<ストレポ3月号掲載>大型商業施設の趨勢 24年の新規開業・春夏の改装
今年も全国の主要都市で再開発に伴う大型商業施設が開業する。東京や大阪など大都市部では大規模な再開発プロジェクトが目白押しで、複合商業施設が続々と誕生してくる。東京では晴海、豊洲、渋谷・原宿が、大阪では梅田が注目されるエリアであろう。都市郊外や地方都市でも行政主導の土地区画整理事業、駅周辺や工場跡地などの再開発が進んでおり、そこに新しい「まち」の創出とともに商業施設が開業する。
一方、既存の大型商業施設も消費環境の劇的な変化に適応していくための改装に積極的に取り組んでいる。新規開業組と同様、生き残りをかけた競合は熾烈化している。勝ち残っていくためには他の大型商業施設と一線を画す存在価値が問われ、そこには地域特性に相応しい魅力ある新しい「まちづくり・交流拠点化」と「地域振興・社会貢献」の視点が欠かせない。
※この記事は、月刊ストアーズレポート2024年3月号掲載の特集「大型商業施設の趨勢」(全19ページ)の一部を抜粋・編集して紹介します。購読される方は、こちらからご注文ください。(その他3月号の内容はこちらからご確認いただけます)
<24年の開業編>
地域共生・共創型の「まち」続々と、交流拠点機能の魅力化競合が熾烈化
日本ショッピングセンター(SC)協会の調査によると、2024年(1~12月)に開業予定のSCは27施設で、前年と比べると7施設少ない。その23年は34SCが新規に開業した一方で、38SCが閉店している。建て替え、建物老朽化、売上不振が主な閉店理由だ。この結果、23年12月末の国内SC総数は3129施設となり、前年より4施設減少した。01年時点のSCは2603施設で、そこから比べると526施設も増えている。しかしながら18年末の3220施設をピークに減少傾向を辿っており、コロナ禍前から生き残りをかけた戦いが熾烈化している。ここにコロナ禍の売上げ減と、消費環境や生活スタイルの劇的な変化が、サバイバル戦に拍車をかけている格好だ。
三井不動産、東京・晴海に地域密着型「ららテラス」
三井不動産が東京2020大会選手村跡地の晴海エリア内で開発・運営する「三井ショッピングパーク ららテラス HARUMI FLAG」は、店舗面積1万平米超の中規模のSC。「〝新しい街〟からはじまる〝新しい暮らし〟」をコンセプトに、晴海エリア近傍の生活者の日常を支える商業施設で、約40店舗を揃え、「生活密着型施設」として同エリアでの快適なライフスタイルの実現を目指している。
生活密着は誘致する専門店だけでなく、施設内の環境整備でも具現化する。施設内には東京2020大会の歴史を伝えるスポーツピクトグラムのオブジェ(2階メインエントランス)や新しい暮らしを象徴するアートウォール、人の交流を創出するイベントスペースを設置。イベントスペースは、3階エレベーターホール前に設ける共有スペース内に設けられる。ソファー席、大型LEDビジョン、充電設備のあるカウンター席なども完備する。また2階に設けるキッズスペースでは、ベビーカーと一緒に入れる広いトイレや授乳室、おむつ替えスペースなどを完備する。
こうした環境整備によって「新しい街・晴海の地域交流の創出の場」として、地域社会に貢献する施設を目指している。地域交流の場の創出は新しい街づくりに欠かせない要素であり、地域になくてはならない存在価値と施設の特徴化につながる。
さらにサステナブル社会の実現に向けて、太陽光パネルの設置など環境に優しい施設づくりに取り組み、「ZEB Oriented(物販等)」認証を取得した。エリア全体で水素エネルギーや太陽光エネルギーなど地域環境に負担が少ない再生可能エネルギーを積極的に活用し、さらにEV充電サービスや屋外エリアの緑化(広場、屋上、歩道合計約7000平米)なども取り組み、環境に優しい地域を目指していく。
ららテラス晴海フラッグの近隣には地域生活を支える各種施設が整備されている。各施設との連携に加え、交通の拠点となる晴海五丁目ターミナル(通称マルチモビリティステーション)が隣接することから、エリアの利便性向上や賑わい創出の役割を果たし、地域密着型の施設づくりに取り組む。
交流型集客施設目指す「ゆめが丘ソラトス」
今年は首都圏郊外立地で再開発に伴う新たな街づくりの重責を担う大型商業施設が相次いで開業する。相鉄グループが相鉄いずみ野線ゆめが丘駅前で開発・運営する「ゆめが丘ソラトス」も、注目される大型商業施設のひとつだ。横浜市泉区内で最大規模の商業施設で、ゆめが丘周辺の自然豊かで農業が盛んな地域資源を最大限に生かし、「食」、「アクティビティー」、「教育・文化」など、様々な体験ができる交流型集客施設を目指していく。
ゆめが丘ソラトスは、約24ヘクタールに及ぶ「泉ゆめが丘地区土地区画整理事業」の一環で、相鉄アーバンクリエイツと相鉄ビルマネジメントが開発・運営する。施設コンセプトは「ゆめが丘から生まれるローカルライフ、住まう・働く・訪れる。すべてのひとに届く、自分らしい〝毎日〟と深まる〝満足〟」で、ゆめが丘に根ざし芽吹く暮らしの新たなシンボルとなる交流拠点を目指す。
地上3階建てで、店舗面積約4万2700平米に、約130店舗を集積する。1階は食物販ゾーン「ゆめが丘マルシェ」と飲食ゾーン「ソラトスダイニング」を中心に構成。2階はファッションとライフスタイル関連を中心に集積し、3階は10スクリーンを完備する大型シネマコンプレックス「109シネマズ」、アミューズメントパーク「アソベル」、フードコート「フードステーション」などの時間消費型施設で構成する。
こうした専門店の集積に加え、地域コミュニティ機能も重視している点も特徴だ。その拠点となる地域交流体験スペースを随所に設ける。1階にはシェアキッチン「ライブキッチンソラトス」をゆめが丘マルシェに併設する。生産者がレシピを紹介するイベントを開催し、楽しい時間を共有できるサードプレイスとしての空間を提供する。2階と3階には交流空間「ソラトスルーム」を設置。催事、展示場、セミナーなどに使用する。屋上には広場「そうにゃんぱーく そらの広場にゃん」を設ける。約3000平米に遊具を揃え、子供が遊べて、子育て世代が交流できる場を提供する。
また循環型社会への取り組みにも注力する。太陽光パネルの設置、施設から出る廃食用油の資源活用、衣服の再資源化などに取り組み、加えて走行可能な自動配送ロボットを導入して、物流業務の人手不足解消や利用者の利便性向上に努める。
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