J.フロント、24年2月期は2桁の増収増益
J.フロント リテイリングの2024年2月期連結決算は、売上高に当たる売上収益、営業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益が、昨年10月に発表した上方修正後の予想数値を上回った。売上収益は前期比13.2%増の4070億600万円、営業利益は同125.9%増の430億4800万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同110.1%増の299億1300万円。昨年10月の予想数値との比較では、売上収益は209億7200万円、営業利益は30億4800万円、親会社の所有者に帰属する当期利益は29億1300万円、それぞれ上振れした。主力の百貨店事業が高額消費やインバウンドの増勢などを背景にけん引し、SC事業やデベロッパー事業も好調だった。
事業別では、百貨店事業の売上収益が前期比10.8%増の2391億2500万円、営業利益が同213.3%増の235億8700万円、SC事業の売上収益が同7.7%増の579億4400万円、営業利益が同121.8%増の94億1400万円、デベロッパー事業の売上収益が同41.9%増の784億1800万円、営業利益が同133.5%増の74億3700万円、決済・金融事業の売上収益が同1.8%増の131億1500万円、営業利益が同25.9%減の25億8300万円、その他の売上収益が同7.1%減の519億2500万円、営業利益が同52.3%増の13億7200万円だった。
中核の百貨店事業は、特に外商とインバウンドが全体を押し上げた。外商は3年連続で数字を伸ばし、前期比7%増の2016億円を記録。免税売上高は同251.7%増の673億7500万円で、過去最高を更新した。店舗別売上高では5店舗が同2桁増。大丸心斎橋店が同35.2%増と最も伸ばし、大丸東京店が同22.0%増、大丸札幌店が同21.6%増、大丸京都店が同14.6%増、大丸梅田店が同13.9%増と続いた。大丸心斎橋店、大丸京都店、大丸神戸店、大丸札幌店、松坂屋名古屋店は新型コロナウイルス禍前の20年2月期を上回った。
SC事業は、インバウンドが大幅に増えた渋谷PARCOが前期比57.3%増と好業績を収めたほか、心斎橋PARCO(前期比46.1%増)、札幌PARCO(同35.5%増)、福岡PARCO(同23.5%増)、池袋PARCO(同21.5%増)、名古屋PARCO(同15.0%増)などが同2桁増だった。営業利益の同121.8%増は、売上収益の改善に保有資産の売却益などが加わったためだ。
デベロッパー事業では、3件のレジデンスを竣工させたほか、建築内装事業でホテルなど開発案件への参画、ラグジュアリーブランドなどからの受注拡大などがあり、さらに開発不動産の売却、グループ内外の内装・設備工事や施設管理業務などの増加によって、売上収益と営業利益が前期を大きく上回った。
決裁・金融事業では、グループの商業施設での決済環境の整備、金融事業における他社との連携および協業などに取り組み、営業収益は僅かに前年を超えたが、投資費用やカードの不正利用に伴う費用などが嵩み、営業減益を強いられた。
その他では、卸売業の大丸興業が主力の電子部品部門の受注減や海外事業の売上げ減少などで減収となったものの、為替差益や保有資産の売却益などで営業増益は確保した。
J.フロント リテイリングの小野圭一社長は24年2月期の業績について「(主力の)百貨店事業はラグジュアリーブランドを中心に好調。富裕層の消費が順調で、若年層の活発な動きもみられた。インバウンドはグループ全体で加速しており、今年2月は過去最高。25年2月期は1000億円を遥かに超えるだろう。ただ、主要顧客の若返りやグローバル化は課題。人々の心を充足させられるリテーラーに昇華しなければならない」と総括した。
25年2月期の連結業績予想は、売上収益が前期比3.6%増の4215億円、営業利益が同12.9%減の375億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同21.4%減の235億円。
(野間智朗)