2025年 百貨店首脳 年頭所感・参
<掲載企業>
大丸松坂屋百貨店 社長 宗森 耕二
円安の進行や国際航空便の増便も寄与し、訪日外国人客数の増加傾向は継続、また富裕層の活発な消費のけん引により個人消費は回復に向かう一方で、世界情勢不安や頻発する災害・物価高などによって国内経済の先行きが不透明である中、当社グループでは2024年~26年を飛躍的成長への「変革期」と位置付け、新たな中期3カ年経営計画において、リテールの進化・シナジーの深化に取り組んでおります。
新中計の初年度となった昨年は、私共大丸松坂屋百貨店にとりまして、新たな一歩を踏み出した年となりました。11月に第1期改装リニューアルオープンした松坂屋名古屋店は、次世代顧客へのアプローチを主軸に置いてファッションフロアを中心に8フロアを大幅に刷新し、加えてアートを随所に取り入れた上質で快適な環境の店舗に大きく生まれ変わりました。当社が考える新しい百貨店像を具現することができ、引き続き多くのお客様に足を運んでいただくことを目指していきたいと考えています。
百貨店の経営環境は厳しさを増している状況ではございますが、消費に対するお客様の価値観の変化に柔軟に対応していくことが勝ち筋であると、私共は確信しております。中期経営計画では「ヒューマン力を発揮し、心躍る体験価値を創造する」ことを基本方針に掲げ、これまで培ってきた百貨店の「店舗」と「人」が持つ強みを基盤に、2年目の本年はさらなる体験価値・ワクワクするコンテンツの魅力化を図り、当社独自のポジションを確立してまいります。
次世代向けにアートや香り、D2Cコンテンツなどを新たに発掘することでMZ世代の支持を獲得でき、加えて店舗を展開している各地のコンテンツを発掘・開発することで地域を応援する社会貢献活動「Think LOCAL」も活発化してきています。携わる従業員それぞれが圧倒的なWILL(情熱、意思)と行動力を発揮し、本年は質・量共にコンテンツのさらなる拡充を図ってまいります。
またヒューマン力とデジタルのタッチポイントを組み合わせ、クローズドサイト「コネスリーニュ」での若年富裕層へのアプローチ強化や海外客の固定客化を目指したCRM基盤の構築をスタートするなど、さらなる顧客のLTV拡大に取り組みます。
人的資本経営の必要性が高まる中、当社では従業員を重要な価値共創パートナーと位置付け、一人一人のWILLに寄り添った「従業員エンゲージメントの向上」に向けて、取引先を含む全ての従業員にとって働きやすく魅力ある労働環境の構築の一環として1月2日を休業日としました。事業戦略を推進していく上で、人財の活躍・確保は必要不可欠との認識の下、今後も従業員の持てる力を最大限に発揮するための制度や環境整備を進めてまいります。
津松菱 社長 谷 政憲
2024年は、地域に根差した百貨店としての在り方を見詰め直し、新たな挑戦を続ける1年となりました。
2月、「イオン津ショッピングセンター」の長期休業に伴い「ダンススタジオ・ビーボックス」が当店の7階に移転オープンしました。これまで接点の少なかった、地域の若年層にも来店いただくきっかけとなりました。
6月には、中元ギフトセンターで能登半島地震の復興支援を目的としたコーナーを特設しました。北陸地方の百貨店、取引先の協力を得て、復興への思いが込められた商品を販売し、多くのお客様に購入いただきました。収益の一部は関係機関を通じて寄付し、復興支援活動に役立てていただきました。
8月は気候変動や自然災害などの影響が来店客数に大きな影響を与え、24年の中でもとりわけ厳しい月となりました。月初めに宮崎県沖で発生したマグニチュード7.1の地震を受け、気象庁が初めて南海トラフ地震の臨時情報を発表。地域全体に緊張感が広がり、お客様が外出を控える傾向がみられました。さらに、台風10号による記録的な大雨も重なり、来店客数に甚大な影響を与えました。
10月には、移動販売車「松菱マッピー号」が三重大学の学園祭に出店しました。店舗に足を運ぶことが難しいお客様に商品を届ける新しいサービスとして始まったプロジェクトですが、若い世代に百貨店の魅力を伝える新たな試みとなりました。
12月には4階の紳士服売場に「食べる本屋さん」をオープンしました。「知識を食べるように本を読んでほしい」というコンセプトの下、全国各地の出版社が厳選した書籍とくつろぎの空間を提供しています。この新しい空間は、読書を楽しみながら人と人がつながるコミュニティサロンとしての役割を担い、地域のお客様に好評をいただいております。
さて25年ですが、当店は創業70周年を迎えます。地域唯一の百貨店として、これからも地域の皆様と共に歩み続け、信頼される存在であり続けたいと考えています。地方百貨店にしかできない、お客様との密なコミュニケーション、相互の理解と信頼を強めながら、地域のニーズに応え、不便を解決する「ありがとうと言っていただける百貨店」を目指してまいります。
地域社会に貢献しながら、百貨店の公益性をより一層高めてまいります。企業として利益と理念を両立し、社会の役に立つ活動を通じて持続可能な事業を展開していきます。
近鉄百貨店 社長 梶間 隆弘
昨年の我が国の経済は、世界的な金融引締めや中国経済の減速など、海外における経済政策の不確実性や地政学的リスクの影響があるものの、雇用・所得環境の改善を背景に、景気は緩やかな回復基調をたどりました。
百貨店業界におきましては、大都市を中心に円安効果などによる訪日外国人旅行者の増加に伴い免税売上げが過去最高を更新したほか、特選洋品を中心に高額商品が好調に推移しました。
このような状況の中、当社グループは中期経営計画に基づく諸施策を強力に推進するとともに、各事業における収益力向上に懸命の努力を払いました。
まず「あべの・天王寺エリアの魅力最大化」の取り組みとして、昨年3月7日に開業10周年を迎えたあべのハルカス近鉄本店においては、10周年を記念した限定商品の展開や特別なイベントを全館で開催したほか、国内外問わず広域から多くのお客様に来店いただける都市型総合百貨店を目指し、特選ブランドのリニューアルを実施しました。
また、フランチャイズ運営による新業態としてベーカリー&カフェ「KAFFE OTTE」やホームセンター「カインズ」を導入し、さらなる収益力の強化を図りました。ハルカスダイニングの拡充を図るため、自主事業として5店舗目となる「24世紀ラーメン」を出店しました。
次に「地域中核店・郊外店のタウンセンター化」の取り組みとして、地域生活に「なくてはならない存在」を目指し、地域特性に応じた改装を実施したほか、専門店の導入やフランチャイズ運営売場の積極的な拡充により、収益力の安定とローコスト運営への転換を図るなど、事業構造改革を推進した結果、安定的な利益を残すことができる体制への変革が進んでいます。
これらの諸施策を推進した結果、全店舗で営業黒字を確保し、最終的に40億円超の営業利益を生み出すことができる企業へと変革することができました。そして、本年4月には「新中期経営計画(2025-2028年度)」を発表します。新中期経営計画ではさらなる成長のため、様々な施策に取り組みますが、その中でも核となるのは旗艦店であるあべのハルカス近鉄本店と外商部門であると考えており、この機会に少しだけ述べさせていただきます。
まず、あべのハルカス近鉄本店においては、国内外問わず、広域から多くのお客様に来店いただける都市型総合百貨店としての価値を向上させるため、ラグジュアリーブランド、高感度ファッションの強化や上質なライフスタイルの提案を行うほか、食品売場においては何度も来店したくなる「日本一のデパ地下」を目指し、旗艦店として常にお客様から期待される店に進化させてまいります。さらには、本店を中心として、Hoop、and、てんしば、本年夏頃開業予定の医療モールがそれぞれのコンセプトを明確にし、強固に連携することによりエリア全体の活性化を図り、キタ・ミナミに負けない「個性」を確立してまいります。
次に外商部門においては、全社顧客情報を外商の中に組織化し一元化することにより、富裕層ビジネスへの取り組みを強化します。そのために、DXを活用したサービスを含め、ロイヤルカスタマーに対してはよりきめ細やかな接遇・サービスを行い、これまで以上に満足いただける商材を発掘し提案していきます。
そのほか、新中期経営計画に盛り込もうとしている諸施策を進めていく上で、様々な体制整備が重要であると考えており、そのために人財とDXへの投資を重点的に行います。特に人財の確保や労働生産性、モチベーションの向上のため、人事制度の抜本的な改正など、人的資本への投資は不可欠です。さらには、新しいビジネスに挑戦したい方々から企画提案を募集する「新規事業提案制度」を導入し、積極果敢にチャレンジできる企業風土の醸成にも取り組みます。
そして、2036年の創業100周年の節目には、長期ビジョンで掲げる「くらしを豊かにするプラットフォーマー」として、例えば農業ビジネスのように、百貨店の枠にとらわれない新たなビジネスに挑戦するなど、事業ポートフォリオを再構築し、さらなる高みを目指します。
本年は巳年です。皮を脱ぎ捨て新たな姿に生まれ変わる様子から、蛇は古代から再生や永遠の象徴とされています。こうした意味から、巳年は新しい挑戦や変化に対して前向きな姿勢を示す年とも解釈されており、新中期経営計画の発表など、様々な新しいことに挑戦する当社にとって非常に良い年であると考えています。
京阪百貨店 社長 辻 良介
昨年はエネルギー価格や物価の高騰が家計を逼迫し、デイリー商材において価格にシビアな消費行動が多くみられ、我々のような郊外店にとっては非常に厳しい1年でした。温暖化の影響もあり、昨秋はなかなか気温が下がらず、衣料品での秋冬物の立ち上がりが不振で、食品でも鍋物商材の動き出しが鈍く、10月と11月の商売をどう組み立てるべきか、深く考えさせられました。
そのような中、食品では価格戦略として中価格帯の商品の充実に取り組み、秋口辺りからようやく手応えが出始めました。ファッションではアニメ・コミックの専門店「沼のたまり場」を直営でオープンし、「アルビオン」や「シェア ウィズ クリハラハルミ」などを導入。ブランド力のある取引先でもあり、お客様の反応は上々です。
9月には、枚方市駅において京阪グループが推進する再開発事業でレジデンス・オフィス・商業が複合する新施設「ステーションヒル枚方」が誕生し、その5区画へ出店しました。うち1区画には直営のコスメセミセルフ業態である「ナナイロボーテ」をオープンしましたが、取引先の開拓から従業員の教育に至るまでしっかりと準備してきた新規事業でもあり、今後の飛躍に期待をしています。
その一方で、近年は人材確保が大きな経営課題となっています。離職する従業員が後を絶たず、人手不足状態で補充もままならない状態です。まずは従業員の満足度を高めることが大切と判断し、7月に人事制度を大きく見直しました。若手から定年後の再雇用の従業員まで幅広い年代に対して手厚く処遇しました。
前述のような取り組みをしっかりと推進し、今年度もしっかりと営業利益を確保します。
さて本年ですが、おかげさまで開業40周年を迎えます。お客様のためにも、従業員のためにも、節目の年をぜひともいい年にしたいと意気込んでいます。そのためにも新型コロナウイルス禍で手付かずになっていた守口店の大改装を、大きく前進させたいと考えています。
具体策ですが、食品では面積を拡大し、ブランド力のある和洋菓子の取引先を積極誘致します。次世代顧客である30代や40代のお客様にも頻繁に足を運んでもらえるように、その顧客層にマッチしたMDを展開し、カフェなども併設するなどして、賑わいを創出したいと考えています。
そして、フルライン型の郊外型百貨店のどこもが直面しているアパレルの適正規模への縮小にもチャレンジします。これらの取り組みを実施し、守口店の地階~上層階の収支改善に決着を付けたいと考えております。
天満屋 社長 斎藤 和好
昨年、当社は創業195年を迎えることができました。この長い歴史を築き上げることができたのは、ひとえにお客様や地域の皆様、そして共に歩んで下さった取引先の支えと社員一人一人の努力があったからこそです。ここにあらためて、深い感謝を申し上げます。
昨年は、大きく社会が変化している中、これまでの地域の皆様からの信頼を基盤に、これからも永続的に地域貢献を行うことができる「新しい地方百貨店」の姿を掲げ、その実現を目指し取り組みを推進した1年でした。
地域連携事業部を新設し、これまで岡山県・鳥取県の13自治体、2大学と連携協定を締結しました。5つの自治体には社員を派遣して一緒に仕事をさせていただくなど、地域の皆様との対話を通じて課題を的確に捉える仕組みやネットワークを構築しています。今まで以上に地域の皆様の役に立つ提案ができることが重要だと考え、天満屋連結グループ、天満屋ストア連結グループ、丸田産業グループを合わせた計36社が、それぞれの地域のニーズに寄り添った取り組みを進めています。
本年は、当社グループの中核事業である百貨店事業が100周年という大きな節目を迎えます。1829年に小間物店として創業し、呉服店を経て、1925年3月10日に百貨店に業態転換しました。これまで百貨店として培ってきた歴史を受け継ぎながらも、変化にチャレンジするという決意を込めて「百貨年宣言~未来へのチャレンジ~」をテーマとして掲げ、次の100年に向けた新たな価値創造に挑戦していきます。
その取り組みの1つが、百貨店100周年の今年を「教育元年」として、人材の魅力を高めるための施策にさらに注力していくことです。販売技術や知識を高めることはもちろんですが、一人一人が自分自身の魅力や人間性を高めることで、お客様や地域に新しい価値を提供できると確信しているからです。
具体的には、「eラーニングアワー」として勤務時間内にeラーニングを学習できる時間と場所を設けることや、学びの対象を業務に直接関わらないものまで広げ、主体的な学びを促進する仕組みをつくることなど、教育制度の充実に取り組みます。
これからの100年も地域のお客様から愛される、そして地域に貢献できる人材を育成し続ける「人材の天満屋」を目指します。人を育て、地域を活性化し、業界を支えることで「新しい地方百貨店」の価値をより一層高めてまいります。
伊予鉄高島屋 社長 林 巧
日本経済は内需の改善や企業の設備投資の底堅さを背景に緩やかな持ち直しの動きがみられているものの、原材料の高騰による物価上昇や金融市場の変動、国内外の政治情勢の変化などの不安定要素が絡み合っており、依然として先行きは不透明です。
そのような中、昨年当社は百貨店としての特徴化や競合との差別化を図る一環として、特選ブランドや化粧品、アクセサリー売場の改装、顧客層の広い「無印良品」の導入などを通じて、リアル店舗の魅力化を進めました。「豊かなライフスタイル提案」をテーマにしたシーズン先行の商品展開や「ハンズ」「ニトリエクスプレス」も含む大型専門店とのシナジーを創出するプロモーションを実施するとともに、YouTube広告などのデジタル情報発信やコト消費にフォーカスした取り組みを実施しました。
しかし、地方においては大都市のようなインバウンド需要の増加がみられない中で、コト消費の拡大や都市部への消費流失が進行し、さらに取引先の退店発生も相まって、環境は一段と厳しさを増しています。今一度変化への対応力を高めるために、徹底してマーケットインにこだわった品揃えや外商をはじめとする顧客政策の見直しが急務と考えています。
迎える25年においても、さらなる百貨店の変革を求めて、ロレックスの拡大改装を契機として特選ブランドや婦人服、紳士雑貨、ライフスタイル雑貨などのリニューアルを継続し、本来の百貨店MDをブラッシュアップすることで、商圏内における独自性を際立たせるとともに、若年層やファミリー層を意識した品揃えも拡充し、大型専門店とのシナジーを一層高めていきます。
こうした売場づくりに合わせて、話題性あるポップアップやサステナブル企画の展開、体験型イベントと融合した商品提案など新たな価値提供に積極的に取り組み、訪れるたびに楽しさや新しい出会いを感じていただけるコミュニティの場を提案してまいります。
また、デジタル活用を営業活動における重要な戦略として位置付けて、顧客一人一人に寄り添った提案力の強化と関係の深化が不可欠であると認識する中で、地域の限定・特産の品揃えや売場プロモーションとの連携を図り、当社ECの特徴化を進めるとともに、既存媒体ではアプローチが不十分だった顧客層に対してデジタルチャネルを活用した訴求・広告宣伝を推進していきます。
さらに、YouTube を活用した動画広告の精度を高め、顧客の行動特性に合わせた発信を行うことで、新たな接点の創出を図ります。そして、本年はPOSシステムを刷新し、基幹システムの更新に着手する中で、営業から後方に亘る全社においてDXを拡大。効率化と効果的な組織運営に向けた取り組みを加速します。
これらを通じて、伊予鉄高島屋の企業価値を高め、変化するお客様ニーズに応えつつ地域社会と共に持続的に成長し続ける企業を目指してまいります。
鶴屋百貨店 社長 福岡 哲生
昨年、当社は「ADJUST~新しい価値観に順応せよ~」を営業指針に掲げ、変化する経済環境に対応するための取り組みを進めてまいりました。熊本では他の商業施設との競争が激化していますが、2024年は前年と同程度の業績を維持できました。
25年の初めには、新たな中期経営計画を策定します。本店を強化するため、ラグジュアリーブランド売場の改装などを進めます。また、不採算部門からの撤退や売場の再構築を通じて収益性の向上を図ります。
人材面では、大卒初任給を22万円に引き上げるなど、採用の強化を進めています。これにより優秀な人材を確保し、組織の活性化を図ります。3月には20人以上の新入社員を迎える予定であり、未来を担う若い人材の発想に期待しています。
さらに、安定した収益源の確保のため、社有地を活用したアパートの建設などを進めています。熊本の中心市街地の皆様と協力し、賑わいを創出する企画も行いたいと考えています。
今年の営業指針は「視点の多様化」と定めました。熊本は今、大きな転換期を迎えております。世の中の価値観が多様化する中、私達も従来の考え方を見直し、多様な視点を持って未来へ前進していきたいと思います。
山形屋 社長 岩元 修士
本年山形屋は創業275年、会社設立108年を迎えております。また2025年は当社がスタートさせた友の会「七草会」の発足100周年という記念すべき年でもあります。
昨年は新生山形屋として再スタートを切る年とし、ガバナンス強化のための株式会社山形屋ホールディングスの設立、企業グループの再編統合を経て、南九州における山形屋ブランド・営業力の最大化を図り、事業計画に基づく企業再生を進めるための基盤を固める年でした。9月には山形屋アプリを導入し12月末現在で約2万1000会員を獲得しており、デジタルコミュニケーションによる新規顧客獲得と新たな売上げの創出を実現、また10月には新規リーシングによる家電量販店と文具店を誘致し、専門性の高い品揃えで顧客満足度をアップ、これらを含め多くの新たなチャレンジを進めてまいりました。
本年はこのことを踏まえ「全従業員の参画による新しい山形屋を創る年」と、従業員との対話をさらに深め全員で考えを共有し、少数精鋭体制での効率最大化を図る取り組みの実行と、お客様のためにワクワクドキドキする商品提案やイベント企画などをお届けするための付加価値の創出を掲げ、店づくりそしてビジネスの本質を追求してまいります。
本年のテーマを「ときめく、時を。」といたしました。
ときめく気持ちには 前に進める強い力がみなぎります。お客様お一人お一人の豊かな暮らしの実現をお手伝いし、期待や喜びに添うことができるようにたくさんの「ときめく、時を。」創出し、従業員一人一人もお客様とと共に、ときめく空間を楽しむ時を紡いでまいります。
そして「お客様の喜びが私たちの喜び」という山形屋の揺らがぬ原点を起点に「地域の人々に愛される日本一の百貨店」「良い街の良い百貨店の実現」に向け、一歩ずつ着実に、かつスピードを上げて「百+1貨店」を私たちの手でこの地にデザインしてまいります。
日本百貨店協会 会長 好本 達也
昨年を振り返りますと、様々な出来事がありましたが、百貨店にとっては円安を背景としたインバウンドと、ラグジュアリーブランドや高級時計、美術・宝飾など高付加価値商材の増勢により、業界全体としては年間を通じてほぼ好調な1年であったと思います。
特にインバウンド業績につきましては高伸が続いており、年間の売上高、購買客数は共に調査開始以来の過去最高を更新しています。
このように好調な状況の下で新春を迎えられますのは喜ばしいことですが、一方では業績の地域格差が顕著であり、好調な都市店とは対照的に、地方の各店ではいまだ新型コロナウイルス禍前の水準まで回復していないという現実もあります。
地方店を取り巻く経営環境は、地域経済の停滞と共に厳しさを増しており、1社単独では解決困難な課題も多くありますので、その改善に向けて協会も何らかのお手伝いをしてまいりたいと考えております。
現在、当協会では4月から始まる新年度の事業計画を練っておりますが、その中の重点事業が3つほどございます。
第1には、先ほど申し上げたように私が会長就任後、強く関心を持っている地方百貨店に向けた取り組みです。私はこの半年間、数多くの地方百貨店各店を自ら回り、直接トップの皆様と意見交換を行うとともに、各社の若手社員ともコミュニケーションを取ってまいりました。各地域の課題や協会への要望など、色々と話を伺うことができましたので、新年度ではその情報を基に、地方店の活性化を意識した幾つかの事業を開始することを予定しております。
2番目としてはインバウンド対応。大都市において好調を続けるインバウンドの恩恵を地方にまで波及させるとともに、今後改正される消費免税制度についても、業界全体で混乱することなく確実に対処していきたいと考えています。
3番目はデジタル。本年度から協会内に設置した「百貨店DX勉強会」では、デジタル庁にも協力をいただきながら、現在、百貨店の未来像を検討しています。本年は一定の成果を出せるように、この取り組みを一層加速させたいと思います。
我が国の百貨店は、これまで様々な困難に遭遇しながらも、他に類のない業態価値を持って存在してまいりました。業界の存続が危ぶまれたコロナ危機も、業態特性を生かしながら何とか乗り切ることができました。当協会スローガンに掲げておりますが、“人の思い、人の力をつなぐ”という百貨店の使命が果たされた結果だと思います。さらにこれからも、百貨店は進化を重ねながら、豊かな消費生活の実現に一定の役割を担っていくものと信じております。