2024年 大手不動産デベロッパー 年頭所感
広域渋谷圏の開発継続、攻勢へ
東急不動産ホールディングス 社長 西川 弘典
新年を迎えましたが、ウクライナ、イスラエル問題など地政学上の不安定さや為替の動向、資源高の継続、人手不足や賃金上昇などによる工事金の高騰、長期金利の上昇を受けた住宅ローン固定金利の引き上げなど、事業環境を取り巻く状況は引き続き注視が必要です。
その一方、新型コロナウイルスが五類に移行するなど、一時期より世の中が落ち着きを取り戻す中、インバウンド(訪日外国人)の数がコロナ禍前の水準まで回復していることは明るい材料の1つです。今後もこうした世の中の動きが当社グループの事業環境にどのような影響を及ぼすのかについては慎重に見極めていきます。
こうした状況下、足元の不動産市場は仲介市場の好調など良好な状態を維持しています。当社グループの業績にも追い風が吹いており、この好機を生かして「攻めの企業経営」を進めます。最重要拠点の渋谷駅から半径2.5kmの「広域渋谷圏」では、昨年10月に『職・住・遊近接の新しいライフスタイル』を提案する新複合施設「Forestgate Daikanyama(フォレストゲート代官山)」をグランドオープンし、同11月には渋谷最大級のスケールとインパクトを誇る“次世代型ランドマーク”「Shibuya Sakura Stage(渋谷サクラステージ)」が竣工するなど、複数の大型再開発で旺盛な不動産需要の取り込みを図っています。
線路や幹線道路を跨ぐデッキを新設するなど、課題だった渋谷駅周辺のバリアフリー化も同時に進め、高齢者や小さな子供連れでも訪れやすい街づくりを進めています。渋谷サクラステージの竣工で渋谷駅周辺の大型再開発は一段落したようにみえますが、広域渋谷圏の開発はこれからも続きます。今後も東急グループ一丸で、広域渋谷圏の国際競争力向上を目指し拠点整備を進めていくのと同時に、積極的なスタートアップ支援などで渋谷発の産業育成にも注力していきます。
当社グループは長期ビジョンで「環境経営」「DX」を全社方針として掲げており、環境経営の分野では昨年8月に事業における生物多様性の回復傾向(ネイチャーポジティブ)を志向する、国内の不動産業で初めての「TFND レポート」を公開しました。広域渋谷圏を自然関連情報の検討・分析を行う優先地域に据え、東急プラザ表参道原宿など様々な緑化の工夫を凝らした物件と代々木公園などの緑とつなぐことで、生物多様性を志向する取り組みに力を入れていきます。太陽光発電や風力発電など国内有数の発電量を誇る再生可能エネルギー事業などと合わせ、環境問題という国内外の社会課題解決の一助を担う存在となりたいと考えています。
また、当社が持つリゾートホテルなどの観光資源とGX(グリーントランスフォーメーション)とを合わせ「地方共生」にも取り組んでいきます。地域が抱える課題に向き合い、当社グループが抱える事業ウィングの広さや事業拠点の範囲の広さを生かし、当社グループが拠点を置く地域の住民や行政、ビジネスパートナーなど様々なステークホルダーとの協働・共創を進めながら、新たなビジネスの芽を開いていきたいと思います。
新たな地平から“らしさ”を再考
森ビル 社長 辻 慎吾
2024年は「新たな地平から、森ビルを考える年」です。
昨年は「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」と「麻布台ヒルズ」をほぼ同時期に開業させるという、森ビルの長い歴史の中でも経験したことのないことをやり遂げました。今年は順次オープンしていく施設や店舗を含めて、1つの街として最大限に機能するよう、しっかりと育んでいきます。多様なジャンルのパートナーや街の人々と連携し、アイデアを出し合い、それぞれの街のコンセプトを体現できるような仕掛けや仕組みをつくり上げていきます。
森ビルは森稔会長の時代から、東京が国際都市間競争を勝ち抜くために、都心の既成市街地を再開発して多様な都市機能が徒歩圏内に集約したコンパクトシティをいくつもつくり、国際新都心を創出するという壮大な構想を描いていました。当時は誰も信じていませんでしたが、開業後20年を経過した「六本木ヒルズ」が過去最高の来街者数や売上げを記録した上、「虎ノ門ヒルズ」が完成し、「麻布台ヒルズ」が開業したことで、多くの人々が森ビルの構想を信じ、森ビルにはそれを成し遂げる実行力があることを認めてくれています。
2つの新たなヒルズを軌道に乗せ、さらに複数のヒルズをつなげれば、東京の強力な磁力となるはずです。加えて会社の経営基盤もさらに強化され、ブランド力や信頼もより一層高まり、我々はもう一段二段、上のステージに昇ることになります。新たな地平の先には様々なチャンスが広がっており、やり方次第で無限の可能性を秘めています。
ヒルズには1つとして同じものはありません。これまでの成功体験やマニュアルにとらわれることなく、常にそれぞれのヒルズに合った新しい仕掛けや仕組みを考え出していかなくてはなりません。「考えて考えて新しいやり方を模索する人」と「今までのやり方を当てはめる人」では大きな差が出てきます。社員にはぜひ前者であって欲しいです。今年もますます森ビルらしく、共に挑戦し、共に成長していきます。
一丸で2030年ビジョン進化加速
野村不動産ホールディングス 社長 グループCEO 新井 聡
世の中の変化が加速し、お客様のニーズがますます深化・多様化する中で、私達も考え方を変えていく必要があります。ベースである不動産開発で強みを発揮しながら、新たなステージへ進化して、今までとは違う商品やサービスもお客様に提供していかなければなりません。
その意思を示すのが、野村不動産グループ2030年ビジョン「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ」であり、お客様を豊かにする新たなLifeとTimeを創り、それを提供できるグループになることが私たちの目指す方向だと考えます。
大切なのは、私達一人一人が日々努力して進化していくことです。
今年は全員で「まだ見ぬ、Life & Time Developerへ」進化を加速させる年にしていきます。