2024年11月21日

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23年業界回顧 存在価値を高める好機到来

※以下、弊誌「ストアーズレポート」2024年1月号の抜粋です。

2023年(令和5年)の百貨店業界は、都市部の基幹百貨店がけん引し、「百貨店事業の再生」に拍車がかかった。大手百貨店の基幹店の多くがコロナ禍前の売上高水準を超えるペースで推移しており、中にはバブル期を超える過去最高を更新している店舗もある。

営業利益はコロナ禍で取り組んだコスト構造改革が奏功し、上期業績で大幅の増益を達成。上期の情勢を踏まえ、通期業績予想を相次いで上方修正した。総じて百貨店の強みである外商顧客やハウスカードなどの購買額上位の組織顧客の消費が好調で、インバウンド(訪日外国人)の売上高も急増してきた。中間層顧客の消費も回復を辿っている。

回復格差が顕在化している側面もあるが、前年以上に大小の改装も活発化した感が強く、各店各様にその地域になくてはならない百貨店として存在価値を高めていく店舗改革が進展している。「再生」から「再成長」フェーズに向けた足場が固まりつつある。


基幹店けん引、回復加速 コロナ前を超えた高額品

全国百貨店の10月の売上高(日本百貨店協会調査)は前年比6.1%増となり、入店客数(2.6%増)とともに20カ月連続プラス。23年1~10月の累計売上高前年比(既存店ベース)は10.0%増となり、コロナ禍前の19年比では4.7%減まで回復してきた。22年の同時期の19年比が13.2%減だっただけに、回復基調が加速した格好。東京地区百貨店に限ると、10カ月累計の前年比は11.6%増で、19年比は0.8%減とほぼコロナ禍前の水準まで戻している。

10月までの主要5品目の売上高では、前年に続き身のまわり品(前年比17.6%増)と雑貨(同12.0%増)の伸長率が高い。次いで衣料品(10.7%増)も2桁伸長しており、中でも主力の婦人服(13.7%増)が健闘した。消費マインドの回復と外出機会の増加を背景に、ファッション関連消費が戻ってきた。

コロナ禍前を上回っているのが好調なラグジュアリーブランドの実績が含まれる身のまわり品で、19年比15.9%増。雑貨の19年比は5.8%減だが、この中の美術・宝飾・貴金属は26.9%増まで伸びている。コロナ禍でも外商顧客を中心に高額品消費の好調さが持続している証だ。また堅調な食料品は19年比で3.6%減まで回復。けん引しているのが菓子で、19年実績を4.3%上回っている。いち早く回復した品目は、言うまでもなく百貨店が強みとしてきたカテゴリーだ。

大小の改装が活発化、「百貨店ブランド」健在

23年は前年に続きリアル店舗の磨き上げに向けた大小の改装が活発化した。全館規模の店舗構造改革レベルの改装も相次いだ。コロナ禍の劇的な消費環境の変化で、20年度、21年度は多くの百貨店が赤字を強いられリアル店舗の弱みが露呈されたものの、改めて対象顧客の関心が高い体験価値を提供できる魅力的なリアル店舗の重要性を再認識できた。各々培ってきた「百貨店ブランド」は健在であり、その継続的魅力化策は不可欠だ。

全館改装した百貨店では、10月にグランドオープンした神戸阪急と高槻阪急スクエアが注目されよう。阪急阪神百貨店が約100億円を投じ、22年春から1年半をかけて進めてきた新しい百貨店の創造だ。同時進行で都市型と郊外型で異なるタイプの百貨店づくりに挑戦してきた。共通するのは地域生活者の「暮らし」に焦点を当て、「ハレ」並びに「日常」の暮らしに寄り添い深掘りして体験価値の提供に注力している点だ。詳細は本誌前号(12月号)でレポートしたが、ベンチマークすべき要素が多い。

百貨店と専門店の融合による店舗改革で注目されるのが、専門店ゾーンを増床した高島屋京都店であろう。10月のグランドオープンを機に「京都高島屋S.C.」に生まれ変わった。専門店ゾーン「T8(ティーエイト)」は、「であう場所、であいに行く場所」をコンセプトに51店舗で構成するが、4~7階は「アート&カルチャー」をテーマに、現代アートや日本が世界に誇るサブカルチャー、エンターテインメントのトップランナーを集積している。

23年で多くのマスコミに取り上げられ印象に残ったのが、「そごう・西武」の売却問題であろう。セブン&アイ・ホールディングスは、9月1日付で米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループにそごう・西武を8500万円で売却した。この問題を巡りそごう・西武の労働組合は、百貨店で60年ぶりとなるストライキを断行した。

様々な視点で報道されたが、あらためて百貨店とは何かを考えさせられ、その存在感の現実も知ることができた。一方で百貨店が地域になくてはならない存在であることも示され、多くの消費者にその価値を再認識されるきっかけにもなった。

地方都市の百貨店では閉店、あるいは売場面積縮小などが相次いでおり、百貨店業界を取り巻く環境は厳しさが続いている。が、コロナ禍前の業績水準に着実に近付き、過去最高の売上高を更新した店舗があり、過去最高の営業利益を見込む百貨店グループがある。23年は「百貨店再生」策が結実しつつあり、「復活」から「持続的成長」へのターニングポイントと言えるかもしれない。

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