三陽商会、紳士服の新ブランド「ベイカー・ストリート」始動
2024/11/05 12:00 am
三陽商会は来春シーズン、紳士服の新ブランド「BAKER STREET(ベイカー・ストリート)」を立ち上げる。ブリティッシュテイストのカジュアルブランドで、現行の「ザ・スコッチハウス」の代替となる。ターゲットはアッパーミドル層(裕福な中間層)の50代をコアと定め、次世代層の30~40代の獲得も目指す。売上げ目標は初年度で年間25億円、3年目で30億円。
自社ブランド化でより迅速・柔軟化
バーバリー社とのライセンス契約で、1973年から展開していたザ・スコッチハウスは、今年12月に終了する。同ブランドは契約上の制約による上代価格の高止まり、顧客の高齢化などを課題に抱えていた。自社ブランド化によって商品企画や製造・販売、マーケティングに至るまで全てに関して自社内で完結できるようになり、迅速かつ柔軟に実行できるというメリットが生まれる。「今後のビジネスにおいて合理的であると判断した」と加藤郁郎副社長執行役員は語る。
タータンチェックをブランドアイコンに
ベイカー・ストリートのコンセプトは、「Quintessentially British Clothing with Humour」。顧客層は「上質で本物のトラッドを志向しつつ時代性や遊び心を大事にする大人の男性」を想定する。オリジナルのタータンチェック柄「BAKER STREET TARTAN」をはじめ、ブリティッシュテイストを感じさせるプリント柄などを用いて英国のこだわりを表現する。
BAKER STREET TARTANはブランドの顔となる意匠で、今回新たに開発した。加えて、英国を想起させるプリント柄や遊び心のあるディティール、ウルトラストレッチや超軽量、はっ水性など三陽商会ならではの技術を生かした高機能商品、ベーシックで上質な定番品などを特長としている。
こうした商品を打ち出すことで競合ブランドと差別化し、個性を際立たせる。タータンチェックはシャツ、カットソー、ニット素材のアイテムなど様々な商品に幅広いバリエーションで表現する。ブランドのロゴ意匠もプリントや雑貨、ボタンのディティールなどに取り入れ、認知度を高めていく。
なおブランド名は、三陽商会が1975~2003年に自社で展開していて商標権を持っており、コンセプトやイメージが近いことなどから使用を決めた。
エントリープライスを下げ、次世代層の獲得へ
中心価格帯はジャケットが3万9600円~7万1500円(税込み、以下同)、シャツが1万4300円~2万9700円、ボトムが1万8700円~3万3000円。高価格帯はザ・スコッチハウスから維持しているが、ポロシャツやカットソー、ボトムなどの定番品はエントリー価格を数千円低く設定し、次世代層などの新客獲得を狙う。
来春は、タータンチェックやプリント柄をミックスしたスタイリング、ブレザーなどオーセンティックなアイテムを中心にMDを構成。衣服を縫製した後に染色する「製品染め」を採用した、カジュアル感のあるアイテムも揃える。新客が手に取るきっかけとして、シューズや帽子、ソックス、ベルトなど雑貨の品揃えも拡充し、洋服の購買につなげていく。
販路は、現在ザ・スコッチハウスが百貨店に71店を展開しており、これをベイカー・ストリートに移行し、規模を維持していく考え。各店と調整中だが、おおむね好意的な返事を貰っているという。「リニューアルなどで多少こぼれるかもしれないが、その場合は新ショップを開き、70店くらいを確保していく」(加藤副社長)。
ブランドローンチは来年2月で、百貨店の紳士服ゾーンと自社のECサイト内にショップをオープンする。公式LINEアカウントは先行して今年12月に立ち上げ、本格的な広告キャンペーンとプロモーションは3月に始める。宣伝販促には大規模に投資する予定で、イメージビジュアルにターゲット層から認知度の高い著名人を起用する。
百貨店の紳士服売場は縮小傾向が続き、厳しい環境下にあることは間違いない。しかし、これまでザ・スコッチハウスの企画・開発を担ってきた三陽商会の高品質なものづくりは、ベイカー・ストリートでも同様に期待できる。今まで培ってきたノウハウを生かし、ブランドの競争力向上を目指していく考えだ。
(都築いづみ)