そごう・西武、「新しい百貨店」へキックオフ
そごう・西武は、9月12日、西武池袋本店の25年の全館改装開業を記念するパーティーを東京・港区の綱町三井倶楽部で開いた。取引先や関係者など約700人が出席した。併せて、メディア向けの記者会見を開いた。代表取締役の劉勁氏、社長の田口広人氏、副社長のダヴィデ・セシア氏、副社長の久保田俊樹氏が出席し、「インクルージョン」をテーマにした新しい百貨店の概要を説明し、記者からの質問に答えた。
米投資ファンド、フォートレス・インベストメント・グループ傘下になった昨年9月以来、そごう・西武首脳が公の場で初めて顔を揃えた。18時より開始したパーティーでは、フォートレス日本法人代表の山下明男氏が冒頭あいさつに立ち、次いで東京都知事の小池百合子氏のビデオメッセージが紹介された。西武ホールディングス会長兼CEOの後藤高志氏が乾杯のあいさつを述べ、慶應大学名誉教授の竹中平蔵氏と豊島区区長の高際みゆき氏が祝辞のあいさつに立った。さらに取引先を代表してLVMHモエ ヘネシー・ルイヴィトン・ジャパン社長のノルベール・ルレ氏が登壇し、祝辞を述べた。
フォートレスの山下氏は「今から1年前、様々な困難を乗り越えながら新しいそごう・西武が船出を切った。(中略)今は従業員が前向きになっており、中堅、若手社員が新しい会社、斬新なものに変えていこうと士気に溢れている」と順調な船出をアピール。西武池袋本店の新しい百貨店づくりに向け、「そごう・西武の象徴が、これまで時代を先取りしてきた西武池袋本店であり、リアル店舗としてお客様に感動の場を提供する館をつくっていきたい。(中略)立地特性を生かし、池袋の代表的な施設、豊島区の玄関口として、進化させ、発展させていきたい」と抱負を述べた。
記者会見では、6月に発表していた全面改装の概要を紹介した。
「インクルージョン」をテーマに、旧来の伝統的な「デパートメント(区分された)ストア」から脱却し、婦人と紳士の両方のカテゴリーを同一の店舗内で広く展開する。全館および各フロアは、「メゾン」を建築デザインコンセプトに、「上質との出会いに相応しい『クラス感、洗練、アート』という3つの要素によって構成された空間をつくる。
売場面積はヨドバシカメラの大型店の出店によって約55%の約4万8000平米に縮小されるため、品揃えは「ラグジュアリー、コスメ、フード、アート」の4領域を中心とした構成となる。ラグジュアリーの売場面積は改装前の約1.3倍に広がり、世界トップの約60ブランドを集結し、メンズ&レディスの複合ショップで展開する。コスメは国内外約60ブランドを揃え、売場面積を約1.7倍に拡大する。デパ地下(フード)はパワーコンテンツを集結し、新ブランドを含め約180ショップを計画している。全館のショップ数は約380になる予定だ。
記者会見の冒頭で劉代表取締役は、「歴史と伝統を継承しつつ、再度、顧客ファーストに立ち戻って改革、改善をしている最中。取引先も大事な顧客と位置づけ、如何に気持ちよく商売をしていただけるか、重要な経営課題であり、全力でサポートしていきたい」と述べた。また、「これまでの西武池袋本店は、全てのお客様をハッピーにしようと全領域の売場を構えて、膨大なコストをかけて百貨店を維持してきた。データドリブンを導入して、営業投資を決めていく」との考えを示した。
売場面積は半減するが、「隣接するヨドバシカメラの人流もうまく生かし、改装後も将来的には(改装前と)同じレベルの売上げを目指す」(劉代表取締役)。目標達成のためには、これまでの強みである外商機能の強化が欠かせず、田口社長は「将来的には売上高の3〜4割にしたい」と語った。
田口社長は「デットフリーの状態になり、守りから攻めの姿勢に転じられる。店と人に投資しながら、新しい西武池袋本店のグランドリニューアルを迎えたい」と抱負を述べた。年明けから段階的に開業し、夏以降に全館改装が完成する予定だ。
(羽根浩之)