2024年11月22日

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高島屋新宿店、デニム集う“交差点” アップサイクルから産学連携、ワークショップまで

「SHINJUKU DENIM SCRAMBLE」と題し、4月2日まで開催

高島屋新宿店は27日、2階の「ザ・メインスクエア」で「SHINJUKU DENIM SCRAMBLE」(以下、デニムスクランブル)を始めた。客から回収したデニムをアップサイクルした「再生デニム生地」を使い、「RED CARD TOKYO」や「JOHNBULL」、文化服装学院アパレルデザイン科の学生が手掛けた衣料品を展示・販売するとともに、岡山県西部と広島県東部にまたがる「三備産地」から4社・9ブランドが登場し、週末にはワークショップやトークショーを実施。不要になったデニムを回収する箱も設置した。4月2日までの期間、多種多様な人が集まる新宿区で、通行客が多い一等地で、デニムをキーワードに“スクランブル”を表現。デニムとの新たな出会い、学生の成長の場、アップサイクルの啓蒙などにつなげながら、購買意欲を喚起する。

デニムスクランブルは、高島屋が循環型社会の実現を目指して2021年から進める「Depart de Loop(デパート デ ループ)」の一環で、岡山県倉敷市と共催。デパート デ ループの企画をこれほどの規模で実施するのは初めてという。店内だけでなく、JR新宿駅側入口に近いショーウインドーもデニムスクランブルが“ジャック”した。

ショーウインドーも活用してPR

そのJR新宿駅側入口から高島屋新宿店内に足を踏み入れると、目の前には再生デニム生地を用いた衣料品が広がる。最も目立つのは、文化服装学院アパレルデザイン科の学生が「循環」をテーマにデザインから縫製まで担った服をまとった4体のマネキンだ。それぞれには学生の名前やデザインのこだわりなどを記した立て看板が添えられ、価格も表示。全て購入できる。文化服装学院との協業は、客から回収したカシミヤニットなどを「再生カシミヤ混ニット」にアップサイクルして販売した昨秋以来2回目で、今回は4人の学生が立候補し、いずれも商品化した。

文化服装学院の4人の生徒が手掛けた衣料品も展示・販売

再生デニム生地を用いた衣料品は、ほかにデパート デ ループの開始時から協業するRED CARD TOKYOの2型、JOHNBULLの1型・2色をラインナップした。

再生デニム生地を用いた衣料品の展示・販売以外では、三備地区を拠点とする「BLUE SAKURA」「T-ASSAC」「kojima market place」「araiyan/LoLoLavo/MASTRO」「ai no de」「倉敷屋」といったポップアップショップが連なる。

30~31日の週末にはワークショップやイベントを開く。ワークショップは30日が午前11時30分~午後6時30分、31日が午前10時30分~午後4時30分で、生地や装飾を選ぶと職人がトートバッグやサコッシュに加工してくれたり、持ち込んだジーンズに職人が「ペンキちらし」や「ダメージ・穴あけ加工」を施してくれたり、デニムキーホルダーの制作やTシャツの染色を体験できたりする。

イベントは30日の午後2時30分からで、「Dr.DENIM HONZAWA」の本澤裕治氏と「ITONAMI」の島田舜介氏のトークショー。日本のデニム業界で屈指のジーンズプロデューサーである本澤氏と岡山県でデニム製品づくりや宿泊施設の運営を行う島田氏が、デニムの魅力や三備地区におけるものづくりなどについて語る。

デニムを起点にアップサイクル、ポップアップショップ、回収箱、ワークショップ、イベントなどを揃え、スクランブルというネーミングも含めて「新宿らしいカオスを表現した」(橋祐介MD本部化粧品・特選・宝飾品部バイヤー)。

デパート デ ループは4年目を迎えた。当初からデパート デ ループを主導する橋氏は「再生ポリエステルから始め、2年目に再生デニム、再生カシミヤと素材を拡大していき、3年目には化粧品をクレヨンやセメント資源に生まれ変わらせ、羽毛ふとんを再生させた。(3年間で)かなり浸透した実感がある。実際、回収実績は年々増加し、再生して販売した商品の売上げも好調だ」と手応えをつかむ。デパート デ ループとしての収益は黒字化されており、いわゆる「サステナビリティ経営」も体現する。

なぜ、デパート デ ループは支持されたのか。橋氏は「お客様に『百貨店というフィルターで不要品を回収してもらったら安心』と思ってもらえている。1回だけのキャンペーンでは販促目的でやっているように誤解される」と分析する。その上で「もっとお客様と関わりたい。売場なり何なり、循環の拠点を常設化したい。あるいは、デパート デ ループに参加した証をポイントやスタンプカードなどで残せないか検討している。『タカシマヤアプリ』で、これまで何kgを回収してもらったか分かるようにする手もある」と、さらなる進展に向けた腹案を示す。

左から「デパート デ ループ」を主導する橋祐介MD本部化粧品・特選・宝飾品部バイヤー、中川友恵新宿店販売第3部デニムスタイルラボショップマネジャー、白井七海MD本部婦人服・婦人雑貨・子供・ホビー部バイヤー

デパート デ ループは、専門組織があるわけではない。橋氏が考えたり、各部門のバイヤーが橋氏に提案したりして、順次動く。そして最近は、橋氏への提案が多いという。すでに新たな企画が水面下で動いており、デパート デ ループによる不要品の循環は、その速度をますます上げていきそうだ。

(野間智朗)