4月17日に開業した東急プラザ原宿「ハラカド」の独創性を探る
2024/04/30 2:09 pm
4月17日に開業した東急プラザ原宿「ハラカド」(以下ハラカド)は奇抜なデザインの建物外観に加え、館内も個性的なショップや体験・共創・発信機能などが集合している。3階フロアの「クリエイターズプラットフォーム」、5~6階の「原宿の街の食堂」、7階「屋上テラス」、銭湯のある「チカイチ」などが、その代表だ。こうした特徴ある場を創り上げたハラカドを探ってみた。
ハラカドは建築家・平田晃久氏が外装・屋上デザインを手掛け、自然と人工の多種多様な要素と、表参道のケヤキ並木や緑豊かな神宮の森、洗練された表参道の街並みなどが共存する新しい都市を表現している。外装のコンセプトは「KNIT DESINE(まちを編む)」で、「原宿・表参道」という街を意識し、古と新との融合、外と内との融合など、共存しながら未来につなげる街づくりをイメージした。
3階の1フロアで実装するのが、クリエイター達の集積・共創・発信の場となるクリエイターズプラットフォーム。ハラカドの文化創造・発信拠点の中心的役割を担い、100席を有するクリエイターのための会員制カフェラウンジ「BABY THE COFFEE BREW CLUB」を軸として、クリエイティブ活動をワンストップで支援する仕掛けが整っている。
クリエイターがリアルに集い共創を促すBABY THE COFFEE BREW CLUBを中心に、OOAACCが手掛ける角打ちスタジオ「STUDIO SUPER CHEESE」、博報堂ケトルのソーシャルクリエイティブ専門のスタジオ「STEAM STUDIO」、ラジオ局J-WAVEによるポッドキャストスタジオとアートギャラリーを併設した新しいカタチのスタジオ「J-WAVE ARRTSIDE CAST」などが、個人や企業はもちろん、クリエイターを目指す人々などのクリエイティブ活動をサポート。クリエイターズプラットフォームではクリエイターが生み出していくものをその場で参加・体験して購入でき、創造と消費が循環する場を提供する。
4階の全体を使って表現されているのが「ハラッパ」。“環境・サステナブルとのタッチポイント”を、東急不動産の関連施設と連動させながら提案する。「自然・チルアウト」×「原宿で体験」をテーマにした企画で、登場するコンテンツは「太陽の焚き火」、アート、NATURE CROSSING。太陽の焚き火では東急不動産が手掛ける太陽光発電などの再生エネルギー事業に連動して、その恵みの太陽をモチーフとして作品を制作した。
アートでは、アーティストの小松宏誠氏による風、光、雨など自然をテーマにした作品が目の前に広がる。空気の微細な動きを可視化したモビールや、雨が地面に落ちた際の水紋から着想を得てつくられたという。アーティストの西原尚氏は廃材が自然エネルギーによって息を吹き返し、ロボットとなって思い思いに遊び回る不思議な作品を登場させた。NATURE CROSSINGは様々な人や文化を忙しく行き交う大都会と、静かな時間が流れる大自然と交わる、原宿に誕生した新たな「交差点」。アスファルト上に敷かれたはずの横断歩道がインタラクティブコンテンツにより、歩行者達を美しい自然の景色へと誘う作品となっている。
5~6階の原宿のまちの食堂は、5階に原宿・神宮エリアには少なかった、日常的に通いたくなる飲食店や路地裏のような雰囲気のある居酒屋などを11店舗集積。6階は「神宮前の交差点でゆったりしよう」をテーマに、神宮前交差点の“たまり場”を形成する。開放的な屋上テラスとシームレスにつながり、全11店舗の個性的な飲食店が集まる。7階の屋上テラスでは神宮前交差点が見下ろせ、都市の喧騒を感じながらも美しい景色と緑豊かなリラックスした雰囲気を楽しめる。5~7階一体を「HARJUKU KITCHEN&TERRACE」と呼び、飲食フロアと屋上テラスの約860坪には全23店舗が集積し、様々な料理を楽しめる。
G階、1階、2階、地下1階にも個性的な店舗が出店している。G階には国内外の著名人やファッョンデザイナーが集まり東京カルチャーを夜からつくり上げてきた会員制バー「CASBA」が、様々なクリエイターとのコラボレーションによるアパレルブランドとして出店。1階には原料や製法、デザインワークまで自社でこだわってつくるクラフトチョコレートを販売する「rit.TOKYO」が広島から東京に初進出した。「ALL GOOD FLOWERS」は、3階のLABで本来なら捨てられてしまうような花を新しいアイテムにつくり直し、1階の店舗で販売するというロスを出さないサーキュラーフラワーショップを展開する。
注目の施設となっているのが地下1階にオープンした銭湯「小杉湯原宿」だ。小杉湯は今年で91年目となる高円寺にある老舗の銭湯で、宮造りの建物は有形文化財に指定されている。現在は3代目として平松祐介小杉湯代表取締役が就き、小杉湯の2号店としてハラカドへの出店を決めた。小杉湯の利用者は多く、東京都における1日平均の銭湯利用者数が144人であるのに対し、小杉湯は平日で400~500人、土・日・祝の多い日で1500人が利用する。
小杉湯原宿を出すに当たって、意志決定したことが2つあるという。「1つはサウナをつくらず、高円寺同様に湯船で勝負することにした。2つ目は、原宿に銭湯を出したのは海外の人や若い方を対象にした銭湯なのかと問いかけられるが、私共は誰に対しても閉じない公衆浴場でありたいと思っている。ここ原宿では地域の皆様から土台をつくり、徐々に一般開放していく」(関根江里子副社長)
小杉湯原宿は高円寺にある小杉湯同様、浴室を真っ白なタイルにしている。「利用される皆さんに清潔な風呂に気持ち良く入っていただきたく、あえて白いタイルを選び、清潔を保つため毎朝4人で4時間、夜は1時間掛けて浴場の清掃を行っている」(関根副社長)
小杉湯原宿は銭湯単独でなく、ハラカド内で「銭湯を中心とした街」のようなフロアをプロデュース(企画・設計・営業・運営)している。フロア名称を「チカイチ」とし、“素のまま、そのまま”をフロアコンセプトに、本質や素に出会い、浸かれる体験を提供する。チカイチには清潔・清浄の素晴らしさを発信する花王、アンダーアーマーを運営するドーム、美容健康ブランド「MYTREX」を展開するSetsu Planning、サッポロ生ビール黒ラベルなどに代表されるサッポロビールがパートナー企業として参画している。
(塚井明彦)