花王、ヘアケア市場に攻勢
花王はヘアケア事業に本腰を入れる。「ハイプレミアム」と位置付けるシャンプーで1400円以上の価格帯に、今春から来年にかけて新ブランドを投入するとともに、同じく1400円未満の価格帯で展開する「メリット」や「エッセンシャル」「セグレタ」ら既存ブランドを再構築。2027年の売上高を2023年の約1.4倍に増やす。
花王によればヘアケア市場、中でもインバスヘアケア市場は「伸長が鈍化しつつあるが、(ハイプレミアムをはじめとする)プレミアム化は継続している」(内山智子ヘアケア第一事業部長)という。同社は20年3月に「イネス」を投入するなどでヘアケア市場を深耕してきたが、ヘアケア市場におけるハイプレミアムの構成比が41%に対し、花王が手掛けるブランドにおけるハイプレミアムの構成比は1%にとどまる。その乖離の解消は喫緊の課題であり、ヘアケア事業の変革に乗り出した。
まず新たな事業ビジョンを策定。「髪の生きる力を、人の生きる力へ」を掲げ、髪の持つ力を最大限に引き出し、人の生きる力に変えていける商品、あるいは人それぞれのありたい髪を実現し、希望や活力に満たされた毎日を提供する商品を開発していく方針を固めた。
続いて、商品の開発方法を「リレー方式」から「スクラム体制」に変更。従来は各部門が順番にバトンタッチして商品を開発してきたが、「各部門が1カ所に集まり、『こういうものをつくる』と決めて一丸で取り組む」(内山氏)ようにした。商品の開発に費やす期間が2~3年から1年に短縮されたという。
さらに、新たなマーケティングとして感性と技術、体験を融合。技術によるソリューションだけでなく、デザインや香りといった感性、特別な体験などを求める人々のニーズに応える。特にハイプレミアム市場ではそれらが重要という。
変革を推し進めるとともに、新ブランドの投入と既存ブランドの再構築に着手。新ブランドは4月20日、第1弾として「melt(メルト)」を発売する。「休みながら美しく“休息美容”」をうたい、音や泡、触感、香りなど様々な感覚に働きかけながら、みずみずしく柔らかい、とろけるような“ツヤ髪”を演出する。
ラインナップは「モイストシャンプー」「モイストトリートメント」「クリーミーメルトフォーム」「モイストコンディショニングウォーター」からなり、モイストシャンプーとモイストトリートメントには髪の表面と内側を同時に補修する「ハイブリッドリペア処方」、髪の内部に潤いを貯め込む「メルティ美容液成分」を採用。クリーミーメルトフォームはパウダーを水に混ぜると炭酸が発生し、濃密でクリーミーな泡が頭皮と髪にとろけるように密着、髪を解きほぐしながらなじませると毛穴の周りの汚れや皮脂を浮き上がらせ、清潔に整える。モイストコンディショニングウォーターは髪用化粧水で、みずみずしいツヤへと導く。
炭酸パウダーからシャンプー、トリートメント、化粧水までの一連のケアで、心と髪をケア。髪が絡まり、ぱさつき、ツヤがない“ストレス髪”を、滑らかにまとまり、潤う“リラックス髪”に変える「オンリーワンの感動体験」(渡邊俊一ヘアケア研究所上席主任研究員)を提供する。
想定価格はモイストシャンプーとモイストトリートメントが1760円(詰め替え用は1320円)、クリーミーメルトフォームが2200円(12包)、モイストコンディショニングウォーターが1430円。全国のロフトおよびインターネット通販サイト「ロフトネットストア」で3月上旬以降に先行発売し、4月20日以降はマツモトキヨシグループ、ココカラファイングループ、マツキヨココカラオンラインストア、ハンズなどで取り扱う。
新ブランドは今秋に第2弾、来年に第3弾を計画中だ。ハイプレミアム市場で攻勢を強め、花王のヘアケアブランドにおけるハイプレミアムの構成比を早期に1%から5%に引き上げる。既存ブランドの再構築はメリットとエッセンシャルが今春、セグレタは今秋を予定する。
(野間智朗)