東武池袋本店、アートの裾野を広げる「アートフェア」 若手から巨匠まで
東武百貨店池袋本店が11~16日、「アートフェア東武 2024」を開催している。場所は8階催事場で、約1500点が並ぶ。若手作家から巨匠まで多様なジャンルを揃えているのが特徴で、長年続けている催事「絵画市」よりさらに、幅広い層にアートを身近に感じてもらうことを目指す。今年で4回目だが、回を追うごとに売上げが伸びているという。
同店は20年以上「東武 春の絵画市」を春に催していたが、コロナ禍で中止となった2020年から、秋の開催に変更。代わりに春に「アートフェア」を行うようになった。絵画市は基本的に絵画のみを扱うが、差異化するためアートフェアでは磁器など多様なラインナップを揃える。ターゲットも、アートに詳しくない人を含めた幅広い層に設定した。
スポーツ・子供・リビング・時計宝飾部美術画廊担当の田村千春氏は「今買ってもらうことだけが目的ではない。アートの魅力や素敵な作品に触れ、人生の節目や何かのきっかけで『買おうかな』と選択肢に上げていただければ」と語る。アートは生活の必需品ではなく嗜好品のため、その良さを理解する下地が重要であり、長期的な種蒔きの意図も込める。
作品鑑賞をより楽しめる、田村さんが作品を解説する動画も公開した
アートフェアは21年春に初めて開催し、4回目となる。今年のテーマは「万国美術博覧会へようこそ!」で、各国が最先端の技術や国威を競った19~20世紀の万博をイメージした。コンテンポラリーアートを紹介する「レボリューション館」、美術史に名を遺す巨匠の作品が揃う「エスタブリッシュ館」など、10のパビリオンに分類して展示。作品の理解を深めてもらうため、初の試みとしてユーチューブへ動画も投稿した。
「アート・アンサンブル館」では古家野雄紀氏、山本雄教氏、八田大輔氏、吉野友佳子氏の作品が集結し、そのアンサンブルが楽しめる。中でも古家野氏は東武百貨店で画業をスタートし、19年に東武東上線川越特急のラッピング車両「池袋・川越アートトレイン」の原画を担当するなど、東武百貨店とゆかりのあるアーティストだ。今回は新たに描いたアートトレイン10両分の原画や新作約40点を展示する。
「トラディショナル館」では伝統的な日本画、浮世絵、古伊万里様式の磁器、ジャポニズムの影響を受けたエミール・ガレのガラス工芸品が並ぶ。磁器は絵画より単価が低い傾向にあるため、前述の「アートを身近に感じてもらう」ことに加えて、展示品の価格帯を広げる目的もある。
毎回こうした独自の世界観で会場を構成しており、21年は「海を渡ったアートたち」、22年は「アートのテーマパークへようこそ」、23年は京都を描いた屏風絵「洛中洛外図屏風」をメインテーマに設定。さらに小分類としてテーマを立てて作品を分類し、初心者も親しめる空間づくりを心掛けている。
こうした取り組みのかいもあり、会を重ねるごとに売上げは伸長。22年は前年比で12%増、23年は15%増を記録し、今回は17%増を目指す。「池袋は非常にトラフィックの良い場所で、ふらっと立ち寄る方や、特定の美術品目当てで訪れる方など様々なお客様がいる。この立地を生かし、より多くの方にアートを楽しんでいただきたい」(田村氏)。
(都築いづみ)