ドリームフィールズの「ビズー」が工房併設の新店、販路拡大へ攻勢
ドリームフィールズの天然石ジュエリーブランド「BIZOUX(ビズー)」は4月20日、東京・新宿に「ビズー カラーラボラトリー」をオープンした。延床面積は約192㎡とビズーの店舗の中でも最大規模の広さで、ジュエリー工房を併設した新業態店。工房では職人が商品の制作やサイズ直し、修理、リフォームなどに対応する。店頭では「色診断」と「パーソナルカラー診断」を導入し、100色以上の宝石から顧客に合った色の石を提案する。顧客ニーズへの対応力と提案力双方を強化し、新店を今後の事業拡大への拠点に成長させる。
ビズーは国内トップクラスのラインナップを誇るカラーストーンショップとして、都内をはじめ名古屋、大阪、京都、福岡に店舗を展開。今回の新宿店は、4年ほど営業していた新宿御苑近くの立地から移転する形でオープンした。以前の店は駅から遠く、顧客から「場所がわかりづらい」という声もあったが、新店舗は新宿駅と新宿三丁目駅から地下通路でアクセスできる。
同じ新宿エリアでの移転について、ジュエリー事業本部事業推進部店舗統括課課長の馬場脩氏は「5年前につくった店とでは(ビズーの)ステージが変わっている。表現したいものも変わってきている」と現状を述べる。店舗全体の売上げは好調を維持し、2023年度は前年よりも約30%増と伸長。「新店を出していくという話も(社内で)出たが、多店舗展開していくよりは既存店を見直すことを優先した」(馬場氏)。
リニューアルの意味合いも持つ同店では、ビズーのショップとしては初の試みで顧客を迎える。1つ目はカラー診断による石の提案だ。入り口を入ってすぐの空間には「Find Your Color(自分の色を見つけよう)」をテーマに、新しいカラーストーンの選び方を提案するコーナーを設置した。選べるカラーストーンは、ビズーが世界20カ国以上から買い付けた50種類以上、100色を超える。これを「青」「水色」「紫」「ピンク」「ライトピンク」「赤」「緑」「黄色」「オレンジ」「白」「透明」の11色に分類した。
顧客はまず、タブレット端末で色彩心理学の理論を応用した色診断を行う。全4問の質問に答えると、16通りの結果からその時“深層心理で求める色”が、11色の中から1色導き出される。次いでパーソナルカラー診断で、自身の肌や髪の色、雰囲気を基に“似合う色”を判断。双方を掛け合わせて最終的に最も似合う色の石を選ぶ。顧客が従来選びがちだった誕生石や好きな色ではなく「新しい色を提案できるように、新店舗は色を切り口にした」と、馬場氏はコンセプトを説明する。カラー診断はこれまでもイベント時に限り行っていたが、その際も客から好評だったという。
新店の2つ目の特徴は、併設されたジュエリー工房だ。店内の奥に進むと現れるガラス張りの工房では、カラーストーンをリングの土台にはめる石留めやサイズ直し、ネックレスのチェーンの長さを変えるための溶接、顧客の手持ちのジュエリーのリフォームなどを、国家資格である貴金属装身具製作の1級技能士が行う。工房には手元の作業を拡大して映し出すモニターも設置され、直径1mm程度の石を土台に留める様子や、土台部分を器具で研磨する加工が詳細に見られる。
これまでは店頭で購入した石をアクセサリーに仕立てるのに、山梨県甲府市の工房に持っていく必要があった。手元に届くまで約2カ月を要していたが、今回の工房新設で当日中、場合によっては最短約1時間で完成させられる。こうした工期短縮の利点に、馬場氏はインバウンドの獲得を挙げる。昨年3月に出店した「銀座シックス店」ではインバウンドの顧客化に成功。高価格帯の商品の動きも良く、ビジネスで香港や台湾から半年に一度来日する客もリピーターにできた。しかし「以前はサイズ直しにも1週間掛かったので、来店の3日後には帰国しなければならないといった方に対応できなかった」(馬場氏)。さらなるインバウンドの囲い込みにも、新宿店の工房が果たす役割は大きい。
今後の事業展開においても「工房があることで、当社の技術力やクラフトマンシップをわかりやすく伝えられる」と馬場氏は述べる。ビズーでは現在、卸事業の開始に向け準備を進めており、新宿店はショールームとしての機能も持たせて設計。工房の横には、取引先や顧客とゆっくり話ができるよう小スペースに区切ったサロンも備えた。
卸の依頼は、百貨店をはじめ様々な企業から持ち掛けられていたものの、「カラーストーンの性質上、同じ製品で数をつくれない。リピートオーダーが取れないので、卸はビジネスとして向かないと思っていた」(馬場氏)。しかし、各地域の専門店とも話をしながら、まずは販売できる商品から始めていく予定だ。
昨年からタイで宝石の買い付けを担うスタッフも駐在させた。タイはインドと並んで宝石ビジネスが盛んな国である。新しいルートができ、以前よりも多くの量を仕入れられることに加え、タイの宝石商から直接購入するためコストも抑えられる。ビズーにとって初めてのBtoBビジネスへの参入に、着々と手はずを整えてきた。こうしたルート開拓も「15年前から鉱山主や宝石商との関係を築いてきたからこそで、やっと実現できた。長年の信頼によるもの」と、馬場氏は自負する。
今後の店舗運営事業について、東京以外の店舗もビズー カラーラボラトリーと同様に、移転ないし内装のテコ入れを考えているという。馬場氏は「カラーストーンのマーケットは確実に広がってきている」と、ブランド誕生から15年となる今を好機と捉える。進化した新宿店を拠点に、販路拡大に乗り出す。
(中林桂子)