松屋、ラグジュアリーブランドの新ECサイト 店頭受け取りで混雑緩和へ
松屋は27日、新たなECサイト「matsuyaginza.com(マツヤギンザドットコム)」を本格稼働した。「プラダ」「ミュウミュウ」などラグジュアリーブランドを取り扱い、自宅配送と銀座店での受け取りが選べる。訪日客もターゲットにしており、店頭受け取りの場合はカウンターでの決済で免税手続きが可能。運営は子会社のMATSUYA GINZA.comが行う。
店頭にない商品も扱い、ブランド直営店との在庫連携も
現在は「ロジェ ヴィヴィエ」「セルジオ ロッシ」「イソップ」「トムフォード ビューティ」「ジョーマローン」など約50ブランド、約1500アイテムを揃える。カテゴリーは化粧品、婦人靴、婦人服、紳士靴、バッグ、ワインなど。1年後には約150ブランド、約5000アイテムの取り扱いを見込む。
中には、松屋銀座店で取り扱っていないブランドもある。在庫は各ブランドの路面店や在庫とも連携しているため、欠品による機会損失を防ぐことができる。
サイトは海外の客も利用でき、言語は英語、中国語も対応する。同店4階に新設したピックアップカウンターで商品を渡し、免税手続きもカウンターでの決済のタイミングで行う。日本居住者は自宅配送も可能。売上げは2025年度(25年3月~26年2月)で50億円、29年度は200億円を目指す。
インバウンド急増による、接客機会の減少に対応
こうした仕組みを取り入れた背景には、訪日客の急増がある。24年度上期は訪日客の売上げ増がけん引し、同店の売上高は過去最高を記録した。ただし、外国人客の増加に伴う国内客の接客機会の減少という問題があった。
古屋毅彦社長は「行列ができてしまったり、商品を見られなかったりと、色々な課題が日本のお客様に対してある」と述べる。特にエントリー層の接客機会の減少が深刻だという。同サービスによって店頭や免税カウンターの混在を緩和し、客の買い物時間を短縮すると同時に店頭の接客時間を確保する。
国内外の客とのタッチポイントを拡大する狙いもある。国内では地方客や若年層などの新客獲得を目指し、訪日客も会員にすることでリピーター化、囲い込みを図る。同社は中期経営計画(22~24年度)の目標の1つに「ID顧客(カード顧客)の活性化」を定めており、その一環でもある。
百貨店といえば、ラグジュアリーな空間や販売員によるおもてなしが強みとしてあり、同サービスは一見逆の方向性にも思える。これに対し古屋社長は「ある程度商品が決まっている方はサイトで予約してピックアップし、その後ショップに来ていただくこともできる。うまく使い分けていただければ」と語った。
なお松屋は以前にも、tab社と組み、同店で商品を受け取れるECサイト「tabモール」を14年11月にローンチしている。それは2年ほどで終了したが、スマートフォンの普及、訪日客の爆発的な増加といった情勢の変化を鑑み、再挑戦に踏み切った。
事業運営するMATSUYA GINZA.comは、今年1月に松屋の連結子会社として設立。会員制オンラインブティック「ミレポルテ」を展開するB4F社のEコマース事業を譲受し吸収した。松屋のマーチャンダイジングやマーケティング担当と一体で業務に取り組んでいる。
リアル店舗を核としたラグジュアリーな世界観のためのサイトであるため、既存のECサイト「松屋オンラインストア」は中元・歳暮、福袋などの用途に向けて引き続き運営し、併用していく。
(都築いづみ)