ツカモトコーポレーション、百貨店の紳士服売場への出店加速
ツカモトコーポレーションは、百貨店の紳士服売場への出店を加速する。新型コロナウイルス禍では多くのメーカーが百貨店の紳士服売場から撤退したが、それだけに残存者利益があると判断。2022年度(22年4月~23年3月)から本格的に販売する、メイド・イン・ジャパンのカジュアルウエアにこだわるブランド「NOMINATE(ノミネート)」を、現在の11店舗から2024年度(24年4月~25年3月)に20店舗、25年度には30店舗まで増やす。既存店の売上げは好調で、23年度に2億円を見込む。今秋冬から、同じくコロナ禍でブランドの改廃が相次いだ「大きいサイズの売場」向けの品揃えも充実させており、出店の余地が拡大。百貨店からのオファーは多く、複数と交渉中だ。
ノミネートは21年度に立ち上げた。当時は名前を付けておらず、鶴屋百貨店や東急百貨店本店(当時)らの紳士服売場のショップの跡地で日本製のニットを販売した。越智泰ホーム・ファッション事業部アパレル部部長は「21年度の秋冬企画までは寄せ集めの商品を販売した」と苦笑する。
本格的に展開し始めたのは22年度だ。品揃えやブランドのロゴなどを刷新し、トップスを中心とするメイド・イン・ジャパンのカジュアルウエアブランドとして拡販に乗り出した。
同業他社と差異化して支持を確立するために①商品②納期③価格――という3つの優先順位を定めた。「常に時代のニーズに合う商品を、最短かつ価格を抑えて供給する。ロットは最小限で、SDGsが重要視される世の中、ムダには生産しない。国内の仕入れ先との50年以上の取引で培ってきたネットワークがあるからこそ可能だ」(越智氏)。春夏と秋冬は共に60~70型を新規に打ち出し、年間で120~140型を企画・生産する。
勝算もあった。「アフターコロナで百貨店も再投資の期間に入るだろう。中でもコロナ禍で多くのショップが抜けた紳士服売場も再編は必須。コロナ禍ではゴルフやアウトドアのブランドを拡充する百貨店が目立ったが、ここにきてゴルフブームは一息、アウトドアウエアも供給過多だ。一方で、男性のカジュアル志向へのシフトは続き、必要以上に売場を縮小してきた百貨店のメンズカジュアルには伸び代がある。中でもキングサイズはメーカーの事業縮小などもあり、エアーポケット状態だ」(越智氏)
現状の売れ行きは「まだまだ未知数」(越智氏)だが、人気はジャケットやブルゾンなどで、売上げの40%強を占める。春夏ではカットソー、布帛のシャツ、秋冬ではニット、布帛のシャツが売れ筋だ。
品揃えは客の反応を踏まえて順次修正しており、年を追うごとに精度が向上。売上げは右肩上がりで、既存店の売上げは前年の約1.3倍(10月20日時点)と勢いに乗る。好評を受けて店舗数も増え続け、今年11月8日時点では11を数える。
成長の余地も十分だ。今秋冬企画では、新たに大きいサイズの売場向けの商品を投入。越智氏は「コロナ禍でキングサイズを手掛けるブランドが減った。ノミネートは3Lまで揃え、その後釜を狙う」と意気軒高だ。百貨店の反応は良好で、5~6店舗から「まずは大きいサイズの売場向けの商品だけ販売したい」というラブコールが届いた。
当面の目標は25年度末に30店舗、6億円の売上高。「23~24年度に向けて20店舗ほどと交渉中」(越智氏)と、視界は良好だ。ツカモトコーポレーションにおける衣料品の売上高はピークの3割ほどまで減少したが、百貨店の紳士服売場に照準を合わせて巻き返す。
(野間智朗)