2024年11月22日

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事業着工から40年、「みなとみらい21」の新ステージ始動【上】

みなとみらい事業が着工して40年が経過した「みなとみらい21」地区

「みなとみらい21」の事業着工から40年が経過した。オフィスやホテル、ホール、アリーナなどの文化施設に加え、商業施設やマンションなど多くのビルが建ち、街区の96%まで開発は進行。建設の時代が終焉し、2023年から新しいステージがスタートした。これまでの40年間でみなとみらい21の街は大きく進展し、今や年間来街者が約6680万人、就業者が13万人以上に上る街に発展した。街には様々なプレイヤーが集い、アートや音楽の街としてだけでなく、イノベーションの都市として注目度も高まっている。

横浜のウォーターフロントにおける新しい都心づくりとなるみなとみらい事業は、横浜が打ち出した六大事業の1つである「都心部強化事業」の中核的プロジェクトとしてスタートを切った。

同事業は4期に分けて開発が進められた。第1期(1965~1982年)の「構想 計画・移転交渉の時代」は、高度経済成長期が73年ごろまで続き、横浜では65年から10年間に亘って人口が急増する一方、交通渋滞、住宅や学校などのインフラ不足も生じていた。72年に第1次オイルショック、79年には第2次オイルショックが始まるなど、まさに激動の時代だった。しかし80年には困難を極めた三菱重工業の横浜造船所の移転が決まり、81年には計画および事業の名称が「みなとみらい21」に決まった。

続く第2期(1983~1992年)の10年間は「事業着手 基盤・公共施設整備の時代」となり、土地区画整理事業などの都市計画が決定。みなとみらい21事業が83年11月に着工となった。宅地(業務・商業・住宅など)87ha、道路・鉄道用地42ha、公園・緑地など46ha、ふ頭用地11haを合わせた総面積約186haの土地を対象に、埋め立て事業、土地区画整理事業、港湾整備事業などの都市基盤の整備が進められた。2期では公共事業が先行して整備され、「横浜美術館」「パシフィコ横浜(横浜国際平和会議場)」「横浜みなと博物館」などがオープンした。バブル景気真っ只中の89年には「横浜博覧会(YES89)」が開催され、開催期間中の入場者数が約1333万7000人に上った。

そして第3期(1993~2022年)の30年間は「民間街区開発の時代」となり、みなとみらいのシンボルである高さ296mの「横浜ランドマークタワー」(93年)をはじめ、「横浜銀行本店ビル」(同)「三菱重工横浜ビル」(94年)「クイーンズスクエア横浜」(97年)「日石横浜ビル」(同年)などが先行オープンした。

2000年代に入ってホテル、オフィスビルなどの竣工が相次ぎ、新型コロナウイルス禍でもその勢いが続いた。20年には47街区にコーエーテクモ本社、横浜東急REIホテル、KT Zepp Yokohamaが入る「KTビル」、54街区にオフィス、店舗、カンファレンスなどが入る複合オフィスビルの「横浜グランゲート」、パシフィコ横浜に隣接して多目的ホール、大中小の会議室を備えたMICE施設「パシフィコ横浜ノース」、38街区に音楽専用アリーナ「ぴあアリーナMM」、ぴあアリーナMMと同じ並びのみなとみらい大通りの47街区にオフィス、研究所などが入る「村田製作所みなとみらいイノベーションセンター」、20街区のパシフィコ横浜ノース隣りに「横浜ベイコート倶楽部ホテル&スパリゾート」「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」がオープンした。

ロープウェイでみなとみらいの街を上空から見渡せる

21年には43街区に「神奈川大学みなとみらいキャンパス」、38街区に「首都高速道路神奈川局」などが建設された。この年には桜木町駅前から横浜ワールドポーターズそばの運河パークまでを結ぶ都市型ロープウェイ「YOKOHAMA AIR CABIN」が運行開始となった。22年には「資生堂グローバルイノベーションセンター」隣りの55-1街区に、研究所、事務所、賑わい施設などからなる「LG YOKOHAMA INNOVATION CENTER」と、58街区にオフィス、店舗、プラネタリウムなどが入る「横濱ゲートタワー」がオープンした。

コロナが収束に向かった23年には、37街区にオフィス、ホテル、店舗などからなる複合施設「横浜コネクトスクエア」、新港地区の赤レンガ倉庫の近くに「よこはま新港合同庁舎」、横浜アンパンマンこどもミュージアムとオーケー本社の間の海際60・61街区の「ミュージックテラス」にアリーナ棟の「Kアリーナ横浜」、ホテル棟の「ヒルトン横浜」、オフィス棟の「Kタワー横浜」の3棟からなる大規模複合施設がオープンしている。

3期までの40年間で街区の開発が96%まで進み、みなとみらいの街にはオフィスからホテル、ホールギャラリー、商業施設、マンション、公園までの機能が整備され、大きな発展を遂げた。40年経った現在のみなとみらいの年間来街者数は約6680万人(22年実績)で、就業者数約13万1000人(同)、事業所数約1890社(同)、住民数約9000人(世帯数約4360世帯)という規模になっている。来街者数については19年に約8340万人を記録したが、コロナにより20年から減少傾向。しかし、22年は約6680万人と前年を約530万人上回り、着実に回復への道を辿っている。

完成の域に達したみなとみらいには、ホテルが充実。「ヨコハマグランドインターコンチネンタルホテル」(客室数594室)、「横浜ロイヤルパークホテル」(同603室)、「横浜ベイホテル東急」(同480室)、「ヒルトン横浜」(同201室)、「アパホテル&リゾート 横浜ベイタワー」(同2311室)など15カ所、ホールが「横浜みなとみらいホール」「横浜ランドマークタワー/ランドマークホール」「パシフィコ横浜」「パシフィコ横浜ノース」「横浜新都市ビル/新都市ホール」などが12カ所を擁する。

ミュージアムは「横浜美術館」「三菱みなとみらい技術館」「帆船日本丸/横浜みなと博物館」「カップヌードルミュージアム横浜」「横浜アンパンマンこどもミュージアム」「そごう美術館」「みらい美術館」など20カ所だ。

みなとみらい大通りに面しているオフィスビルの中には、下層階に子供や来街者が立ち寄れる体験施設を設けている所もみられる。村田製作所みなとみらいイノベーションセンターの1~2階には、子供向けの科学体験施設「Mulabo!(ムラーボ)」がある。ムラーボは“エンジニアの卵が産まれるきっかけの場”をコンセプトに、エレクトロニクスに関するクイズや体験展示が楽しめる。

資生堂グローバルイノベーションセンターの1~2階にあるのが、美の複合体験施設「S/PARK」(現在休館中、4月に改装オープン)。1階に食と美の研究から生まれたメニューを楽しめるS/PARK Cafeや、美しくなるプログラムを体験できるスポーツ施設S/PARK Studio、オリジナル化粧品をつくれるS/PARK Beauty Bar、2階には体験型ミュージアムS/PARK Museumがある。LG YOKOHAMA INNOVATION CENTERの1階にあるのが、旅立ちの島・音楽の島・時間の島といった5つの島を巡るデジタル体験ギャラリー「YUMESAKI GALLERY」。今春、中央地区53街区に完成予定の横浜シンフォステージには、ヤマハがブランド発信拠点となる体験型施設を開設する。同施設の1~3階にブランド体験エリア、楽器体験エリア、ライブ&カフェ、大人専用の音楽教室などが設けられる予定だ。

子供連れのファミリーから人気の、鉄道に関するギャラリーもある。S/PARKのある資生堂ビルの隣りにある「京急グループ本社ビル」の1階には、昭和初期から活躍した京急車両「デハ236号」が展示されているほか、京急ラインの巨大ジオラマ、本物の新1000形電車運転台による鉄道シミュレーションなどからなる「京急ミュージアム」がある。1階に日産車や最新の技術が体感できるギャラリーがあり、2階に建物を貫いて横浜駅とみなとみらいをつなぐ歩行者空間がある。「日産グローバル本社」近くの「横浜三井ビルディング」の2階には「原鉄道模型博物館」が構える。著名な鉄道模型制作者・収集家である原信太郎氏のコレクションで、本物の街のような世界最大級のジオラマが目玉だ。

JR桜木町駅近くのホテルと店舗とでなる「CIAL桜木町ANNEX」1階にも、鉄道ミュージアム「旧横ギャラリー」がある。桜木町駅が日本で最初の鉄道駅であることにちなみ、鉄道創業当時実際に走行していた「110形蒸気機関車」が展示され、中等客車の再現、ジオラマなどがある。

そのほか、「赤レンガパーク」「臨港パーク」「高島中央公園」「グランモール公園」などの公園が12カ所で、研究開発拠点を持つ企業などが22社となる。

みなとみらいは音楽の街としてのイメージも高めた。20年3月に「KT Zeep Yokohama(スタンディングで約2000人収容)」、同年7月に「ぴあアリーナMM」(着席時で約1万人、スタンディング時で約1万2000人)と「ビルボードライブ横浜」がオープンしたのに続き、23年9月に2万33席を擁する日本最大の音楽専用アリーナ「Kアリーナ横浜」が誕生したからである。

60・61街区のミュージックテラスにKアリーナ横浜をはじめ、ヒルトン横浜、オフィスビルのKタワー横浜の3棟を立ち上げたケン・コーポレーションの代表取締役会長の佐藤繁氏は、23年9月の開業式典のあいさつで「ここ横浜にファイブスターホテルのヒルトン横浜と音楽専用アリーナのKアリーナ横浜が誕生した。今まで横浜で国際会議や大型イベントがあってもあまり横浜に宿泊されない“横浜またぎ”があった。世界的に有名なホテルと日本最大の音楽専用アリーナができたことで、横浜またぎの流れを変えられる。わけてもKアリーナ横浜は、全てのミュージシャン、音楽ファンに夢と感動を与える。横浜が音楽の聖地となり、数多くのミュージシャンの誕生と、横浜が日本一の音楽都市、国際都市に発展することを期待する」と力説した。

映画館は、横浜ワールドポーターズの「イオンシネマみなとみらい」、コレットマーレの「横浜ブルク13」、「キノシネマ横浜みなとみらい」と3カ所あるが、今春、MARK IS みなとみらいに12スクリーン約1100席の大型シネコンが登場する。三菱地所プロパティマネジメントMARK IS みなとみらい館長の菊田徳昭氏は「映画鑑賞は性別や年代の幅が広く、天候や季節に左右されにくく、映画(シネコン)がすでにライフスタイルの中に浸透している。しかもアフターコロナの中で、日常では体験できない大画面や迫力ある音によるリアルを体験するニーズが高まってきており、来館者が映画鑑賞前後に同一施設内で食事や買い物を楽しむケースが多いなど、SCとして施設全体への波及効果が高いことなどから導入を決めた」としている。

(塚井明彦)

参考資料:「みなとみらい21 Information21(2023 Vol.94)」(企画・発行:横浜市都市整備局みなとみらい・東神奈川臨海部推進課/横浜市港湾局港湾管財課/一般社団法人横浜みなとみらい21)、「みなとみらい MEMORIAL BOOK 1983-2023」(発行:みなとみらい21地区着工40周年記念事業実行委員会)、「Minatomirai21 Guide Map」(企画・発行:一般社団法人 横浜みなとみらい21)