2024年10月30日

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コーセーの23年12月期、増収も純利益37.9%減

2024年12月期は「薬用 雪肌精」の刷新が3月に迫るほか、好調の「コスメデコルテ」も前期比で2桁増の売上げを狙う

コーセーの2023年12月期連結決算は、純利益が前期比37.9%減の116億6300万円だった。中国や韓国での販売が計画を大幅に下回るとともに、為替差益が減少。賃金の上昇や化粧品需要の増加などを背景に、人件費やマーケティングコストなどの販管費が前期より118億円増えたのも響いた。

売上高は前期比3.9%増の3004億600万円、営業利益は同27.7%減の159億8500万円、経常利益は同28.7%減の202億5200万円。売上高は日本が計画に対して174億円、欧米など「タルト」が同じく86億円の上振れだったが、中国や韓国をはじめとするアジアは306億円の下振れで、増収は確保したものの、23年12月期に計画した3050億円には届かなかった。日本は全販路がプラスで、特に専門店は新型コロナウイルス禍前の19年度の水準まで回復。タルトはコンシーラーやリップなど主力商品の動きが良く、売上高は578億円で過去最高を記録した。アジアでの減収は、中国経済の低迷、昨年8月の福島原発処理水の海洋放出などが足枷だった。

営業利益は計画が210億円に対して50億円ほどのマイナス。減収による粗利益の減少や販管費の増加が下押しした。経常利益は為替差益が減少した影響が大きい。

24年12月期は売上高が前期比3.9%増の312億円、営業利益が同25.1%増の200億円、経常利益が同2.7%増の208億円、純利益が同8%増の126億円を見込む。同期の成長戦略として「ブランドのグローバル展開の加速」を打ち出し、日本では「ハイプレステージ市場での更なるプレゼンスの向上」「マス市場でのシェア拡大」、タルトでは「展開地域における更なる成長」、中国・TR(トラベルリテール)では「ブランド価値向上と事業収益性の改善」、欧米やASEAN、インドでは「コーセーブランドの新たな市場開拓」に取り組む。

日本でのハイプレステージ市場での更なるプレゼンスの向上では、23年12月期に過去最高の売上高となった「コスメデコルテ」の品揃えを拡充して前期比で2桁の成長を目指す。マス市場でのシェア拡大では「雪肌精」や「ONE BY KOSE」などプレステージと位置付けるブランドの拡販に注力。例えば雪肌精はロングセラーの化粧水を刷新し、3月1日に発売する。

タルトでの展開地域における更なる成長では、欧州や中東、アジアへの出店を加速。「TikTok」を含めた新たなチャネルも確立し、新客の獲得につなげる。商品ではリップがコンシーラーに次ぐ売上げの柱に育ったため、“第3の柱”としてマスカラに照準を合わせる。

中国・TRにおけるブランド価値向上と事業収益性の改善は、コスメデコルテなど高価格帯商品の販売強化、ブランドファンの育成、余剰在庫の圧縮などが骨子。事業収益性の改善に向けては、競合が激化するインターネット通販のセールのプロモーションを見直す。

欧米やASEAN、インドなどでのコーセーブランドの新たな市場開拓では、北米でのマーケティング部門の体制を強化するほか、欧州ではフランス支店を新設。ASEANやインドには地域統括の責任者を派遣し、一体での事業戦略を推進する。

関連して組織改正も実施。部門の連携とグローバル対応の強化を目的に「商品本部」を設置した。さらに、7月には「南アルプス工場」(山梨県南アルプス市)の建設に着工。26年12月期上期の竣工を目指す。同工場は国内3カ所目で、投資額は250~300億円。竣工は第1期と位置付け、「同じ大きさの施設を2つ増やせる敷地があり、市場の変化などを見極めてスピーディかつフレキシブルに必要なモノを提供していく」(黛博道執行役員生産部部長)。第2期以降の計画は未定だ。

(野間智朗)