2024年11月22日

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2024年 日本SC協会 年頭所感

ES、地域連携、体験価値を追求

一般社団法人日本ショッピングセンター協会 会長 清野 智


2023年は、世界的にみると新型コロナウイルスのパンデミックから解放された一方で、世界各地での紛争により世界経済が大きく揺れた1年でした。日本においても資源高、そして円安などの影響で物価が大幅に上昇しました。そのような状況下ではありましたが、5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことに伴い、人々の動きが活発になるとともに地域のイベントに多くの人々が集まるようになり、普段の日常生活が戻ってきました。同時に外国から日本への入国規制も緩和され、訪日外国人もコロナ禍前の状況に戻りつつあります。

このような中、SCへの来館者数や売上げも以前の状況に徐々に戻りつつありますが、コロナ禍をきっかけに様々な課題が顕在化しています。中でも、いわゆる「人手不足」という状態が各方面で顕在化し、SCにおいても大きな問題になっています。この問題も含めて今こそデベロッパーとテナントが真摯に向き合い、相手の立場を尊重しつつ議論を重ね、SCの将来の発展を目指すことが求められています。

このような認識に立ち、私は次に挙げる3点が24年に取り組むべき課題あると考えております。

1つ目は「SCで働く全ての人々のウェルビーイングの追求」です。SCはテナントやディベロッパー、協力会社など多くの方々に支えられており、多方面で人手不足の影響を受けることになります。日本の生産年齢人口は減少の一途を辿っており、将来的にはより厳しい状況になるという認識の下、業務の効率化や削減、ITを活用した省人化や省力化の徹底、外国人労働者が働きやすい環境の整備などが必要です。「SCで働きたい・SCで働き続けたい・SCでまた働きたい」と思っていただくために、SCで働く全ての人々のウェルビーイングを実現していかなければなりません。

2つ目は「SCが地域の魅力を高める存在へと進化し続けること」です。SCは買い物、飲食、サービスなどを通じてお客様の日常に寄り添うとともに、地域の雇用創出やコミュニティの醸成にも取り組んできました。加えて災害時における地域のライフラインとして重要な役割を担っています。また、人口減少社会における行政サービスをSCが補完すること、公園などとの複合開発を通じた街づくりに貢献すること、さらには地域が誇る商品、サービス、文化の発掘・発信、地産地消の取り組みなど、SCが地域の魅力を高める存在へとさらに進化していくことが必要です。

3つ目は「リアルの場の強みを生かしたお客様への特別な体験価値の提供」です。コロナ禍を通じてECが日常の一部になる一方で、人々はリアルな出会いを欲していることを再認識しました。リアルの場の強みを生かし、SCは買い物そのものを楽しむだけでなく、家族や友人と思い思いの時間を過ごせる空間づくりであったり、地元企業への支援がお客様の地域への愛着を生みだしたり、インバウンド対応が異文化を知るきっかけになるなど、多岐に亘るSCの取り組みを通じて、特別な体験価値を提供することが求められています。