ルック、25年春に英・老舗レザーブランド「スマイソン」スタート
ルックは来春、英国の老舗レザーブランド「Smython(スマイソン)」の販売をスタートする。筆記具やノートなどのステーショナリーから財布、バッグ、ホームアイテムまでと、上質な革小物を幅広く揃える。商品背景にある英国の歴史や文化なども販促に生かし、顧客獲得に乗り出す構えだ。初年度には5店の出店を見込んでおり、29年度時点で12店、売上高15億円を目標とする。
スマイソンは1887年、英・ロンドンで創業した。創業者であるフランク・スマイソン氏がレザーグッズや文具、トラベルアイテムなどを揃えたブティックを開いたのが始まり。ラグジュアリーかつ洗練された品々は多くの人の心を掴んだ。1890年代にはヴィクトリア女王の邸宅ごとにステーショナリーを制作。1964年には、エリザベス女王陛下から英国王室御用達の証である「ロイヤルワラント」の称号が授与された。その後も、80年代にプリンス・オブ・ウェールズとエリザベス皇太后から授与され、2002年にもエディンバラ公爵からと、計4つのロイヤルワラントを受賞。ブランド誕生から130年以上となる今も、細部にまでこだわるクラフトマンシップを貫き、美しい品をつくり続けている。
スマイソンが使用するレザーは3種類ある。軽量かつしなやかで耐久性に優れ、ほのかな光沢感のある「パナマ」、セミマットでしなやかな手触りと、大き目のグレイン(表面のシボ)がリッチ感を醸す「ラドロー」、洗練されたクロコダイルのエンボス加工を施した表情のある「マーラ」となる。
アイテムカテゴリーは、ステーショナリー、ビジネス、トラベル、ホームと幅広い。中でも、ノートブックやダイアリーは実用品を超えたラグジュアリーな逸品として、ブランドのアイコンにもなっている。紙は、英国ボンド紙の製造工場でつくる「フェザーウェイト紙」を使用。普通紙の半分の厚みと重さながら、万年筆のインクがにじまない特性があり、ブランドの証明としてオリジナルの羽根と地球の透かし模様も入っている。
ノートブックは品質に加え、その内容も多彩。ゴルフのスコアを付けるためのものや、種をまいて花を咲かせるまで、自分の結婚式、パーティーを開く際のセッティングといったプランニング用もある。事業本部新規事業担当マーチャンダイザーの出石朝美氏は「売上げにすぐ直結するものではないが、文化的に面白味のあるアイテムが揃っている。時間的、精神的に余裕のある人に勧めやすいブランド」と説明する。
ペーパーアイテムでは、車やワイン、鳥など様々なモチーフを華やかに表現した「シーズンカード」が目を引く。ロンドン近郊の工場で製作され、すべての種類の銅板をつくって型を押し、色はカード表面の凸部分に合わせて後から乗せる。封筒は職人が糊をつけて一つ一つ折っている。出石氏は「こうした温かみも提案の1つ。携帯電話でいくらでもメッセージを送れる時代ではあるが、だからこそ『書くこと』が特別になっていると思う。『特別な時間を、特別なカードで』ということを提案したい」と話す。今後は、ペーパーアイテムのカスタムメイドも実施する予定。
トラベルやビジネスのアイテムが多いのもブランドの特徴。伊・フィレンツェにある自社工場で製作され、各シーンで重宝するラインナップを揃える。ファスナーが4色に分かれたウォレットは、例えば「日本円」「ユーロ」「パスポート」のように収納するものを決められる。ほかにも、内側に「通貨」「パスポート」「チケット」など目次の付いたポケットを内蔵し、細かく整理できるウォレットもある。ニッチではあるが、本国の展示会ではオーダーのベスト10に必ず入る人気商品だ。
レザーがメイン素材となる中、ナイロン製のバッグも揃える。使用するのは、元は漁業用の古くなった網を伊の糸メーカーがリサイクルした「エコニール」。現在、収納力のある大きいサイズのリュックなどを用意しているが、今後はポーチやショルダーバッグも増やしていく。
ビジネスアイテムでは旅行にも使えるバックパックやショルダーバッグを揃えるが、メインはブリーフケース。ブランド内でも大きな売上げを生むアイテムの1つだ。最近は女性の使用も多く「各百貨店の担当者からも『ニーズがあり、メンズ売場に探しに来ているケースもある』と聞いている」(出石氏)。女性が持ってもバランスの良いサイズと薄さの「ウルトラスリム」タイプは、ブラック以外にグリーンやナイルブルーの色も用意して打ち出す。
スマイソンの魅力を語る上では、ホームコレクションも外せない。木製の型にレザーを貼った「ジュエリーボックス」は、富裕層の人が旅行に持参し、ホテルでインテリアとして飾る使用方法が広がっているそう。「レザーバッグやスモールレザーグッズ(SLG)に比べると、コンペチター(競争相手)の少ないカテゴリー」(出石氏)時計を整理する「ウォッチロール」や、カフスボタンを収める「カフリンクスボックス」も、嗜好品を愛でる贅沢な時間と空間の創出に訴求する。旅先で楽しめるゲームセットも揃える。トランプやチェス、古代エジプト王朝時代にルーツのあるすごろく型ゲーム「バッックギャモン」があり、それぞれレザーのケースやバッグに収納されている。
日本で売上げの主軸となるのが、財布、カードケース、パスケースなどのSLGだ。本国ではキャッシュレス化が進み、小銭入れが付属した財布の用意がない。今回、日本での展開を考慮して、小銭入れの付いた財布を復活させ、三つ折りのタイプも日本限定で販売する。
こうしたバラエティ豊かな品揃えは、男女それぞれ半々をターゲットに構成する。メインとなる年代は30代以上を想定。ノートブックが1~5万円、ビジネスバッグが20~40万円台、SLGも3万円以上となるため、20代よりは経済的にも余裕のある年齢層を見込む。
出石氏は「ファッションブランドではないので、毎シーズン新しいものが出てくるというサイクルではない。そのためビジネスや旅行のシーンを切り取り、新生活などオケージョンに合わせたMDでアプローチしていく」と述べる。例えば、商品でもある世界地図の書籍をディスプレイにも活用し、バッグなどと共に出張先のシーンを演出するといった手法だ。アイテムにより展開方法は様々だが、販売場所は「今はレザーグッズとバッグ、2つの売場を軸に考えている。商品全体では、百貨店のライフスタイル、リビング、インテリアなどを扱うフロアでの展開を想定している」(出石氏)。
スマイソンは、多田和洋代表取締役社長が、事業部長の頃からアプローチをかけてきたブランドでもある。ルックの新ブランド戦略に、期待が高まる。
(中林桂子)