2024年11月21日

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【連載】富裕層ビジネスの世界 増加する「日本を見捨てる人たち」の実態

コロナ禍が収束し、株高も進む中、日本人の国外転出が増加している。

「住民基本台帳人口移動報告」によると、2023年の1年間に日本から国外に転出した日本人は15万9421人だった。一方、国外から日本へ転入した日本人は13万4171人。2万5250人の転出超過である。国内では東京一極集中のトレンドが再び顕著となっているが、その東京都でさえ転出3万7343人に対し転入は3万0949人と、6394人の転出超過なのだ。

海外長期滞在者と永住者を合計した海外在留邦人の数は右肩上がりに増え続け、コロナ直前の19年にピークを打った。その後減少したのは、やはりコロナの影響だろう。だが、コロナ禍の時期でも永住者数は増え続けた。永住者は腰を据えた海外移住であり、この数が一貫して増加している。

  • トップ3は米国、中国、オーストラリア

では日本を脱出した日本人はどこへ向かったのだろうか。23年のデータ(在留邦人数)によると、上位10カ国は次の通りだ。

① アメリカ(41.5万人)
② 中国(10.2万人)
③ オーストラリア(10.0万人)
④ カナダ(7.5万人)
⑤ タイ(7.2万人)
⑥ イギリス(6.5万人)
⑦ ブラジル(4.7万人)
⑧ 韓国(4.3万人)
⑨ ドイツ (4.2万人)
⑩ フランス(3.6万人)

コロナ禍前の19年に比べるといずれの国でも減少したが、22年との前年比増減ではオーストラリア、カナダ、韓国、台湾、ニュージーランドなどで増加した。

ちなみに都市別の上位は、
① ロサンゼルス都市圏(6.4万人)
② バンコク(5.1万人)
③ ニューヨーク都市圏(3.7万人)
④ 上海(3.7万人)
⑤ 大ロンドン市(3.2万人)
日本企業の支社・支店や、現地法人が多く存在する都市が上位に並んでいる。

こうした動き、かつてはワーキングホリデーを利用した若者の行動が象徴的だった。日本はオーストラリアなど29カ国・地域と協定を結んでおり、長い歴史がある制度だ。

ワーキングホリデーの人気先は今でもオーストラリアで、22〜23年度の同国におけるワーキングホリデービザ発給数は、1万4398件(日本国籍保有者)。過去最大となったと現地メディアが報じている。

  • 円安だから海外で

一方、海外就労の動きはどうなっているのだろうか。

23年の求人掲載数800件、応募数累計2500件の海外求人サイトの運営者は、「コロナ禍明け以降、飲食店関連の求人掲載数と応募者が目に見えるほど急激に増えた」と最近の状況を語る。

「コロナ禍前の求人掲載は、一般求人8割、飲食店関連2割だったのが、コロナ禍明け後は一般が5割程度まで落ち込み、逆に飲食店関連が5割程度まで増えました。応募者のメインは30代、40代の独身者。日本である程度の社会経験を積んだ方がほとんどです。20代は海外移住のためというより、ワーキングホリデーで短期間行く人が多いですね」

では、メイン層の30、40代独身者群の海外転職の目的、動機は何だろうか。

「ここ数年は日本よりも給料が良いという理由が圧倒的に多いですね。30代だと国内では年収400~500万円が相場ですが、海外なら1000万円も夢じゃない。過去に当サイトでは、アメリカのすし職人で年収2200万円というケースがありました。円安の今、海外で稼ごうと思っている人が多いのではないでしょうか」(運営者)

残業が少ない、休日が多い、気楽な人間関係など海外の労働環境が魅力との声も多いという。

「日本で10年働いた後にオーストラリアで調理師として就業された方が『日本人は働くために生きている。オーストラリア人は余暇を楽しむために生きている』と話していたのが印象的です。あとは、日本のぎすぎすした人間関係がいやで海外を志向される方もいて、そういう方は日系企業以外の求人を問い合わせてきますね」(同)

レアケースだが、日本で出会った恋人が外国人で、その国の求人はないか、といった問い合わせもあるようだ。求人の応募者はほぼ50代までで、60代以降はほとんどないという。

求人サイトにおける求人応募数の人気上位職種は、すし職人/和食調理師、カスタマーサポート、飲食店マネージャーの順で、中でもすし職人や和食調理師は大人気だという。対してホテルのゲストリレーションや現地のツアーガイド、ウエディングコーディネーターなどは、日本人観光客数が落ち込んでいるためなのか、求人案件が減っているという。

  • 節税目的の富裕層も

ちなみに就労先の人気上位5カ国は
① アメリカ(特にハワイ)
② オーストラリア
③ シンガポール
④ ニュージーランド
⑤ ドイツ
となっている。

高賃金や労働環境の良さを求め、日本に見切りをつけて海外に渡っていく現役世代が増えている一方で、老後を海外で暮らす富裕シニア層の海外移住もすっかり定着。気候が温暖、治安がいい、景観がいいなどの理由からマレーシア、タイ、フィリピン、ハワイなどが人気になっている。節税目的の富裕層も増えていると言われている。

GDPが世界4位に転落する見通しの日本経済。海外との賃金格差、労働環境格差が大きく改善する展望は見えてこない。それだけに日本を脱出する動きは、今後ますます加速していきそうだ。

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