2024年11月22日

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日本SC協会、24年度夏季定例記者懇談会を開催

24年下期は約18の商業施設が開業を予定する

一般社団法人 日本ショッピングセンター協会は2024年度夏季定例記者懇談会を開き、24年上期のSC業界の動向と24年下期のSC・商業施設のオープン予定をはじめ、同協会が取り組む第10回日本SC大賞・第8回地域貢献大賞、人材確保の取組み、第30回SC接客ロールプレイングコンテスト、SCビジネスフェア2025などの活動内容を発表した。

Ⅰ.24年上期(1月~6月)の業界動向と下期(7~12月)の見通し

まず上期の月別売上げ伸長率は前年比で1月が5.1%増、2月はインバウンド客の来館増があった中心地域の2桁増(12.3%増)がみられ、SC総合で9.8%増。3月は前年に比べて休日が2日多かったことなどで7.4%増、4月は休日が1日少なったものの、中心地域・大都市がインバウンド客の来館増があって4.8%増だった。5月もやはり前年より休日が1日少なかったが、中心地地域・大都市でインバウンド客の来館増があって3.9%増、6月は前年より休日日数が2日多かったことや立地別で中心地域(11.8%増)と周辺地域(10.1%増)が2桁伸長して全体を押し上げ10.7%増となった。

上期にオープンしたSCは17SC(中心地域2SC、周辺地域15SC)で、23年上期より2少なかった。17のうち15までが1万㎡以下であったため平均店舗面積6746㎡となり、前年上期の平均店舗面積(1万7102㎡)を大幅に下回った。テナント数も100店舗を上回るSCがなかったことで平均テナント数は31店舗(23年上期52店舗)に減少した。テナントの業種別構成比にも変化がみられ、23年上期に17.3%あった衣料品の構成比が4.9%に激減したのに対し、食物販は9.8%から16.5%に、飲食が18.8%から28.5%に、サービスが18.6%から27.7%にシェアを拡大した。

今年上期に開業したSCは、コンパクトな施設が多いのが特徴だ

24年上期にオープンしたSCの特徴として、1つ目は体験価値の充実を図るSCの増加がある。特に国際都市・東京のSCでは新しいカルチャーを創出し、世界に向けて発信する動きが見られた。その代表的な店舗が、東急プラザ原宿「ハラカド」だ。同ハラカドは原宿・神宮エリアを世界に向けた文化創造・発信拠点とするためのまちづくりの核として開業。感度の高い“ヒト・モノ・コトと出会う・つながる・体験する・楽しむ”を掛け合わせた、個性的な約75店舗が出店している。「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」の場合は最上部に約1万㎡の情報発信拠点「TOKYO NODE」を開設し、新たな体験や価値、コンテンツや情報を創出して東京から世界に向けて発信している。

2つ目の特徴はサステナブル社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの導入、リサイクルの推進など、環境にやさしい施設づくりに力を入れるSCが目立ったこと。神戸市東灘区に開業した「ROKKO i PARK」は脱炭素化と循環型社会に向けた新たな価値を提供し、2050年のカーボンニュートラル実現に向けて貢献。地域社会への貢献だけでなく、これからの商業の新しい価値を創造していくようなライフスタイル提案施設を目指している。また「三井ショッピングパーク ららテラス HARUMI FLAG」はサステナブル社会の実現に向けて、太陽光パネルの設置、水素エネルギーを活用した電力供給など、環境に対して負荷が少ない再生可能エネルギーを導入した。

上期にオープンした17SCのうち、店舗面積が1万㎡を上回っているのは「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」の1万1200㎡(テナント数80)と三井ショッピングパーク ららテラス HARUMI FLAGの1万100㎡(同39)の2SCのみ。残る15SCが1万㎡を下回ったため平均店舗面積は6746㎡にとどまり、17SCの店舗面積合計は11万4680㎡となった。上期にオープンした17SCの中でイオンリテールが「そよら」を3SC(「そよら鈴鹿白子」〈店舗面積7690㎡、テナント数11〉、「そよら横浜高田」〈同5041㎡、同12〉、「そよら金剛」〈同5800㎡、同22〉)開業している。

下期にオープンが予定されているSC等商業施設は、7月にオープンしているのが「monaka」(所在地盛岡市、店舗面積5656㎡)、「そよら福井開発」(同福井市、同5264㎡)、「そよら成田ニュータウン」(同成田市、同約3万5730㎡)、「Shibuya Sakura Stage」(同渋谷区、同約1万5201㎡)、「ゆめが丘ソラトス」(同横浜市泉区、同約4万2700㎡)、「KITTE 大阪」(同大阪市北区、同約1万6000㎡)、「皿倉テラス」(同北九州市八幡東区、同2629㎡)など。8月には「フォルテ桐生市場店」(同群馬県みどり市、同4081㎡)、「アクロスプラザ住之江」(同大阪市住之江区、同7400㎡)がオープンした。

9月は6日に「グラングリーン大阪 ショップ&レストラン 北館」(同大阪市北区、同約2640㎡)と「枚方モール」(同枚方市、同1万6730㎡)、13日に「イオン旭川春光ショッピングセンター」(同旭川市、同約6000㎡)、24日に「エミテラス所沢」(同所沢市、同約4万3000㎡)が、10月は14日に「長崎スタジアムシティ」(同長崎市、同9518㎡)が開業を予定する。11月以降は「三井アウトレットパーク マリンピア神戸」(同神戸市垂水区、同約3万㎡)、「フォレストモール黒川駅前」(同川崎市麻生区、約2762㎡)、「小田急相模原NSC」(同相模原市南区、同3533㎡)などがあり。下期オープン予定の18施設のうち、25年に万博開催を控えた大阪で4施設(KITTE 大阪、アクロスプラザ住之江、グラングリーン大阪ショップ&レストラン北館、枚方モール)がオープンとなる。

日本ショッピングセンター協会は以上のように「下期に予定されている店舗が18程あるので、年間のオープンSCは昨年並みの34施設程度になる」とみている。

Ⅱ.令和6年能登半島地震 復興へ向けた取組み

上期には1月1日に「令和6年能登半島地震」があり、震源地である石川県を中心に甚大な被害をもたらした。同能登半島地震で被害を受けたSCや店舗も多く、今なお復旧作業が続いているところもある。SCや専門店においては被災地の復興を応援する様々な取り組みが行われている。日本ショッピングセンター協会においても義援金募集を実施し、義援金総額で656万円余りを日本赤十字社に寄付している。

今回の定例記者懇談会ではゲストとして登場した富山フューチャー開発常務取締役営業企画部長の前田展宏氏と、ゴーゴーカレーグループCEO兼代表取締役社長の西畑誠氏が令和6年能登半島地震とどう向き合い、実際にどのような対策を講じ、復興に取り組んできたかを説明した。


富山フューチャー開発の前田氏は能登半島地震に取り組んだ内容を以下のように語った。

福袋が守ってくれた「太陽の広場」から“福”を届ける

富山市の「ファボーレ」は今上期、チャリティコンサートなどを開催した

ファボーレは富山市郊外に位置しているSCで、開業して24年となり、石川県金沢能登、岐阜県飛騨高山、新潟県糸魚川からも来店いただいております。ファボーレの開発は神岡鉱山からのカドミウム汚染によるイタイイタイ病で苦しんだ婦中町のまちおこしから始まりました。地域密着であれば平和堂であるということでジオアカマツ様からの紹介を得て官民一体による開発で2000年に誕生しました。2019年には増築、増床リニューアルを行い、ご奉仕高約230億円になっております。

石川県能登に甚大な被害をもたらした能登半島地震。富山県においても震度5強、津波79cm、液状化が発生し、家屋の崩壊、地盤沈下などが発生しました。私は30cm以上身体が飛ばされ、その瞬間ただならぬことが起こったことを感じ取りました。「太陽の広場」の天井が落ちたと連絡が入り、直行すると白い土煙がもうもうと立ち込め、天井を覆っていた飾り柱の一部が落下していました。

地震発生時にはお客様に低い体勢になって買い物かごで頭を守ってくださいと、スタッフが一生懸命呼びかけ、まず一番にお客様、スタッフの安否確認をしました。エスカレーター、エレベーターを確認、後方エレベーターにはスタッフ1名が閉じ込められ救助に駆けつけ、幸いにもお客様、スタッフともけが人はいませんでした。

次はお客様の避難誘導。緊急閉店時間を午後5時30分と決めて店内放送とスタッフの誘導でお客様にファボーレから出ていただくようにご案内しました。ところが津波が報道されると少しでも高いところに避難しようと立体駐車場に車が押し寄せ、出る車と入る車が交錯して大渋滞となり、富山県全域でも大渋滞が起きて問題となりました。

店内に残りたいというお客様が多くおられ避難誘導が難航しました。ファボーレは地域の方々の緊急一時避難場所にもなっており、地震で崩壊もあったので建物の安全確認を優先させました。閉店できたのは午後7時30分。太陽の広場天井の飾り柱の一部が落下しても初売り恒例の福袋を置いていたためお客様、スタッフともけが人は出ませんでした。私は本当に福袋が守ってくれたと思っています。お客様の避難誘導を一緒に行っていただいたテナントスタッフ様にはとても感謝しております。ただ発生時の避難誘導などが思うようにいかなかった反省点が多々あり、その後の訓練に生かすようにしています。

その後、防災センター全員による建物、施設の安全点検を行った結果、電気、ガス、水道、スプリンクラー、建物、立体駐車場のいずれも問題はありませんでした。内装の一部に被害が出たものの営業に影響するものはなく、万全であることが確認できたため、1月2日から通常通りに営業しようと決め、テナントの各店長に連絡。了解いただいた店舗、スタッフで営業しました。

賛否両論あると思いますが、生活必需品を扱う地域のインフラとして災害時でも通常営業することが元気を与えられることができると考え、1月2日から営業しました。お客様からは「地震でこんな大変な時に営業するのか」と言われることもありましたが、一方で「大変な時に開けてもらって本当にありがとう」という言葉もいただきました。1月6日には高さ21メートルの天井部分に足場をかけて残っている飾り柱を撤去。そして3月1日、太陽の広場を再開しました。

4月4日には能登半島地震チャリティコンサートを実施。桐朋学園の講師や生徒によるチャリティコンサートで、被災された生徒の家族などへの想いを込めて演奏していただきました。太陽の広場から“困難に立ち向かえ”と、県民にそしてファボーレにエールを送っていただきました。6月16日には正月に予定していた地元、呉羽高校の演奏・書道演舞を行いました。これからの取り組みとしては、9月に「出張輪島朝市」の開催を予定しており、来年1月1日にはお客様にさらに福をお届けする元気な初売り企画を実施する所存です。

ファボーレは明るく元気よく営業することで地域の皆様のお役に立ち続けていきたいと思います。


ゴーゴーカレーグループCEO兼代表取締役社長の西畑誠氏は、能登半島にカレーで元気を届ける取組みを語った。

「世界に元気を届ける!!」ことをミッションに

ゴーゴーカレーは炊き出しやレトルトカレーの支援、義援金募金などに取り組んだ

1月1日に地震が発生して我々はまず全従業員の安全を確認し、その後、本来なら1月2日からお店を開始してお客様をお迎えする準備をしていました。しかし、地震によって壁にひびが入ったりするなどお店が支障をきたしていたので、1月2日は全店休業を決定。まずはお客様をお迎えする体制を整えるため建物に業者の方に入っていただき、安全を確認した上で1月3日から営業を再開しました。それでも被災した能登半島などにある5店舗は、3日から営業できませんでした。

輪島市の中心部にある「ゴーゴーカレー輪島店」は3日から営業できませんでしたが、1月10日から炊き出しを始めました。輪島にはゴーゴーカレーの工場があるのでストックしてあるルーと支援していただいた食材を使い、給水所に通ってつくった温かい炊き出しカレーを「ゴーゴー元気めし」と名付け、10日以降休まず続けました。ゴーゴーカレー輪島店はフランチャイズの店で、この店の社長様が輪島の皆さんに元気を届けたいと自ら炊き出しを始められ、我々本社側からはカレー容器やカレールーを提供してサポートしました。

「カレーで世界に元気を届ける!!」をゴーゴーカレーのミッションとしている我々は、令和6年能登半島地震で被災された皆様に今こそ元気をお届けしたいと「能登半島復興ゴーゴープロジェクト」を立ち上げました。このプロジェクトで約7万4000食分のレトルトカレーを石川県の支援に提供することを決めました。その他に能登半島から避難されている方々がいらっしゃる二次避難所に出向き、カレーとご飯を持ち込んで炊き出しをさせたいただき、復興応援商品の販売としてオンラインサイトでの売上げの一部を震災義援金に寄付しており、1月11日から各店舗に義援金募金箱を設置して募金活動を行ってきました。

このような活動を行ないながら石川県をはじめとした北陸の復興の一助を担っていければと思っています。

Ⅲ.日本ショッピングセンター協会の主な取り組み

協会における取り組みとしては、第10回日本SC大賞・第8回地域貢献大賞のエントリーSCの募集が7月にスタートした。選考対象は23年12月末までにオープンした全国の3092SC(協会会員、会員外を問わず)、評価期間は22年7月~24年6月までの2年間で、募集期間は7月16日~8月31日。各賞の発表は25年4月、表彰式は25年5月(予定)の第53回定期総会で執り行う。

「第30回SC接客ロールプレイングコンテスト」は9月から支部大会がスタートする。同コンテストには9~11月かけて全国7支部で8支部大会が開かれ、「ファッション・物販部門」「食品・飲食・サービス部門」の2部門に分かれて競技を行い、最も優秀だった競技者1人が支部代表として選ばれ、毎年1月下旬に開催される全国大会でSC接客日本一(大賞受賞者には併せて経済産業大臣賞が贈られる予定)が決定される。

SC関係者が一堂に会する唯一の商談会である「SCビジネスフェア2025」はパシフィコ横浜で25年1月22日~24日の全国大会で開かれる。商談展示会、講演・セミナー、チャレンジピッチなどのイベントを通じてビジネスチャンスの創出、SC業界の課題解決につながる情報を発信する。

(塚井明彦)