松屋の「ギンザフローズングルメ」、最先端技術による“炊き立て”ご飯
松屋は20日、自主運営の冷凍食品売場「ギンザ フローズン グルメ」の新商品を発売する。銀座をはじめ都内の名店の味を新たに加え、最新の冷凍技術で実現した江戸前寿司や、これまでの冷凍ご飯のイメージを変える“炊き立て”が味わえる白米も登場。2022年8月のスタートから、クオリティの高いラインナップで着実に売上げを伸ばし、当初の狙いでもあったギフトのニーズも順調に増えている。松屋ならではのネットワークを生かし、特殊な冷凍技術を結集した自信作を揃え、拡販に臨む。
今回登場するのは、7ブランドで9種類のラインナップ。中でも目玉となるのが「GINZA FROZEN GOHAN~ギンザ フローズン ゴハン~」で、満を持しての“白いご飯”だ。松屋食品部の今井克俊担当課長は「10カ月ほど前、店頭でお客様から『名店の味はあるけどご飯がない』という声があり、売場スタッフからも同じ意見があった。チャレンジしたいと思った」と、きっかけを話す。
実は、冷凍ご飯は業務用では多くつくられているものの小売りでは少ない。炊いたご飯を冷凍にして、なおかつ“おいしく”するのは難しいという。そこで今井課長は、銀座店地下2階の米専門店「米処 結米屋」を運営する株式会社シブヤの澁谷梨絵代表取締役に相談を持ち掛けた。すると「スチーム技術でおいしい冷凍ご飯ができる可能性がある」との回答が得られた。
澁谷氏に「(冷凍ご飯の)概念が変わった」と言わしめたのが、最先端の食材加工テクノロジーを有する株式会社T.M.L。同社が早稲田大学と埼玉県と共に開発した蒸し調理技術「ソフトスチーム加工」は、コメに含まれる酵素を生かし、コメ本来の甘さや食感を最大限に引き出せる。コメの中心まで外側と同じように熱を加える、湿度100%の「飽和湿り空気」を使用。1℃単位でコントロールして加熱することにより、コメの細胞を壊さず、弾力ある米粒の食感を長持ちできる。同技術は03年に開発したが、質を担保できるコメの加工には約12年かかった。T.M.Lの山川裕夫代表取締役は「炊き立てのおいしさをどう伝えるかが一番大切。それがとても難しかった」と語る。
米専門店のネットワークと最新技術、今井氏の熱意で、ギンザ フローズン ゴハンは誕生した。使用するコメは、5ツ星お米マイスターでもある澁谷氏が厳選した山形米の「夢ごこち」と新潟米の「新之助」の2銘柄で、夢ごこち160g(2個入り、1296円)と、新之助(160g、476円)を用意。レンジに3分40秒かけると、米粒が立ちふんわりとした炊き立てのようなご飯に仕上がる。
そのほか、白いご飯に合うラインナップも取り揃える。銀座で大正5年から続く老舗「はち巻岡田」の「東京しゃも鍋」(2人前、7020円)は、江戸前の醤油だしにブランド鶏の東京しゃもを入れた季節限定の看板商品。同じく銀座のすき焼き割烹「銀座 吉澤」の黒毛和牛を使用した「ローストビーフ」(2~3人前、8165円)は、融点が低く口どけの良い脂と肉の柔らかさが特長となる。
銀座のみならず都内の名店の味も登場する。黒毛和牛専門卸しのヤザワミートが手掛けるとんかつ店「あげ福」は、「岩中豚」のロースと秘伝の「デンジャーソース」を合わせた「豚の生姜焼き」(1~2人前、1251円)を、五反田に本店を構え、予約は2年待ちという「食堂とだか」は、肉の旨味とスパイスが絶妙な味を生み出す「とだカレー」(1人前、1404円)を提供する。麹町の「エリオ・ロカンダ・イタリアーナ」は、松屋限定の「ラザニア」と、伊・サルディーニャの濃厚なペコリーノチーズと北海道産チーズを使用したローマ3大パスタの1つ「カーチョ ペペ」をつくり上げた。いずれも1人前で2592円。
今井氏が「冷凍食品を始めてからずっと課題としていた」という、すしも品揃えに加わる。「銀座三丁目江戸前握り鮨」(8貫、3780円)は、江戸前寿司職人が一つ一つ握ったすしを、最新冷凍技術「エアブレスト瞬間冷凍技術」で冷凍保存する。豊洲仲卸の目利きが選んだネタと赤酢のシャリを使用し、江戸前の手業が施されたおいしさが味わえる。
ギンザ フローズン グルメはオープンから1年半が経ち、売上高目標の1.5倍、面積当たりの売上高も6倍以上と順調に推移している。最近では、オープン当初から目的の1つでもあったギフトのニーズも増加。「食べておいしかった商品を遠方の知り合いに送りたい」「銀座の味を大切な人への贈り物にしたい」といった声が聞かれるようになったという。今井課長は「本格展開した昨年の歳暮商戦も、売上目標値より20%増。認知度も徐々に上がり、大変うれしく思っている」と、これまでの成果によろこびを表す。松屋の腕の見せ所として、さらなるファン獲得に力を注ぐ。
(中林桂子)