2024年10月30日

パスワード

三陽商会、ワンランク上の新ライン「エポカ ディバーゼ」でアッパーミドル層を深耕

ワーキングからフォーマルまで対応できる、洗練されたアイテムが揃う(伊勢丹新宿本店にて4月に開催された「EPOCA DI BASE」のポップアップショップ)

三陽商会の婦人向けブランド「EPOCA(エポカ)」が、新ライン「EPOCA DI BASE(エポカ ディバーゼ)」を立ち上げた。エグゼクティブキャリア層をターゲットとしたワーキングラインで、価格は既存のエポカより1.5倍ほど高く、“一格上”のポジションだ。23年秋冬にトライアルで販売し、24年春夏に本格的な展開をスタートした。最近は多くの大手アパレルメーカーが高価格帯の新ブランドや新ラインをローンチしているが、同社は確かなモノづくりの技術を武器に、独自の魅力を打ち出していく。

事業統轄本部事業本部エポカ、キャストコロンビジネス部婦人服企画課長の加地宏彰氏

特選ブランドと国内ブランドの間に勝機

三陽商会は「アッパーミドル層における確固たるプレゼンスの構築」や「商品レベル/グレードの向上による、価格と価値のバランスポイントの引き上げ」を成長戦略の1つに据えている。エポカも商品のグレードを高める方針を掲げており、そうした中で、百貨店から「ワンランク上の新ライン」を求める要請があった。

「百貨店ではラグジュアリーブランドを筆頭に、高額品の消費が好調だ。しかしラグジュアリーブランドとドメスティックブランドの間に空白の価格帯があり、その需要を取り込みたいという話になった」と事業統轄本部事業本部エポカ、キャストコロンビジネス部婦人服企画課長の加地宏彰氏は説明する。

例を挙げると、エポカのジャケットは5~10万円の価格帯で、中でも7~8万円が中心となる。他の日本アパレルメーカーもこれに近い価格設定だ。他方でラグジュアリーブランドは30~40万円以上の価格で展開している。円安でラグジュアリーブランドの価格が上がっていることもあり、この中間のプライスレンジに勝機を見出した。

また、社会で活躍する女性が増えるに連れ、エグゼクティブ層向けの服のニーズが増加しているのも背景にある。エポカは元々ジャケットを中心としたワーキングスタイルを得意としており、コロナ禍で全社的に売上げが落ち込んだ中でも、エポカのジャケットは売れていたという。そこからコロナ禍が落ち着き、一段と需要が高まった状態になっている。こうした経緯から、新ラインの開発に至った。

美しいシルエットや凛々しく知的な印象にこだわった

強みのジャケット、ドレスを中心にMD構成

エポカは、24時間様々なシーンで着用してもストレスになりにくい「24(トゥエンティーフォー)シリーズ」が人気を博すなど、機能性にも定評がある。エポカ ディバーゼはその機能性に加え、素材や縫製、デザインもグレードアップさせた。

MDは、得意とするジャケットを中心に構成。同じく強みであるドレスや、パンツやスカートとのセットアップを提案する。ブラウス、ニットトップス、コートなども揃える。価格はジャケットが約11万~16万円で、そのほかコートが18万円~、ドレスが11万円~、スカートが5万9000円~、パンツが6万9000円~、ブラウスが3万9000円~、ニットが4万9000円~程度となる。

素材は国内で生産されたオリジナルの生地を多く採用し、縫製も信頼の置ける国内工場を中心に生産。メイド・イン・ジャパンを特色として打ち出す。デザインはエポカの「エレガンスで美しいシルエット」を踏襲しつつ、昨今は体から離れてゆったりとしたシルエットの「オフボディ」がトレンドであることから、随所にボリューム感を持たせた。

加地氏は「目の肥えたお客様にも納得いただけるクオリティを実現できた。日本の匠の技が光る、テーラリングの美しさも楽しんでいただきたい」と自信を見せる。エグゼクティブ層からは親しみやすさや華やかさのある柔らかい色のニーズもあるため、色展開は黒に加えて、ベージュやピンクなども用意した。

華やかな印象のドレスも好評だ

滑り出しは順調、新客の獲得にも成果

エポカ ディバーゼは今年の春夏に本格的に始動。伊勢丹新宿本店、玉川高島屋S・C内の「エポカ ザ ショップ玉川」、「エポカ ザ ショップ丸の内」の3つのショップで取り扱い、ポップアップショップを3月にジェイアール名古屋タカシマヤ、4月に伊勢丹新宿本店で行った。商品は春夏併せて20型、68SKUを揃える。

これまでの売上げは、計画値をクリア。客層はブランドの顧客が中心だが、フリーの新客も取り込めており、滑り出しは順調だ。百貨店の外商顧客の購入もあり、出展した特別招待会での反応も良好だった。

これからはSNSやポップアップを通じた認知度の拡大と、顧客ニーズの深掘りに力を注ぐ。ポップアップは都心型の、フリー客も取り込めるような商業施設を中心に出店を計画。並行してターゲット層のニーズをリサーチし、商品の精度を向上させていく。

他のアパレルメーカーもこうした需要を取り込むべく、続々と高価格ラインを出している。競争は激しくなるが、「エポカはこれまでも、エレガントで機能性に優れたセットアップをつくってきた歴史がある。それを強みとして、アッパーミドル市場で光る存在になっていきたい」(加地氏)。

(都築いづみ)