24年の商業施設 大規模改装が続々と
今春も大型商業施設のリニューアルオープンが続いている。それも1年掛かり、2年掛かりの大規模リニューアルや1期、2期と段階的に改装を手掛けている大型商業施設が少なくない。大規模改装が目立つのがイオンモールだ。「イオンレイクタウン」では、23年春に第1弾、今春第2弾、さらに25年の春・秋まで続く。23年春の第1弾で約40店を刷新しており、今春の第2弾ではアウトレット、mori、kazeを合わせると138店舗にもなる。「イオンモール幕張新都心」では、全体の約3分の1にあたる約120店舗を刷新する2年掛かりの大改装が進んでいる。23年春の第1期で46店舗、23年秋の第2期で30店舗、今春の第3期で31店舗が刷新された。第1~第3期を合わせると導入した新店舗は59店舗に上っている。
「イオンモール宮崎」は、今春と今秋の2段階改装で約80店舗を刷新する。イオンモールが施設管理者(PM)となっている「横浜ワールドポーターズ」は、「~横浜ワールドポーターズは超エンタメモールへ~」をリニューアルコンセプトに掲げ、今春の第1期で37店舗、今夏の第2期で31店舗の計68店舗の刷新に踏み切った。
「柏高島屋ステーションモール」では23年春から改装が始まり、今春は新館、S館、本館に31店舗が順次リニューアルオープンした。今秋も新館の改装が続く。今春で1年掛かりの改装が完成するのが「KUZUHA MALL」と「MARK IS みなとみらい」だ。KUZUHA MALLは、23年3月に新規店舗と改装店舗合わせて40店舗がオープンし、SANZEN-HIROBAがリニューアル。23年4月に本館ミドリノモール1階のフードコート・食物販エリアを一新して「フードマルシェ」を開設した。23年12月にはオープンモール型レストラン「ダイニングストリート」の環境整備が進められ、ダイニングストリート2期の改装で3月22日にリニューアルグランドオープンした。
MARK IS みなとみらいは、開業10周年で大改装がスタートを切り、23年春に食品フロアを一新したのをはじめ、23年春・秋、24年春に店舗の改装と新規店舗の導入を続けた。4月26日に控える今回の10周年改装の目玉となる大型シネコンのオープンによって完成を迎える。
増床を伴うリニューアルを手掛けているのがイオンレイクタウンや「イオンモール太田」「イオンモール橿原」「アトレ亀戸」「エキュート赤羽」など。前述したイオンレイクタウンで今春の第2弾リニューアルの主役となったのが、3月29日にパワーアップオープンした「レイクタウンOUTLET」である。これまで駐車場として使用していた場所に2階建ての増床棟を新設。インターナショナルブランドやライフスタイル提案型ブランドを数多く加え、増床棟と既存棟合わせて新規38店舗を含む68店舗を刷新した。増床後の総賃貸面積は約3万㎡(7000㎡増、店舗数138店舗)のスケールに。アウトレットにkaze、moriを合わせたイオンレイクタウンの総賃貸面積は約19万㎡となった。
4月19日に増床リニューアルグランドオープンするイオンモール太田は、これまで駐車場として使用していた西側平面駐車場に2階建ての増床棟を新設して賃貸面積の規模を約1万4000㎡増やし、総賃貸面積約7万6000㎡、総店舗数約185店舗にスケールアップ。これにより増床棟に県内最大級のフードコートを誕生させた。イオンモールは、24年秋の開業に向けて「(仮称)イオンモール橿原3期計画」を進めている。2008年に増床を行ったイオンモール橿原は、今回の増床計画で隣接地に広場一体型となった商業集積を開発し、暮らしの利便性や価値を高める専門店や機能を新たに導入する計画。
ジェイアール東日本都市開発が運営するJR赤羽駅のエキュート赤羽は、スイーツとデリカからなるエキナカ商業施設(売場面積約1663㎡、48ショップ)を展開しているが、新しく上野方面側にみなみゾーン(同約1280㎡、11ショップ)を開発する。乗り換え利用が多い赤羽駅のニーズに対応し、日々の食を支えるグロサリー店舗、隙間時間や通勤時に利用できるカフェ、乗り換えついでに食事ができる飲食ゾーンで構成する。開業は今年夏頃の予定(一部25年春)。アトレ亀戸は今秋の増床リニューアルで、都内最大規模の運行本数を誇る亀戸駅前のバスロータリー側に増築棟を建て、本館と合わせた改装で食料品、軽飲食、サービスなどを拡充して利便性の高い館を目指す。この増床により延床面積が約2900㎡増え、約3万6000㎡の規模となる。
24年春を中心としたリニューアルを別表に掲載したが、それ以外にも改装店舗は多い。小田急SCディベロップメントが運営する商業施設では、「本厚木ミロード」が新店・改装合わせて10店舗をリニューアルするほか、開業後初の改装を実施する「ODAKYU 湘南ゲート」、さらに「新百合ヶ丘ミロード」や「小田急マルシェ狛江」(第1期6月27日、第2期8月29日リニューアルオープン予定)などが春の改装対象となっている。そのほか「イオンタウン仙台泉大沢」、「コクーン新都心」、「モラージュ菖蒲」、「住友不動産ショッピングシティ 有明ガーデン」などの大型SCも春の改装を手掛けている。
イオン仙台泉大沢は、地域に一層寄り添ったSCを目指して23年秋から一部店舗の入れ替えを進めている、今春の改装では目玉として、450坪の書籍売場に30万冊超を展開する「蔦谷書店」と100坪超の面積の「タリーズコーヒー&ティー」を併設したブック&カフェがオープンし、東北エリア初出店となるDAISOの3ブランド複合店(ダイソー、スタンダードプロダクツ、スリーピー)なども開いた。
商業施設はこうしたリニューアルによって地域からの支持を高め、地域の拠点となる施設づくりを進めることを主眼としている。具体的には、1つ目が集い・憩い・交流の場となる広場や遊び場の新設、環境改善。2つ目にフードコート、フードホール、食物販店舗などを対象とした食領域の拡充、3つ目は産官学による連携を強め、地域とのつながりを強化していることが挙げられる。
まず広場や庭園の充実による憩い・集いの場づくりとして、今春のリニューアルにあたり、湘南に住む人々が、大人から子供までもっと豊かに、もっとここちよい場所になるための新ステートメント「湘南と。」を制定した「テラスモール湘南」は、3階のフードコート「潮風キッチン」と「キッズテラス」、4階の「ピクニックテラス」の施設と環境を改善した。潮風キッチンは、幼児連れのファミリーが離乳食を食べさせる時に便利な対面式の3人掛けカウンターを導入し、小上がりの座席も新設した。キッズテラスには新たにインクルーシブ遊具を導入し、身体に障害がある子もない子も自由に遊べる場を提供。ピクニックテラスには人工芝を敷き、人が集まり会話が弾む大テーブルが設置される。
阪急西宮ガーデンズの4階屋上「スカイガーデン」には、遊歩道の宮水リバーウォーク、円形広場の六甲グラススクエア、ローズガーデン、様々なイベントが開かれる木の葉のステージなどがあり、庭園全体の面積は約9000㎡に及ぶ。今春のスカイガーデンの改装では、子供の遊び場となっているスカイガーデン東側部分の植栽の一部を撤去し、人工芝とベンチを設置することで親子の新たな憩いの場所とした。
東急不動産SCマネジメントが運営する「あべのキューズモール」「あまがさきキューズモール」「東急プラザ新長田」は店舗の入れ替えだけでなく、施設共用部もリニューアル。よりくつろぎが感じられる心地よい施設へと進化させる。あべのキューズモールの場合は4階飲食フロアの屋外空間「ガーデンエリア」が「キューズガーデン」に生まれ変わり、“つどい、くつろげる庭”である憩いの場となって7月にオープン。キッズガーデンでは新設される人工芝や築山でリラックスできるほか、子供から大人まで快適に過ごせるようになる。あまがさきキューズモールの場合はJR尼崎駅からデッキで直結している2階エントランスが4月に「きゅーずまえ」として生まれ変わり、交流や買い物帰りに休息できる広場となる。東急プラザ新長田は館内共用部のレストスペースを拡充した。
イオンモール幕張新都心の2年掛かりの大改装は、新駅(幕張豊砂駅)の開業がきっかけとなっている。特に新駅と直結するファミリーモールではMD、施設、環境まで含めた刷新が進む。ファミリーモールという棟名称を「エキマエ」に改称し、エシカルに代表される話題のライフスタイル専門店を加えた。新駅開業に合わせてエキマエ入口まで屋根付きの遊歩道を設け、エスカレーターも新設。エキマエの2、3階には休憩や待ち合わせができる「エキマエラウンジ」を設けた。建物外観もエシカルをイメージしたデザインに一新。エキマエではないが、グランドモール3階には子供の遊び場「もくいくひろば」が設置された。一方で、イオンモール幕張新都心は千葉市、幕張豊砂エリアの近隣企業と連携し、官民のパブリック空間を一体的に活用する社会実験(Walkable TOYOSUNA)に参画して、ウォーカブルなまちづくりにあたっている。その一環として、ペット棟前の市道豊砂701号線には地域の人達が集い、憩える人工芝エリアがオープンした。
増床リニューアルで食領域の拡大と広場を新設するのが、イオンモール太田だ。増床棟の2階には約1100席、15店舗からなる県内最大級のフードコート「FOOD FOREST」が誕生する。フードコート内にいながらも自然を五感で感じとれるエリア「ピクニックコート」を配置し、幼児専用スペース「もぐもぐテーブル」(約230席)も完備。また、増床棟1階には地域に住む人達が集う屋外交流拠点「みらいガーデン」を整備する。
フードホールの座席数増設やファミリーが利用しやすい小上がり席の設置、食品スーパーの周りに食物販店舗を配置するなど、食領域拡大路線も続いている。柏高島屋ステーションモールでは3月から4月にかけて新ショップが相次いでオープン。S館の「フードストリート」にも3月に「富澤商店」「久世福商店」「フロ プレステージュ」「鮨辰」「吉祥寺菊屋」など、4月下旬にはスーパーの「オーケー」がオープンする。これにより、百貨店と合わせて約1800坪のエリア最大級の一大食品ゾーンが誕生することになる。
KUZUHA MALLの1年掛かりのリニューアルは、食のマーケットゾーンと「ダイニングストリート」の再構築が主眼。食のマーケットゾーンについては本館ミドリノモール1階のフードコート・食物販エリアと合わせ、外食、中食、内食と365日使いやすい「フードマルシェ」を構築した。これによりフードマルシェは京阪百貨店の上質な食と、イオンフードスタイルbyダイエーで揃う日常の食を埋めるエリアとなった。開放感あるオープンモール型のレストラン街のダイニングストリートは「緑あふれる気持ち良い空間」をコンセプトに、第1弾で植栽やテラス席の整備を含む環境整備を行い、今春の第2弾で中国料理の「梅梅」、韓国料理店の「韓美膳」、しゃぶしゃぶバイキングの「しゃぶ菜」、ハワイアンカフェ&レストランの「アロハテーブル」などの飲食店舗を加え、完成した。
MARK ISみなとみらいの開業10周年リニューアルの目玉は、大型シネコンの導入と食の強化だ。食については、23年1月から地下1階の食品フロアを全面閉鎖して一新。毎日立ち寄りたくなる「食品館 まいにちマルシェ」を同年6月に立ち上げた。スーパーマーケット(フードウェイ)とシナジーが見込める専門店を周りに集積しており、これによりスーパーマーケット(グローサリー、生鮮三品)の面積が1.9倍拡大になった。
アミュプラザ長崎本館は、今春の過去最大のリニューアルで長崎最大級の食のフロアを誕生させた。“毎日の食卓に彩りを添える「フードマーケット」”がコンセプトの1階の食のフロアには、大型スーパー(SEIYU)やフードコート、スイーツゾーン、和洋中の惣菜ゾーン、グローサリーやベーカリーなど全28店舗を集結。そのうち20店舗が九州・長崎初出店や新業態となっている。
みなとみらいエリア最大級となる飲食ゾーンを誕生させるのが、横浜ワールドポーターズだ。今春の第1期でハワイの情報発信基地となっている1階「ハワイアンタウン」のオープンスペース「スタジオカプア」の客席を約50席増やし120席に、加えて今夏の第2期ではアメリカ西海岸をイメージした非日常的な空間の中に、約500席を有する「ワールドフードホール」を導入。ハワイアンタウンとワールドフードホールを合わせ約620席のエリア最大級の飲食ゾーンとなる。
こうべ未来都市機構が「プレンティ」に続いて「須磨パティオ」の大規模改装にかかる。その内容は今の商業施設づくりのトレンドを取り込み、改装で具現化させようとしているように思われる。23年秋にグランドオープンした大改装でプレンティ(売場面積約2万7200㎡、テナント数101店舗)は、エリア初となるフードコート「ダイニングコート」(約450席)の新設、食の専門店を配した「フードマルシェ」の導入、休憩空間の「センターコート」と「アトリウムコート」のリニューアル、子育て世代をサポートするキッズ&ファミリーフロアの新設、シェアワーキングスペースとチャレンジスペースの新設などでSC全館が一新された。
24年度に予定されている24年ぶりとなる須磨パティオ(売場面積約1万6700㎡、90店舗)の全面リニューアルでも、プレンティと同じ改装路線がとられている。フードコートやオールデイダイニングの新設などによる「食のパワーアップ」、ブック&カフェ・親子カフェ、キッズスペースなどの開設による「子育てサポートの充実」、シェアキッチンの新設、チャレンジショップ開設、屋上広場のリニューアルを実現して一新を図る計画。
プレンティと須磨パティオが改装で新設するシェアオフィスやコワーキングスペースは、他の商業施設にも取り込まれている。柏高島屋ステーションモールでも今秋、新館10、11階に“柏の人の居場所”をコンセプトに、東神開発が自ら運営する「コミュニティスペース」が誕生する。10階には情報発信・コミュニケーション拠点となるオープンスペースを中心に、展示や商品販売の場として利用できる「ポップアップスペース」、ダンスやヨガの教室に最適な「スタジオ」、大人数の研修や講演会を開催できる「ホール」、家族や友人と集える「キッチン&ダイニング」を整備。11階にはコミュニティスペースの一部として代官山や渋谷で展開する「SHARE LOUNGE」が出店する。
そのほか、イオングループのSCに代表されるように、クリニックや調剤薬局、ドラッグストアなどを併設したヘルス&ウェルネス路線の強化も目立っている。
(塚井明彦)