2024年 メーカー首脳 年頭所感
<掲載企業>
資生堂 社長COO 藤原 憲太郎
世界中で猛威を振るってきた新型コロナウイルス感染症もついに転換点を迎え、昨年は人々が日常と笑顔を取り戻していく光景を目の当たりにすることができました。その中で当社は、美の力を通じてお客様を、社会を、そしてビューティー業界を元気にしていきたいという想いを込め、「みんな、いい顔してる。」という企業メッセージを発信しました。豊かな表情が行き交う毎日の美しさ、喜びを伝えるとともに、専門店をはじめとする日本全国の店頭では得意先と社員とが一丸となってカウンセリング紹介活動を積極的に行い、お客様それぞれの「いい顔」を応援してきました。
昨年は「守り」から「攻め」に転じる躍動の年として、中期経営戦略「SHIFT 2025 and Beyond」を策定し動き出しました。本年も引き続き、「世界で勝てる日本発のグローバルビューティーカンパニー」を目指し、構造改革と重点領域への投資による高収益構造への転換を図ります。
その中でも日本事業の収益基盤の再構築は、中期経営戦略の達成に向けて最大のカギとなります。日本オリジンの企業として、日本事業には新たな価値を創造し世界に発信していく責任があります。市場が回復しつつある今こそ、徹底した生活者視点でブランドを強化し、お客様に支持され続ける強い組織をつくり上げていきます。加えて、既存の商習慣・ルールにとらわれず今一度ビジネスモデルを見直し、持続的な成長を遂げるための抜本的な変革を断行します。
専門店事業においては攻めのマーケティングの下、皆様と協働で取り組んできた昨年の成果を一時的なものとせず、2024年はさらなる飛躍を遂げ、次の100年の成長実現に向けた始動の年にしたく考えております。当社が有する肌に対する知見やお客様のデータなどのテクノロジーと、専門店の絶対的な強みである“人”を通じたコミュニケーションを掛け合わせ、肌・身体・心に寄り添ったパーソナルな提案力を共に磨き上げてまいりたい所存です。
同時に、安定した中長期的な成長に向けて新領域での事業開発にも取り組み、イノベーション創出に注力します。具体的には、ウェルネス領域展開への第一歩としてインナービューティー事業の新ブランド「SHISEIDO BEAUTY WELLNESS(シセイドウ ビューティー ウエルネス)」を発売いたします。2030年のビジョン「Personal Beauty Wellness Company」の実現を目指し、スキンビューティー領域をさらに拡充し、ビューティーとウェルネスが融合した新たな価値を創造します。
当社は、企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD」の下、「美の力を通じて“人々が幸福を実感できる”サステナブルな社会の実現」を目指し、お客様をはじめとしたステークホルダーの皆様のニーズの変化に素早く対応し、今後もより良い商品やサービスを提供していきます。
コーセー 社長 小林 一俊
3年間に亘ったコロナ禍もようやく鎮静化し、エネルギーや原材料価格の高騰など様々なリスクはありますが、化粧品に対する需要は復調傾向が顕著になっています。コーセーにおきましても、昨年度は比較的好調な業績を挙げることができました。
昨年も触れさせていただきましたが、我々はお客様づくりのキーワードとしてグローバル、ジェンダー、ジェネレーションの頭文字を取った「3G」を掲げています。
1つ目はグローバル。世界の多くの地域や様々な人種の人々を対象としたモノづくりやサービスの提供を進めています。海外戦略はもちろん、日本国内においてもインバウンド需要の復活と進化が期待できる今後は、グローバルな視点がますます重要になるでしょう。
2つ目はジェンダー。これまでの化粧品のお客様は女性という先入観を捨て、事業展開に反映しております。特にコミュニケーションにおいては大谷翔平選手や羽生結弦選手、高橋藍選手の起用などによりジェンダーの壁を越えたお客様づくりを強化していますが、大きな手応えを感じております。
3つ目はジェネレーション。当社は長年に亘り幼少期からのスキンケアの有用性に関する研究を続けており、それに加えて昨年より全国各地で中高校生への紫外線対策講座を開催し、スポーツ時のUVケアの重要性などの啓発活動に取り組んでいます。
キッザニア東京に出展しているブースもおかげさまで男女を問わない人気パビリオンとして連日大盛況と聞いています。また、化粧品によるQOL向上の研究や年齢にとらわれることなくあらゆる人々の人生に寄り添うことを通じて、誰もが自分らしく生き生きと輝ける社会の実現に力を尽くしたいと考えています。
創業者・小林孝三郎は「化粧品には世の中を明るくする大切な使命がある」という信念を持っていました。SDGs時代を迎え「誰ひとり取り残さない」という考えの下、企業にも本業を通じた社会課題の解決が求められる中において、まだまだ美容や化粧品ができることはたくさんあるはずです。
肌だけでなく心もケアし、お客様の生涯に寄り添うことができるという化粧品の強みを生かし、不透明な世の中だからこそ、世界中の人々の心を豊かにすることを目指し、「KOSÉ Beauty Partnership」をより強固なものにしながら、ステークホルダーの皆様と一緒に取り組んでいきたいと考えています。
アルビオン 社長 小林 章一
長く続いたコロナ禍にも一筋の光が見えた昨年は、当社の強みであるリアルな接客がようやく叶い、“活動ありき”の想いを1つに、全社一丸となって取り組んでまいりました。 この4年の月日によって、これまでの常識も化粧品業界を取り巻く環境も変わりましたが、アルビオンはアルビオンらしく、本年もこの店頭における接客にこだわり、美容活動の推進に注力してまいります。
お客様に響く商品を提供することはもちろん、魅力ある施策を投じ、一店一店におけるお客様づくりの最大化に貢献できるよう努めてまいります。その片側で、新時代の流れをくんだアルビオンの新しい在り方を模索し、変化することを恐れない、その変化をらしさの進化へとつないでいけるような取り組みにも積極的に挑んでまいりたいと思います。
今年は、当社を代表するロングセラー化粧水“スキコン”が50周年を迎えます。発売以来の長きに亘る愛用、また世代を超えて引き継がれる愛用で、お客様の肌に寄り添いながら同時に取引先にとっての生涯顧客づくりの手伝いをさせていただいている商品でもあります。今年は特別なプロモーションとして提案させていただき、メモリアルなこの1年を大いに盛り上げていきたいと思っております。
そして、これまで以上に独自性や個性を極めたものづくりを追求し、“アルビオンだから作れる”“アルビオンにしか作れない”商品開発をより強化いたします。どこにもない切り口で、圧倒的に次元が違う唯一無二のものづくりに臨み、新たな美容成分の開発と併せてより深化させてまいります。
また、アルビオンらしいSDGsを目指す推進プロジェクトも新たな局面を迎え、7つのテーマ全てにおいて具体的な目標が揃いました。資源の循環、CO2削減など、早いものではすでに成果も出てきております。一つ一つの取り組みをメンバー一人一人が自分事として捉え、人として、企業として、正しくあることを常に意識し忘れずに、社会貢献できるよう引き続き努力してまいります。
最後になりますが、この1年も百貨店の皆様と一緒に夢のある未来を見据え、共に手と手を取り合いながら歩んでまいりたいと思っております。そして、高級化粧品会社として生き様が問われたその時に“やっぱりアルビオンは違うよね”と、そう思っていただけるような力強い歩みが刻めるよう、変化も、進化も遂げる1年にしたいと思っております。
オンワードHD 社長 保元 道宣
昨年は、特にスポーツ分野で各日本代表チームが国中を熱狂させるパフォーマンスで躍進し、人々に勇気と感動を与えてくれました。世界を見渡せば、引き続き地域紛争による情勢不安があるものの、国内においては新型コロナウイルス感染症の第5類への移行や、入国制限の緩和などにより経済活動の正常化が進み、消費全般の回復傾向が顕著となりました。
本年オンワードグループは、中長期経営ビジョン「ONWARD VISION 2030」の達成に向けた成長戦略をアップデートするとともに、新中期3カ年経営計画の初年度として「ヒトと地球(ホシ)に潤いと彩りを」というミッションステートメントの下、“社員の多様な個性を生かしたお客様中心の経営”のさらなる進化を実現してまいります。
「甲辰(きのえたつ)」の干支である本年は、「新たな力強さが芽吹き、豊かな成果を築く年」とされています。それにふさわしい年とすべく、グループの事業を力強く前進させてまいります。
西川 社長 西川 八一行
昨年は難しい“読み”をしなければいけない1年でした。ロシア・ウクライナ紛争の影響で羽毛の産地である東欧のインフレ加速、原材料高など、輸出よりも輸入が多い寝具業界は厳しい状況でした。加えて、国内の物流費や人件費が上昇。新型コロナウイルスの感染症法上の分類が5類に移行し景気浮揚を予測しましたが、物価高への生活防衛色が強まりました。寝具の価格も二極化し、低価格商品の売れ行きが目立った印象です。
一方で、高付加価値商品は業界全体でも比較的堅調を維持できました。業界としては、高付加価値商品の品質維持、クオリティの担保をしなければならない。寝具は信頼の上に成り立っている商品です。寝具業界に新規参入する企業も増えてきており、当社は、よりクオリティや機能性の高い、エビデンスのあるものを開発してまいります。
売上げについては各地域の専門店が特に好調でした。チェーンのオペレーション、広告宣伝活動が奏功し、「良いものをしっかり販売する」という(販売員の)強い意欲もありました。単純に売上げ数字を取るための割引販売はせず、規模を縮小してでもブランドを守り、お客様と一緒に成長していく路線を取っています。
新型コロナウイルス禍中から注力してきたオフィスの仮眠ルーム「ちょっと寝ルーム」の提案・設計事業も順調です。企業への眠りに関するコンサルティングで睡眠チェックビジネスは確実に広がり、新しい顧客づくりへの手応えを得ています。美容睡眠ブランド「ニューミン」でも、美容サイトや百貨店の美容家電コーナーでの販売といった新しいチャネルとタッチポイントがつくれました。
「ねむりの相談所」も上期黒字化を実現しました。お客様と個人的な話もしながら適切な睡眠を手伝う、従来では「付属の無料サービス」が、むしろ主軸になっていくのではないか――。相談に来られるお客様を増やすのが重要です。「布団の西川」からはそろそろ突き抜けて、我々は「よく眠り、よく生きる。」と「ビヨンドスリープ」をどう提案するかに移ってきています。
今年は新たな世代へのアプローチも視野に入れ、新しい睡眠計測アプリを発表する予定です。今後、センサー付きマットレスを開発してアプリと連動させ、他社とも連携して商品を勧めたり、データを相互交換して生命保険や医療機関と連携したりと、ハブ機能も持たせたい。お客様の生活全体をカバーし、ライフタイムバリューを上げてまいります。
昨年は自分達で戦略を立ててやってきたことは全てうまくいきましたが、外部環境にはあらがいきれませんでした。今年も外部要因は多いと思われますが、アプリなどの革新的なスリープテックを出すことで当社のイメージを刷新していきたいと思います。以前から高評価をいただいている介護サービス事業も推進し、より地域になくてはならない店にステップアップしてまいります。そしてBtoBビジネスを確実なものにし、海外進出店舗の強化も行ってまいります。
キリンビール 社長 堀口 英樹
昨年はコロナ5類移行を背景に3年余に及んだコロナ禍が沈静化に向かい、コロナとの共存を前提とする新たな「ポスト・コロナ」ステージへの移行が加速しました。一方、ウクライナ侵攻や中東地域の緊迫化など海外の地政学的リスクが依然存在するほか、内外金利差を背景とした円安の動きもあり、国内では原材料費や物流費、エネルギーなどの諸コストが引き続き上昇し、あらゆる産業における商品やサービスの値上げが続いていることから、家計防衛による消費マインドの低下も大いに懸念されるところです。
酒類市場を見ますと、人流回復やインバウンド需要の再拡大が寄与したことで、長らく打撃を受けた飲食関連市場の回復が加速しました。ただ、コロナ禍以前の2019年との比較ではいまだ70~80%程度の水準と思われますので、引き続き飲食関連市場の方々と一緒になって、市場のさらなる回復を目指していきたいと考えています。
このような市場環境の中、当社は「ブランドと人財を磨き上げる」という基本方針に基づき、「既存事業領域における強固なブランド体系の構築」と「将来を見据えた新たな成長エンジンの育成」という2つの戦略を軸とした活動を一貫して展開してきました。
強固なブランド体系の構築では、26年のビール類税率一本化が当面の焦点になります。当社は税率一本化後も「プレミアム」「スタンダード」「エコノミー」の価格軸での分類が残り、そして別軸として糖質やプリン体オフ、ゼロなどの機能が横断する姿を将来像として描き、その中においても引き続きお客様から愛され、支持され続けるような強固なブランド体系の構築に注力してきました。
新たな成長エンジンの育成については、ビールの多種多様なおいしさや奥深い魅力を提案するクラフトビール市場の拡大を目指しています。まずは市場の裾野を拡大することが重要と考え、店頭では「スプリングバレー」ブランドの缶商品でお客様がクラフトビールを手に取りやすい状況をつくり、料飲店では多くのクラフトブルワリーの方々と一緒に「タップ・マルシェ」の展開を通して、お客様のクラフトビール体験機会を提案しています。
本年も経済や社会は複雑に動き、事業環境の変化は一層激しさを増すと思われますが、一方でポスト・コロナ社会への移行も着実に進んでいくものと思われます。その中、企業として様々な環境変化に即応し、柔軟に対応することの重要性はますます高まるものと考えています。
当社は強固なブランド体系の構築と成長エンジンの育成という基本的な戦略軸を変えずに「人と人がつながる喜びを届けることで、お客様とあたたかな絆を育み続ける会社」になることを目指し、お客様の価値観の多様化を捉え、社員全員でお客様価値の創造にチャレンジしたいと考えています。
弛まずに、お客様が求める新たな価値を創造し、ビール類をはじめとした酒類市場全体をさらに魅力あるものにすることで、酒類総需要の拡大そして将来に向けた酒類業界の発展にまい進していく所存です。
三陽商会 社長 大江 伸治
昨年、当社は設立80周年の節目の年を迎えました。本年はあらためて社員一人一人が当社80年の歴史を振り返りつつ、気持ちを新たにして、会社の発展成長に向け、さらなる一歩を踏み出すべき年に当たっております。
また2024年2月期は、22年4月に公表いたしました「中期経営計画」の2年度に当たっており、同計画達成に向けたステップとなる重要な年でもあります。初年度であった23年2月期の実績を踏まえてさらに売上げや利益を拡大し、最終年度目標達成のための足掛かりをつくるべく、全社一丸となって日々業務に当たっているところです。
その今期もあと2カ月を残すのみとなっております。今期業績につきましては円安資源価格高騰による調達コスト上昇や、夏の記録的な猛暑などの影響は受けたものの、コロナ禍がようやく沈静化し市場が正常化したこと、また3年間継続して推進してきた事業構造改革の成果として、粗利率改善や在庫の適正化などがさらに進展したこともあって、23年10月に公表した修正計画に沿って、ほぼ順調に進捗しております。残り2カ月引き続き万全の態勢で臨み、所期の目標必達を目指します。
そして3月からはいよいよ中期経営計画の最終年度であり、仕上げとなる25年2月期を迎えます。同計画の中でVisionとして掲げております「高い価値創造力と強靭な収益力を併せ持ったエクセレントカンパニー」を目指し、完遂に取り組みたいと思います。
川辺 社長 岡野 将之
昨年2023年は、当社創業100周年の記念すべき年でありました。コロナの余韻もあり不安を感じながらのスタートでしたが、2月1日に無事創業100周年を迎えられ、3月の年度末の決算も4年ぶりの黒字を発表することができました。その後、コロナも5類に移行し、国内需要、インバウンド需要とマーケットも大きく回復基調に変わり、前進できる手応えを感じられた年となりました。
また、23年6月に「中期経営計画 2023 NEXT」を発表いたしました。「すべての中心は心。心を動かす企業になる。」のスローガンの下、川辺グループでしかできないグループ全体で連携したモノづくりと販売を行い、新しいモノづくり、新規販路へのアプローチ、生産性の向上、収益確保、そして株主様への利益還元を行い、全てのステークホルダーの価値創造が私達の価値であるという想いで実行に移しています。
本年24年は、その「中期経営計画 2023 NEXT」の2年目の年になります。1年目はコロナで傷んだ部分の再生フェーズでありましたが、2年目は計画の展開フェーズと位置付けています。
特にハンカチ雑貨、洋品アイテムはオリジナル商品の開発に力を入れ、新規販路の開拓を目指しています。合わせて、キャラクターブランドとの取り組みを強化し、新しい売上げ構築を目指しています。そして、一番力を注いでいきたいのがフレグランス事業です。
日本ではこれまで香りの文化が定着しづらい状況でしたが、若い層を中心にマーケットの裾野が広がりつつあります。今後、さらに市場拡大する可能性を秘めており、当社にとってもチャンスと捉えています。商品ラインナップをさらに充実させ、各マーケットごとに対応できるよう準備を整えていきたいと考えています。
そして、サステナブル活動にも力を注ぎます。当社が扱うハンカチおよびミニタオルにもサステナブル素材を使用することはもちろんのこと、一昨年からスタートしたカシミヤの再生事業を中心に、グループ全体で再生事業に取り組んでまいります。
世界情勢、為替環境などまだまだ懸念点はありますが、楽しいところにはいつも人が集まっています。心の底から楽しんで仕事をし、人を楽しくできる商品、環境づくりを目指せる24年にしていきたいと思います。
花王 社長 長谷部 佳宏
新たな年が幕を開けました。世界はようやくパンデミックの混乱期を抜けつつありますが、地政学的な緊張の高まりに伴う人々の分断が続いています。先行きに不透明感が残る混迷の時代であっても、2024年は当社にとって特別な年になります。私達が目指すパーパスである「豊かな共生世界の実現」に向けて、最大の挑戦とチャンスが待ち受けているからです。
23年は抜本的な構造改革を進め、事業の大きな転換期を迎えました。パンデミックと原材料高騰などの逆風の中、「未来のいのちを守る」というビジョンはそのままに、8月に中期経営計画を見直しました。財務指標の「ROIC」の全社導入を進め、構造改革は計画通り進んでいます。
事業においては、確実な手応えを感じています。ファブリック&ホームケア事業は戦略的値上げと高付加価値化が浸透し、トップシェアを維持しながら利益改善が進んでいます。スキンケア事業はUV製品の高付加価値化の提案が功を奏し、利益改善に大きく寄与しました。化粧品事業も注力ブランドの「G11」が大きく伸長しています。主力のトイレタリー事業がけん引する形で、事業活動が成長軌道に着実に移行しつつあります。
当社は27年に向けて「グローバル・シャープトップ戦略」を新たに掲げました。お客様のニーズに、エッジの効いたソリューションで世界No.1の貢献をする企業を目指します。
私達は単に「量を増やすだけの経済」から「質を重んじる経済」に移行していかなければなりません。将来の当社のビジネスの形は「広く・浅く」ではなく、「尖って、誰かのために欠かせない一番の存在になる」ことです。当社が掲げてきた「未来のいのちを守る」というビジョンは変わっていません。当社は地球環境や生活者の生命にも目を向け、社会に欠かすことのできない存在になりたいと考えています。
当社が日本でも海外でも「シャープトップ」を目指すには、これまでメーカーとして中核に据えてきた「よきモノづくり」の考え方もアップデートしなければなりません。今の時代に合った創造と革新、感動を生む「よきモノづくり」とは、単に商品をつくるだけでなく、生活者の皆様に信頼され、感謝される商品をつくることです。そのために付加価値を高め、繰り返し選ばれるための商品づくりにより一層、魂を込めていきます。
当社が目指す姿は、欠かすことのできない商品がお客様に感謝され、商売としても優れ、社会からも尊敬される事業が集う企業です。そして、商品は我々だけで完成するものではありません。我々と取引先、生活者の「三方よし」となるだけでなく、社会も良くしていく「四方よし」の世界を目指さなければならない時代です。今こそグループ社員の力を結集し、皆様の期待を超える新しい未来を想像してまいります。
カネボウ化粧品 社長 前澤 洋介
2023年を振り返りますと、ようやくアフターコロナを実感できる年となり、生活者の外出機会が増加し、化粧品市場にも活気が戻ってきました。国内市場ではメイク市場やインバウンド需要の回復がみられます。世界に目を向けると、市場は拡大が見込まれるものの、地政学的リスクの影響も一定程度受けることが想定されます。花王化粧品事業ではグローバル戦略を加速させるべく取り組みを進めておりますが、1つのエリアに頼らず、エリアバランスを取りながら事業を推進したいと考えております。
さて、花王は昨年「グローバル・シャープトップ戦略」を新たに掲げ、全社を挙げて推進してまいりました。化粧品事業がこれまで進めてきた“強いブランドづくり”も、まさしくこの戦略に則ったものであると思っております。
初めは小さなセグメントからでも、各ブランドがパーパスに基づいた活動をしっかりと推進し、そのセグメントでNo.1ポジションを獲得していく。そして、お客様の選択肢の中に常に入るような、お客さまにとってなくてはならないブランドとなっていく。それを徐々に拡大させ、やがては日本を含むグローバル市場においてNo.1を獲得するブランドになる。こういったブランドを多数有し、グローバル市場でベスト10に入る事業体になることが、私が目指すKao Beauty Brandsの姿です。
昨年はその“強いブランドづくり”において、しっかりと結果を出すことができた1年でした。市場の回復とともに、プレステージブランドが大きく伸長。中でも当社の強みのカテゴリーであるベースメイク市場で、「KANEBO」「SUQQU」「RMK」「LUNASOL」から大変ユニークなファンデーションを発売し、高い評価をいただきました。ベストコスメも数多く獲得しております。
「TWANY」からは、花王の独自成分を配合した最先端の美容液「スキン オーラジェニック」を発売。パーパスブランディングな取り組みとしては、新フェムケアライン「TWANY&me」を発売し、“美しさのリズム”に基づいた美容提案をフェムケア領域まで広げました。「LISSAGE」も、ヘアケアライン「LISSAGE VOGNE(リサージ ヴォーニュ)」をリニューアル発売するなど、コラーゲン研究をベースに次々と新しい商品提案をしてまいりました。
これらが奏功し、ブランド全体の実績を引き上げております。販売店の皆様の努力あってのことと、深く感謝申し上げます。
24年は引き続き「グローバル・シャープトップ戦略」、すなわち“強いブランドづくり”を力強く推進してまいります。グローバルで育成していくブランド群「G11」のうち、「SENSAI」「MOLTON BROWN」「Curél」をファーストランナーと位置付け、本格的なグローバル化を加速させるとともに、組織構築や人財育成などグローバル化推進における基盤づくりを行います。
まずSENSAIは、昨年10月に中国・上海に旗艦店をオープンいたしました。上海を皮切りにドミナント戦略を遂行し、中国の他の都市、次いで他のアジアでも展開していく予定です。
MOLTON BROWNはアジア各都市に旗艦店を配置し、伸びゆくアジアのプレステージフレグランス市場で存在感を拡大してまいります。Curélは日本で培った乾燥性敏感肌へのソリューション(セラミドケア)を、風土や肌質の違う他のアジアにおける肌悩みの解決にまで拡大させ、日本No.1ダーマコスメブランドとしての信頼、効果実感の高い商品群といった強みを生かしていきます。
さらに、セカンドランナーの筆頭にはKANEBO、KATEを位置付け、戦略的に投資を拡大していきます。すでにパーパスドリブンなブランディングにより、国内売上げが大変好調に推移しておりますが、その存在感を本格的にアジアまで広げていくべく、準備を進めております。
これらのブランドは、グローバルで磨くことが国内における存在感をより高めていくことにつながると考えます。
一方、国内のブランドではTWANY、LISSAGEを中心に、引き続きブランドパーパスの具現化に取り組んでまいります。
多くのお客様がリアルの売場に戻られている中で、ブランドと商品をより魅力的に磨き上げていくためには、お客様起点で考えたモノづくり、ひとづくり、店づくりを、いままで以上に意識して行っていくことが重要であると考えます。お客様に「またあのお店に行きたい」「またこの商品を使いたい」と思っていただけるよう、ぜひ販売店の皆様と共に取り組んでいきたいと願っております。
ちふれホールディングス 社長 片岡 方和
世界的な資源価格の高騰、物価上昇が続く中、昨年5月8日に新型コロナウイルス感染症の位置付けが5類感染症に移行したことにより、徐々に人流が活発化し、個人消費の増加やインバウンド需要の回復が感じられるようになりました。
そのような中、化粧品業界各社も環境の変化を捉えながら、商品の開発・製造・販売に努めております。当社グループにおいてはちふれが誕生55周年、ドゥーオーガニックが誕生15周年、HIKARIMIRAIが誕生5周年を迎えた年でもありました。
昨年は一昨年から予定していた株式会社ちふれ化粧品と株式会社光未来の合併を行い、セルフ市場とカウンセリング市場を包含する当社グループの基幹事業会社として歩を進めております。グループ全体としては、研究・開発関連の特許取得や学会発表、生産技術関連においても特許取得いたしました。
また、お客様からの問い合わせ窓口とちふれのブランドサイトは、2年連続でHDI格付けベンチマークの三つ星を獲得。初のオリジナルアプリ「My CHIFUREアプリ」も開発し、様々な面でお客様の利便性向上を図っております。
商品面では、ちふれは「美白シリーズ」やヘアケア「アミノシリーズ」をリニューアルし、ブランド初の「敏感肌用シリーズ」やシワ改善オールインワンジェル「薬用 リンクルジェルクリーム」「ティント リップ ジェル」「シングル カラー アイシャドウ」を発売。綾花もブランド初のシワ改善部分用クリーム「エフェクティブ リンクル クリーム」、顔・からだ用クリーム「へパプラス クリーム」「ラッピング カラー リップスティック」、「潤肌実」ラインから「クッション ファンデーション」や「粉おしろい」を発売しました。
HIKARIMIRAIは整肌美容液「ハイドラ アップ エッセンス」を医薬部外品としてリニューアル、「ハイドラ タッチ UV プロテクター」や「クレンジング オイル」を発売。ドゥーオーガニックは長年の開発期間を経て、メイクライン「WA by do organic」を上市、ドゥーナチュラルは「オイル バランシングシリーズ」や「スタイリング アイブローマスカラ」「シンクロナイジング コンシーラー」を発売するなど、各ブランドにおいて価値ある商品の開発に努めました。
SDGsについては、2022年に直営店舗に導入した「エシカルマーケット-MOTTAINAIワゴン-」で、品質に問題はないものの、店頭の商品入れ替えなどにより返品、廃棄されてしまう化粧品(エシカル品)の販売を継続しています。
エシカル品をそのまま廃棄する場合、CO2が排出されますが、エシカル品として購入、使用いただくことでCO2の削減を目指しています。事業活動におけるこうした取り組みについて広く知っていただきたいという思いから、エシカルバッグの限定販売やちふれブランド公式Xアカウントを活用した限定キャンペーン、ちふれASエルフェン埼玉のホームゲーム会場などでのエシカル品配布なども試みています。
当社が支援するちふれASエルフェン埼玉は、日本初の女子プロサッカーリーグWEリーグで戦うだけでなく、折々地域の子供達と触れ合い、夢や希望を持つことの大切さを伝えています。当社が協賛する高知県のよさこいチーム「とらっくよさこい by ちふれ」も昨年4年ぶりに開催された第70回高知よさこい祭りで大賞を受賞されました。SDGsはお客様や地域の方などの協力があってこそ、達成に向けて挑戦することができるものであり、多くの方の理解と力添えに感謝しております。
本年も経営理念に掲げる「正義感と誇りをもって、うそのない事業活動を行い、心ゆたかに生きられる社会・文化の創造」に向け役員、従業員が力を合わせ、多くのチャレンジを積み重ねてまいります。本年の干支である「辰」のように、力強く旺盛に挑戦し、大きく成長する年にしてまいる所存です。