東京ソワールの「フォルムフォルマ」、地域戦略を加速化

2024/01/15 1:24 pm

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東京ソワールが展開するフォーマルコンセプトショップ「form forma(フォルムフォルマ)」が、出店を加速させている。昨年12月22日、「青葉台東急スクエア South-1 本館 2階」に「青葉台東急スクエア店」(以下、青葉台店)をオープンした。5月の「ららぽーと海老名店」、9月の「横浜ポルタ店」に続いて横浜エリアでの出店となり、全体では28店舗目。今年も5店舗の出店を計画する。アフターコロナによるオケージョン復活を追い風に、直営店事業を推進し、顧客拡大を狙う。

華やかな装いの数々が新店オープンの雰囲気を盛り上げる

神奈川エリアでの集中的な出店の背景について、事業本部第3事業部副部長ショップ運営グループ長兼店舗開発担当の牟田朱里氏は「元々、神奈川エリアが手薄だったため充実させたかった。どこか良い場所があればと、以前から色々な商業施設と話を進めていた」と話す。結果的に昨年は希望と合致する出店場所が見つかり、エリア内で3店舗を出店。青葉台店は昨年春に区画が決定し、夏にオープンに向けた準備に着手、12月の開店に至った。

神奈川を商圏として重要視するのは「やはりマーケットとして大きい。東京と神奈川をデイリーに行き来している人も多いが、買い物をする上で神奈川県の中で良い所、良い物があれば都心までは行かない人もいる」(牟田氏)からだ。自身も県内在住の牟田氏は、実体験も含めてこう話す。

そうした中で、青葉台東急スクエアへの出店理由について牟田氏は「世代間のバランスの良さ」に言及。青葉台東急スクエアは、東急田園都市線の青葉台駅直結の商業施設で、駅の乗降客数は1日当たり8万4000人を誇る。青葉台エリアは世帯収入が全国平均を大きく上回ることに加え、高齢世帯からヤングファミリーまでとバランスの良い人口構成が特徴。フォルムフォルマは、成人式に参加する20代初めから孫の結婚式に参列する年配層までと全世代の女性をターゲットに据えている。「狭い商圏内で様々な世代を取り込めるのは魅力的。施設の利用者の中にはベビーカーを引くママも多く、今春に実施するタレントの藤本美貴さんとフォルムフォルマが提案するセレモニー服の打出しも、 ぴったりハマるのではと期待している」(牟田氏)。

青葉台店は、ブラックフォーマルからカラーフォーマル、セレモニーやお受験用のスーツ、演奏会などで着用できるカラードレス、バッグやアクセサリーなどの雑貨までを取り揃える。店舗サイズはフォルムフォルマ全体でみれば決して大きくないものの、ラインナップの充実度は高い。急に必要となりがちなブラックフォーマルは近場で購入する傾向があり、近隣住民をターゲットとする同店では「ブラックフォーマルの売上げ構成比が高くなる」と、牟田氏はみている。今は客の目に付きやすいよう店内動線に合わせてレイアウトしているが、シーズンに合わせて柔軟に入れ替えていく方針だ。

葬式以外でもブラックフォーマルが着回せるよう、明るい色の羽織り物や小物使いも提案

店内レイアウトはブラックとカラーで明確にゾーニングしない。というのも、「シームレスな提案」を行うためだ。例えばブラックフォーマルのウエアにコサージュやアクセサリーを付けて卒業式に着用できたり、白いジャケットを羽織って入学式に着用できたりと、フォルムフォルマは「クロスコーディネート」の提案に注力している。時代とともに多様化する葬式のスタイルに合わせ、ウエアにも様々な機会で着用可能な汎用性のあるデザインを取り入れている。

ウエアと同様に小物類の品揃えも充実。客自身では気付きづらい、専門店ならではのアイテムを用意する。ルームシューズは、元々は卒入学やお受験の際の提案商品だが、ヒールのある靴を履き慣れていない人に向け、負担軽減を目的に移動時や控室などでの履き替え用としても勧めている。「フォーマルは服を着て完成ということではなく小物もトータルでコーディネートして、ようやくスタイリングが完成する。さらに家から会場に向かい、帰宅するまでの間に必要なものを提案する」と牟田氏。フォルムフォルマの来店客の中には、必要なアイテムやフォーマルのルールを自身で調べたものの「ネット上の情報が多すぎて結局どれが正解かわからない」と話す人が多いという。専門知識を有するスタッフのアドバイスも、リアル店舗の付加価値には欠かせない。

店舗正面を提案スペースとして有効活用し、入店を誘う

店舗正面の最も目立つスペースには、華やかなコサージュやアクセサリー、刺繍や光沢のあるバッグなどのパーティー用雑貨を展開する。通常であれば、通路に面した一等地は「商品を売る場所」にしたいところ。しかし牟田氏は「商品を売る場所というよりも、お客様に提案する場所として活用していきたい」と方向性を示す。シーズン性を打ち出し、店のテーマや季節ごとのイメージを客に伝える場所として有効活用していく狙い。展示スペースの背になる大きな柱は、フォルムフォルマのストアカラーである落ち着いた深いグリーンとライトアップした店名で意匠性を持たせ、世界観を演出する。春の時期には卒入学のニーズが増えるため、小ぶりなコサージュの特集やトートバッグの提案などを計画しているという。

さらに、青葉台店ならではの施策も視野に入れる。施設上階にはホールがあり、音楽イベントなども開催している。フォルムフォルマでは、元々ピアノやバイオリンの発表会で着用するドレスのニーズがあることから、イベントのチラシを置いたり、期間中にVPを展開したりといった連携も模索する。

こうした店づくりについて牟田氏は「大きなイベントだけをターゲットにしていると、この先シュリンクしてしまう」と語る。時代とともに冠婚葬祭の有り様も変化し、結婚式も身内だけで開く縮小傾向にある。一方で、新型コロナウイルス禍以前は、観劇や音楽会、クルージング、ホテルで開催する企業の忘年会といった結婚式や葬式以外の小さな行事が増加。これらのニーズへの対応で、売上げ伸長に乗り出していく予定だった。コロナ禍の中断期間があったものの、現在はプライベートなオケージョンがほぼ復活。「一人一人の色々なオケージョンに対する非日常の提案」を推し進めていく構えだ。

フォルムフォルマはこれまで、大きなターミナル駅隣接の商業施設や、郊外の大型ショッピングモールに多く出店してきた。青葉台店の今後について牟田氏は「小商圏での実績をつくっていくことが、これから展開店舗を増やす意味でも成功例になる。出店可能な場所も一気に広がる。地域密着型で、青葉台東急スクエア店を大切に育てていきたい」と力を込めた。

(中林桂子)

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