2024年10月21日

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野村不動産✕埼玉大学、小学生向け授業「推しの木プログラム」人気上昇中

教える大学生も、学ぶ小学生も、楽しく真剣に取り組む「押しの木授業」。9月24日、板橋区立緑小学校にて

野村不動産と埼玉大学は、持続可能な街づくりを目指して、大学生による小学生向け授業プログラム「推しの木プログラム」を2022年7月から共同開発している。授業は、➀ガイダンス、②推しの木探索、③探索結果のまとめ、④コンテスト形式の「推しの木発表会」、⑤まとめで構成。3~9時間での実施が想定されているが、学校、学習の状況に応じて内容や時間数を選択できる。対象は小学3~6年生だ。

23年1月から実践に入り、色々な授業を首都圏の小学校で実施。このほど、東京都板橋区内の4校で行われ、その中から、9月24日の板橋区立緑小学校4年1組での授業が公開された。

興味を示して、積極的に発言する子供たち

教壇に立ったのは、埼玉大学教育学部1年生の男女2人。27人の生徒の前で「皆さん、今日の授業は『推しの木を探そう』です。私はこの木が好きだとか、この木に癒されるとか、みんなの街にあるいろんな木から、お友達や先生、ご家族に薦めたいなと思う推しの木を探してもらうのがテーマです」と説明し、授業が始まった。

まず「推しの木は、みんなの住んでいる街にある面白い木とか、自分だけが知っているとか、思い出がいっぱいある木です。思いつく木はありますか?」と問いかけた。すると、次々に手が挙がった。

「うちに、きれいな花が咲く桜の木があるよ」「庭に、木登りした木があるよ」「おばあちゃんの家に、ミカンの木があるよ」「庭に、柿の木があるよ」など、知っている木を思い思いに打ち明けた。

「それでは学校の中にある木で『これはお薦め!』という木はありますか?」と尋ねると、「サルスベリの木を知ってるよ」「正門を入ったところにキンモクセイがあって、いい匂いがするよ」などと、校内の推しの木を挙げる。

そして、ワークシート「推しの木メモ」に、自分の住んでいる街にある木で、友達や家族に教えたい一番の木はどこにあって、それはどんな木で、なぜ好きなのかを書き込んで発表した。

授業の最後には、次の時間までに推しの木メモに自分の推しの木についてまとめて、タブレットパソコンを使って推しの木を写真に撮ってくる宿題が出された。この宿題で、推しの木メモを完成させて、次回の授業では「推しうちわ」を作る。街にある一番の推しの木を選ぶ「推しの木コンテスト」も開催し、3時間構成のプログラムが終了する。

開催希望校が、埼玉県から首都圏へと広がっている

推しの木プロジェクトは、様々な街づくりに携わっている野村不動産が、未来を担う子供たちが街や地域に愛着を持ち、街を誇りに思う「シビックプライド」を醸成する教育プログラムを、共同で研究開発できないかと埼玉大学に持ち掛けたのがきっかけ。教育学部生活創造講座技術分野の浅田茂裕教授が共感して、実現に至った。

授業の枠を超えて、自主的に参加した多くの学生たちが、DIYのワークショップや小学校出張授業の開発に加わり、推しの木プログラムが生まれた。今では、首都圏で「推しの木授業」を開く小学校が広がっている。

野村不動産事業創造本部エリアマネジメント部推進課主任の横川大悟氏は「実施に入った段階では『街の未来を担う小学生が学べる教育プログラムができたので、授業に活用していただけませんか』と小学校にアプローチするケースが多かった。でも今では、学校間の口コミもあって、学校側から相談を持ち込まれることが大変増えてきた。今回見ていただいた、板橋区立緑小学校の授業もそうです。

実施した学校からは『自分の住む街の自然などの印象が薄かった子どもたちが、推しの木にフォーカスした授業をしてからは、通学路の木が好きになった』とか、『校内の推しの木を発表した児童が“国の推しの木”を探求したいと言った』など、子供たちの成長につながっている声をいただいている」と話している。

(塚井明彦)