムダール)CEOの志の高さと誠実さだ。(ロミータ氏から経歴などを聞いて)コーセーの創業者、小林孝三郎の言葉を聞いているかのような感覚だった。ゆえにトントン拍子に話が進んだ。フォックステイル社はデジタルネイティブ世代へのマーケティングを行っており、メンバーは高い能力とデータを駆使して経営している。コーセーの強みである『感性』との違いも興味深く、補完し合えると判断した。両社にはお客様志向を徹底するなどの共通点もある。両社の強みを掛け合わせて新しい挑戦ができる。インド市場における10年後を見据えた1歩」と力を込めた。
ロミータCEOは「起業以来、人生で最も大きな決断の1つだ。コーセーとの提携でマーケットシェアを拡大したい。インドでは教育の高度化、所得の向上などを背景に、プレミアムマス市場やプレミアム市場にまだまだ伸びる余地があり、コーセーのR&Dやブランド力といった強みが生きる」と期待を膨らませた。
両社が目指すシナジーは、主に①売上アップサイド②価値創出③コスト低減――の3つだ。①はフォックステイル社の「インド人の肌に合わせた製品のニーズ探索」とコーセーの「要望に合わせた多種多様な製品開発」を、②はフォックステイル社の「データを駆使した営業とデジタルマーケティング」とコーセーの「長年培った研究開発による信頼できるデータ」を、③はフォックステイル社の「インド国内における自社倉庫活用」とコーセーの「スケールメリットを享受するグローバル調達」を、それぞれ掛け合わせて実現させる。
合弁会社の設立時期は明言を避けたが、小林社長は「できるだけ早く。商品のコンセプトからパッケージまで、すでにロミータCEOからユニークなアイディアをもらっており、非常にスピード感がある。それを大変魅力に感じている。合弁会社では新しいブランドをつくるとともに、スパウェイクを立て直す」とした。
(野間智朗)