2024年10月30日

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東急グループの「渋谷サクラステージ」、商業エリアに37店舗がオープン

東急不動産の星野浩明代表取締役社長

東急グループが渋谷駅中心地区で進める大規模再開発のラストピースとして、昨年11月に竣工した「Shibuya Sakura Stage」(以下渋谷サクラステージ)の商業エリアに7月25日、37店舗がオープンした。同21日には、渋谷サクラステージに隣接するJR渋谷駅の新南改札も使用開始。西口地下歩道も開通するなど歩行者ネットワークが整備され、これまで続いてきた桜丘町の分断も解消し、回遊性とアクセスも大幅に向上した。商業エリアのオープン前には、東急不動産が発表会を開催。東急不動産代表取締役社長の星野浩明氏が語った「渋谷サクラステージの開発の歩みと街の変化」と、東急不動産都市事業ユニット渋谷事業本部執行役員本部長の黒川泰宏氏が語った「渋谷サクラステージが提供する新たな価値や魅力」を紹介する。

歩行者ネットワークを整備し、桜丘エリアの分断を解消

東急不動産代表取締役社長 星野浩明氏

東急グループは渋谷を創業の地としてまちづくりを続けています。特に渋谷駅の中心地区においては100年に1度ともいわれる大規模な再開発が進行中です。それは5つの街区で構成され、駅中心地区において2012年に渋谷ヒカリエ、18年に渋谷ストリーム、19年に渋谷スクランブルスクエアⅠ期、および渋谷フクラスが完成。そして渋谷サクラステージはその大規模再開発のラストピースとして23年11月30日に竣工しました。

渋谷駅桜丘口地区を冠するこの再開発事業の名称については、桜丘町から直結する渋谷駅改札口の設置を待望していた地元の方々による長年の悲願を表すものです。1998年10月の旧再開発の準備組合の設立から約25年の歳月を経て、また120人に及ぶ権利者の方々の想いを紡ぎ、形にしてきたものです。その間、地元である桜丘町会や商店会、そして渋谷区をはじめとした行政を含む多くの関係者と合意形成を図って事業を推進してきました。

2023年11月25日に竣工した

渋谷サクラステージは、周辺街区との接続をスムーズにして回遊性を生む機能を有しています。地形の高低差および鉄道と国道246号による桜丘エリアの分断を解消するために、歩行者ネットワークを整備してきました。昨年11月の竣工以降、3階レベルにある渋谷ストリーム側からの渋谷駅南口北側自由通路、そして2階レベルにある渋谷駅西口歩道橋デッキと、それぞれ本施設が接続して駅周辺全体の回遊性が大きく向上しました。また、本施設を通じて代官山、恵比寿方面への接続もスムーズになって、複数の歩行者ネットワークが生まれアクセスの向上につながっています。

竣工以降の人流の変化が顕著で、渋谷サクラステージ周辺の本年3月と着工前の2019年3月の人流のデータを見ると、竣工によって歩行者ネットワークが整備されたことにより桜丘エリアの人流が143%増加し、新たな人々の流れができたことが定量的にも見て取れます。さらに18~19時が人流のピークとなっており、この時間帯でも1カ月間の累計で10万人以上人流が増加していることが確認できました。

JR渋谷駅新南改札が、渋谷サクラステージと渋谷ストリームを結ぶ通路に面した位置に移転した

渋谷サクラステージを起点に多くの来街者やワーカー、周辺住民の方々が行き交っていることが窺えます。そしてオフィステナントが出揃った後にはワーカーの数が1万人規模となり、7月25日の商業エリアのオープンとも相まって、さらなる活気をもたらすと思われます。加えて7月21日にはJR渋谷駅の新南改札が渋谷サクラステージに隣接する形で使用開始となります。はるか昔、大正9年に渋谷駅が敷設された時から長らく続いていた、鉄道による桜丘町との分断がついに解消されることになります。

また、地下2階レベル、国道246号の下をくぐる西口地下歩道も同日に開通して、渋谷フクラスとJR渋谷駅西口付近へとつながります。西口地下歩道の開通によって渋谷サクラステージとつながる地上、地下の複層での歩行者ネットワークの整備が完了します。

新改札と地下歩道の開通後、いよいよ7月25日、大型商業エリアがオープンを迎え、国際都市渋谷にふさわしく、多種多様な人々が集い、交わることで音楽やアート、スタートアップなど、新しい文化やビジネスが次々に生まれる場所として本格始動します。

街が分断されていたために桜丘では渋谷駅にほど近いにもかかわらず独自の文化が生まれてきていました。働く場所だけでなく住宅や個人経営の飲食店、楽器店、ライブハウスが軒を連ねていた渋谷において、働く・遊ぶ・暮らす、すべてのシーンがバランス良く配置されていたエリアです。それ故、どこか人と人との距離が近く、街に根付いた生活文化を肌で感じられる特異性のある場所であったと考えられます。

働く・遊ぶ・暮らす、様々なシーンにおいて、そこに集う人々と新たに訪れる人々の溶け合いをつくり、渋谷らしい多様性に溢れた街に人々のライフスタイルを洗練させ、次のステージに誘う、そのような街をここ渋谷サクラステージから実現してまいりたいと考えています。

働く・遊ぶ・暮らすを通じて「渋谷型都市ライフ」を実現する施設

東急不動産執行役員本部長 黒川泰宏氏

壇上でプレゼンテーションする黒川泰宏氏

東急グループは渋谷駅を中心とした半径2.5km圏内を「広域渋谷圏 Greater SHIBUYA」と定義し、働く・遊ぶ・暮らすが融合した持続性のある「渋谷型都市ライフ」の実現を目指しています。オフィス、商業施設、サービスアパートメントに加え、渋谷駅中心地区で唯一となる住宅を有する渋谷サクラステージは、この渋谷型都市ライフをまさに体現する施設となります。

渋谷サクラステージは7月25日の大型商業エリアのオープンを契機に本格的に始動します。本施設が生み出す提供価値を桜の木になぞらえると、リアルと溶け合うデジタルインフラは本施設のベースとなる機能として桜の木の根元に当たる部分を形成します。そして新たにオープンするエリアは文化創造発信や人々の交流を促す場となり、本施設の中心となる幹に相当します。これらのインフラや場を通して、本施設から新しいライフスタイルを生み出していきたいと考えています。

まずはリアルと溶け合うデジタルインフラついて説明します。渋谷サクラステージにはARを活用した体験型メディアや、マチアプリと連動したコミュニケーションを生み出す仕掛けを用意しています。1つ目は、デジタルツインを活用したARによる新たな体験型メディア。来街者の体験価値を高める先進的なARプラットフォームを電通社と開発、実装しています。来街者は本施設の共用部に設置してある二次元コードを読み込むことで、イベントと連動した動画コンテンツや施設のお得情報などをご自身のスマートフォンで閲覧することができます。イベントスペースやサイネージ広告と連動できるのはもちろんのこと、マーケティングデータをテナントや広告主に還元することで体験価値と広告価値の最大化を実現していきます。こちらのARの取り組みは、広域渋谷圏に広がる体験型メディアとして当社が運営する東急プラザ原宿「ハラカド」、東急プラザ表参道「オモカド」にも合わせて実装しています。

2つ目は、今年2月に当社がリリースした広域渋谷圏を舞台にワーカーをつなげるコミュニケーションアプリ「SHIBUYA MABLs」の活用です。本アプリは渋谷サクラステージのオフィステナントであるArsaga Partners社が開発運用しており、続々と新機能をリリースしています。直近においてはイベントへの参画機能やチャット機能などを追加し、ユーザー同士のさらなるコミュニケーションの活性化を目指しています。すでにアプリユーザーの交流会やガントリップイベントを開催しており、今後も本施設を基点としてユーザーが出会えるリアルの場としての活用を行っていきます。

渋谷サクラステージ2階にオープンした「東急ストア渋谷サクラステージ店」

次に文化創造発信や人々の交流を促す場として、7月25日に一斉オープンするエリアを説明します。本施設には地元の方々にも気軽にお越しいただける東急ストアやカルディコーヒーファームといった生活サービス店舗に加え、体験を軸にした特徴的な場を設けています。SHIBUYA SIDEの4階商業フロアは「サクヨン」と名付けました。趣味、音楽、アートといったカルチャーとフードが交わることで人々の新たなつながりが生まれる場を目指してまいります。中央のゾーンには、インディーゲームクリエイターのためのクリエーション拠点「404 Not Found」をオープンします。こちらには当社も理事として参画する一般社団法人渋谷あそびば制作委員会が運営を担い、ゲームをはじめとしてアート、音楽、フードなど様々なカルチャー領域で活動するインディークリエイターの聖地化を目指していきたいと考えています。展示イベントやワークショップ、音楽ライブや期間限定レストランなど、多様な企画を開催する中で、クリエイターの創作活動の支援や共創の機会を提供してまいります。

FOOD METにオープンした「SHIBUYA SAKURAGAOKA BEER HALL」

南側のゾーンには、桜丘の新たな商店街を表現したフードコート「FOOD MET」が誕生します。FOOD METは3つのエリアに17店舗が、ミシュラン1つ星を含むすべて新業態、初出店で構成され、ここでしか味わえない食の体験を提供します。最大面積を占める「SHIBUYA SAKURAGAOKA BEER HALL」には、ビールを通じたコミュニケーション創出の場として「シブヤブルワリー」が開業します。本施設内で醸造する渋谷の地ビールと、数々のレストランのフードと合わせて味わうことができます。

2つ目のエリアは、新しい食の可能性を模索するラボ要素を取り入れたポップアップレストランが出店する「404 Kitchen」で、これから独立を目指す若き料理人たちのチャレンジをサポートする場となります。3つ目の「渋谷 By STREET」と題するこちらは、路面店のような個性豊かな6店舗が並ぶエリアとなり、一つ一つが専門店でありながら、いつでも1人でも誰とでも楽しむことができる食堂街です。

SHIBUYA SIDEの3階は、日本の優れたコンテンツやポップカルチャーを世界に発信するフロア。時代やトレンドに縛られないメイクを提案する、カネボウ化粧品のグローバルメイクアップブランド「KATE」の初となる旗艦店や、マイナビ社が運営するゲーム実況集団、高田村初となる公式ショップ「高田村交易所」などが軒を連ねます。

SHIBUYAタワーの7階には、起業支援施設として当社グループが運営する会員制シェアオフィス「ビジネスエアポート」が開業します。広域渋谷圏内で6店舗目になるビジネスエアポートで、渋谷サクラステージに入居するスタートアップ企業、大学機関との産学交流連携との取り組みも実施していく予定です。また、同フロアに国際医療施設としてウェルビーイングを支える空間「SHIBUYA ウェルセンター」を開業します。心身の健康を支える多様な医療サービスを提供するクリニック「to clinic shibuya」と、ヘルスケアでつながる様々な企業との共創によるワーカーズラウンジを展開します。

これらのデジタルインフラや場づくりを通じて、新しいライフスタイルを生み出す取り組み事例について説明します。渋谷サクラステージの本格的な始動に際し、いずれもテナント企業様との連携によって実現していく取り組みとなります。まずはスタートアップ支援の取り組み。当社は国道246号沿いにスタートアップ向けのオフィス、コワーキングスペース、人々の交流を促すサウナ、そしてコミュニティレジデンスなどを集積させています。今般、渋谷サクラステージのオフィステナントである2社と、スタートアップ支援に関する協定を締結しました。Sansan社とはスタートアップ企業同士のビジネスマッチングに関する支援を、Lega lonテクノロジー社とはスタートアップ経営に資するリーガル支援をそれぞれ行っています。また、本施設内にはスタートアップ支援の核となる場として、マサチューセッツ工科大学の教授や産学連携プログラムと連携した「(仮称)Shibuya Deep-tech Accelerator」を今年度中に開設予定です。

次はカルチャーを軸とした新たな体験価値を生み出す取り組みについてです。当社はカルチュア・コンビニエンス・クラブ社と昨年5月にまちづくり協定を締結し、広域渋谷圏各地でのイベント開催などを通じて街の賑わい創出、コミュニティ形成、エリアブランディング活動を行ってきました。本施設においては渋谷エリア最大級の書店「TSUTAYA BOOKSTORE」や、訪れた人に新しい発想を提供する場となる「SHARE LOUNGE」に加え、アートの社会実装を試みる場「re-search」を通じて、カルチャーを育み賑わいを創出していきます。また、カルチュア・コンビニエンス・クラブが当施設に食をベースとした地域応援、生産者支援を行う「CHEEAT TOKYO(チート トウキョウ)」もオープンします。

ゲームクリエイターを支援する取り組みについては、渋谷から世界に向けたゲームコンテンツの発信を目指し、インディゲームクリエイターとその作品を応援する新たなプロジェクト「GAME CREATOR FINDING」を立ち上げます。日本最大級のインディゲームの祭典「BitSummit」の主催者でもあるSkeleton Crew Studioと協業し、代表の村上雅彦氏を中心として404 Not Foundを舞台に作品の紹介、体験会の実施、技術交流の機会提供等を行ってまいります。まさに遊ぶを象徴する一大コンテンツとしてのゲームをフックに、カルチャーを育む賑わいの街を本施設から実現いたします。

このように働く・遊ぶ・暮らす、すべてのシーンを通じて人々の新たなライフスタイルを、ここ渋谷サクラステージから生み出していきたいと考えています。

(塚井明彦)