2024年10月30日

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クイーポの「ジョセフ アンド ステイシー」が好調、ユニセックスで新客獲得へ

鮮やかなカラーグラデーションを誇る「ラッキープリーツニット」

クイーポの「JOSEPH AND STACEY(ジョセフ アンド ステイシー)」が、快走を続けている。韓国発の人気ブランドとして2022年4月に日本に上陸し、ECサイトでの販売をスタート。今年4月に同社が正規総代理店契約を結び、国内での本格的な販売を開始した。直営店を持たず、全国の百貨店はじめ商業施設などでのポップアップ展開は奏功。メインターゲットの20~30代女性の心を掴み、売上げも好調だ。国内での認知度が目指すレベルに到達しつつある今、ユニセックス向けのバッグも打ち出し、新客獲得を目指す。

ジョセフ アンド ステイシーは、March Internationalの創業者であるホ・ジスク氏が09年に立ち上げた。ブランドのシグネチャーであるニットバッグ「ラッキープリーツニット」は、連続的に折り畳まれた大きなプリーツが唯一無二のデザイン。韓国の建築物と伝統的な衣装から「しわ」のインスピレーションを受けてつくられた。生地はプラスチックボトルをリサイクルした繊維素材を使用。環境への配慮も商品価値を高めている。

折り畳んだ際の一見ネクタイのような目を引くビジュアルも話題だ

クイーポの営業本部第二事業部販売一部の倉石達也部長は「ジョセフ アンド ステイシーを取り扱うことで(顧客層が)20~30代に広がっていった」と、手応えを語る。きっかけは昨年10月、都内の百貨店で開かれたポップアップショップを見たことだった。プリーツニットの豊富なカラーバリエーションと、バッグを畳んだ際のキャッチーなビジュアルに加え、韓国発信の新しいブランドでもあり「アタックしてみよう」(倉石氏)と決めた。一緒に見学した新入社員の女性達による「かわいい」という反応も後押しになった。

正規総代理店の契約締結は、ブランドのグローバル部門の担当者が日本人だったこともありスムーズに進んだ。今年4月にはローンチイベントを開催し、全国の百貨店をはじめ商業施設などでポップアップを開始。PR会社の協力もあり、SNSを中心とした情報発信は、狙い通り若年層にヒットした。倉石氏は「当社の既存のライセンスブランドとは異なる層の顧客獲得に(SNSは)特に効果的だった。スタートして良かった」と振り返る。

4月からの半年間、まずはブランドの認知度向上を最優先にポップアップを展開してきた。開催は9月時点で10店舗を超え、現在も出店の依頼は引く手あまた。「会期」「トラフィック」「客層」を精査し、1店舗当たりの売上げを考慮した上で決定している。

店に訪れた客の多くは、色違いやサイズ違いで“2個買い”するという。イニシャルや季節のモチーフなどが入れられる有料の「BESPOKE刺繍サービス」も人気だ。自分用だけでなくギフト用にも刺繍を入れる客が目立つ。刺繍作業は同社の社員が講習を受け、分担して行う。ミシンが設置できる店舗のみのサービスとなるが、営業本部営業販促室の爲井春奈氏は「刺繍ができるのとできないのでは売れ行きが全く異なる」と、好評ぶりを明かす。

実際にバッグを持った時のサイズ感や、物を入れた時のニットの伸び具合など、商品を見て試してもらう貴重な機会としてもポップアップを重要視しているが、常設店は今のところ考えていないという。「カギは顧客層の拡大とブランドの発信ができる影響のあるエリアで、売場環境や、ターゲットに訴求できる立地が(希望と)合致する所があれば、前向きに考えていきたい」(倉石氏)としている。

ユニセックスアイテムとして、男性にも訴求するショルダーバッグ

今や同社をPRするブランドに成長したが、倉石氏は「ニットプリーツが来春で一回りするため、それに続く柱となる商品が生まれてくれれば」とも話す。加えて本国からは「ユニセックスやジェンダーレスへの対応にも力を入れていきたい」との意向が寄せられている。韓国の日本のマーケットに対する期待は大きく、実際に本国から来る新商品のラインナップは、ニットではなく革素材などが増えてきているという。ポリウレタン素材を使用した光沢のあるヴィーガンレザーのショルダーバッグやバックパックは、男性も使えるよう意識したデザイン。カラーはブラックやシルバーなどで、通勤や普段使いにも適した収納力を備える。

牛革で仕立てたプリーツバッグも揃う。サイズや形状、カラーなどバリエーションに幅を持たせる

しかし倉石氏は「日本のマーケットでは、そこを広げていくのは時間が掛かると伝えている」と述べる。例えば大半の百貨店では、メンズとレディースの売場が分かれたフロア構成になっている。課題は売り方で、結果を出すのはそう容易ではない。ターゲットは変わらず20~30代をメインに据えるものの、素材が革の場合は価格帯が2万円台もしくは3万円を超えるものもある。現在売れ行きが良いのは1万2000円台を中心とした商品のため、顧客が手を出しづらくなることも想定する。「日本のマーケットに合致するか」「ターゲット層を拡大できるか」をポイントに販売商品を選定し、まずはSNSでの告知を近道と捉え、男性も対象に広告を打っていく考えだ。

同時にECサイトでの売上げも課題に挙げる。リアル店舗での売上げが好調だった一方、ECサイトではこの半年でさほど伸びなかったという。「これからの半年間は、ECサイトでの売上げ拡大のプライオリティーを上げて取り組んでいく」(倉石氏)と意欲をのぞかせる。

倉石氏は「これから先も(取り扱う)ブランドを広げて、“元気のいい会社”であることをよりアピールしていきたい。その1つとして、このジョセフアンドステイシーを大きくしていきたいという強い想いがある」と語る。クイーポがアタックした稼ぎ頭は、さらなる顧客拡大にまい進する。

(中林桂子)