野村不動産グループ、総力挙げて「芝浦プロジェクト」推進
今秋、三井不動産グループ、野村不動産グループ、東急グループが「2023年度記者懇談会」を開き、現在のグループ企業の事業進捗状況などを報告した。第2回目は野村不動産ホールディングスを取り上げる。11月9日、京王プラザホテルで「野村不動産グループ2023年度記者懇談会」を開催し、公開したグループ事業の状況(海外事業など一部省略)を紹介する。
住宅分譲(マンション・戸建)を中心に、賃貸マンション、サービス付き高齢者向け住宅など幅広く展開している「住宅部門」は、1963年の横浜市「コープ竹の丸」でマンション分譲事業に参入してマンション事業60周年に、2003年の東京都杉並区「プラウド久我山」でプラウドの供給を開始して20周年の節目となる。その住宅部門が手掛けた22年度の住宅戸数は4240戸に上る。
住宅部門は大規模太陽光発電の導入、プラウド全物件でEV充電設置、木造・木質を用いた住宅の推進などによるサステナビリティへの対応をはじめ、都心型戸建・2億円超の高額戸建・賃貸ではラウンジ・ゲストルームも備えた共用部充実型やファミリータイプの供給といったように、多様化する顧客ニーズに沿った供給に注力。今年度の注目物件は、伊勢丹相模原店跡地に完成する「プラウドタワー相模大野クロス」(地下3階~地上41階、総戸数687戸、23年12月販売開始予定)。24年1月開業予定の「プラウドシーズンギャラリー駒沢」は、都内(城西・城南)を中心に2億円超を含む高額戸建を取り扱う戸建専用販売拠点となる。今夏販売した高額戸建の「プラウドシーズン成城五丁目」は2~3億円台でありながら、即日完売する人気となった。
商用不動産の開発、賃貸、売却を事業としている「都市開発部門」は、オフィス事業からホテル事業、商業事業、物流事業、フィットネス事業までと領域が広い。オフィス事業においては、在宅勤務やテレワークの拡大により働く場が分散化するなど、オフィスの役割の多様化に対応し、サテライト型シェアオフィス「H¹T」、サービス付き小規模オフィス「H¹O」、中規模ハイグレードオフィス「PMO」、東京虎ノ門グローバルスクエアや芝浦プロジェクトなどの大規模オフィスまでを展開。その拠点数は現在H¹Tが248(提携店含む)、H¹Oが18(予定含む)、PMOが72(予定含む)という実績だ。
オフィス事業では、賃貸オフィスビルにおける木質化への取り組みを強めている。H¹Oシリーズでは平河町・青山・茶屋町・芝公園で木質化を推進しており、今年10月には令和3年度サステナブル建築物等先導事業(木造先導型)の賃貸オフィスビル「野村不動産溜池山王ビル」(地下1階~地上9階)の竣工が予定されている。商業事業では都市型商業施設の「GEMS」の新規開業がある。21棟目となる「GEMS名駅3丁目」(地上10階、10テナント)が24年5月に開業(予定)するのに続き、同年10月には立川地場企業のMOTHERS社と協業で「GEMS立川」(地上10階、10テナント)が開業を予定する。
物流事業では、Landportシリーズにおいて物流の2024年問題による長距離ドライバー不足という課題解消を担う地方都市での施設開発に当たる。23年に「Landport京都南」(延床面積約6885坪)と「Landport福岡久山」(同約6321坪)の竣工に続き、25年には10月(予定)に「(仮称)Landport東海大府」(同7万4500坪の予定)と、12月(同)に「(仮称)「Landport仙台岩沼」(同約1万3600坪の予定)が開業する。さらに物流事業ではIHI社と共同で進めている物流施設開発事業「(仮称)Landport横浜杉田」(同約4万9000坪)が、25年3月竣工予定。Landport横浜杉田には、初の立体型自動倉庫による保管などのシェアリングサービスが導入される計画だ。
ホテル事業では、直営の「NOHGA HOTEL」が18年の上野の開業を皮切りに、秋葉原・水道橋・京都の4カ所に拡大。地元に根差し、地域の魅力を発信することで“ここにしかない1日”を国内外の顧客に提供しており、現在のNOHGA HOTELは、インバウンド需要の高まりに伴い海外顧客比率が約80%に高まっている。
野村不動産グループで最大のプロジェクトとなる「芝浦プロジェクト」は、総事業費約4000憶円を投じ、高さ約235mの超高層ツインタワービルを建設する。21年10月に着工した「S棟」(地下3階~地上43階)は、25年2月に竣工予定。そのS棟には日本初進出のラグジュアリーホテル「フェアモント」の誘致が決まり、同S棟には野村不動産グループ本社が移転する。これに向けて野村不動産の各本部やグループ会社が2カ月単位で「本社トライアル移転」を繰り返し実施し、新たな働き方、過ごし方を自らが実験台となって走行中。なお、27年度に竣工する「N棟」(地下3階~地上45階、用途はレジデンス・オフィス・商業施設など)は、30年度に竣工予定。
複合再開発・中長期案件を担うのが、開発企画本部と事業創造本部。開発企画本部は主に市街地再開発事業やマンション建て替え事業を、事業創造本部は主に複合開発や新領域事業を担う。事業規模によっては両本部が連携するだけでなく、グループ各社・部署と連携しながら横串で街づくりに当たる。
手掛けている注目の大型複合再開発事業には「西麻布三丁目北東地区第一種市街地再開発事業」や、「中野四丁目新北口駅前地区第一種市街地再開発事業」がある。野村不動産とケン・コーポレーションが参加組合員となっている前者の西麻布三丁目北東地区は、六本木ヒルズに隣接する約1.6haの区域に地下4階~地上54階、高さ約200mの超高層棟(延床面積約9万7010㎡、用途は住宅・事務所・商業・ホテルなど)を建て、地区内にある3つの寺社も再整備して街の歴史を継承しつつ、周辺と調和した複合市街地の形成を図る。
今年11月15日付で都市計画が決定した中野四丁目新北口駅前地区は、野村不動産が代表事業者になっている再開発事業で、中野サンプラザや中野区役所の敷地を含む2haを超える広大な敷地に、中野サンプラザの機能を再整備。ホール・オフィス・住宅・商業・ホテルなどで構成された複合施設を開発する。ホールは中野サンプラザのDNAを継承し、最大7000人規模の多目的ホールが整備される。24年度から建物解体に入り、28年度竣工予定。
そのほかに野村不動産が参画(他社との共同参画)している再開発事業は「月島三丁目南地区開発」(用途住宅)、「豊海地区再開発」(同住宅)、「日本橋一丁目中地区再開発」(同業務)、「南小岩六丁目再開発」(同住宅・商業)、「平井5丁目駅前地区再開発」(同住宅)、「南池袋二丁目C地区再開発」(同住宅)、「板橋駅前地区再開発」(住宅)、「浦和駅西口南地区再開発」(住宅)などとなる。
(塚井明彦)