2024年の福袋は「外出需要」に照準 体験系や店頭販売を強化
今年も百貨店各社が福袋のラインナップを発表した。物価高による家計の引き締めという逆風もあるが、今回は新型コロナウイルス感染症が5類に移行して初めての年末年始となる。各社は外出需要の増加を見越して体験系の福袋を充実。店頭で販売する商品数を増やした百貨店もある。
「家計応援」や「地域色」がキーワードに
松屋は「買い物を通じて生活応援にもつながり、お客様に少しでも楽しい気持ちになってほしい」との願いを込め、“ココロオドル”内容を用意。お得感のある食品福袋から、銀座と浅草ならではの文化体験型、昨年も好評だったグルメガチャなどに加え、松屋の大型新人選手が提案する“二刀流”福袋も登場する。
銀座店と浅草店、「松屋オンラインストア」合わせて前年の8割となる約1万4000個を用意し、売上げも前年の80%を目標に据える。昨年と異なる点として、銀座店が1月2日も店休日とするため、例年2日間で展開していた初売り商戦を3日のみに集中させる。しかし銀座店は23年度上期(3~8月)の売上高が前年の45%増、9月も同37%増と絶好調だ。担当者は「目標の売上げは取れるだろう」と見込む。
生活応援につながる福袋として、「レトルトカレー福袋」(4000円)、「パスタ福袋」(3000円)、「だし麺福袋」(1620円)を、いずれも20点限定、20~30%相当の割引価格で販売する。羽毛掛け布団や機能性毛布などを集めた「電気代節約!あったか寝具福袋」(3点限定)も、10万円相当を5万5000円で販売する。
銀座と浅草を楽しみ尽くす福袋もそれぞれ用意。「銀座の一流“文化”体験福袋」(3点限定、3万8500円)は、「銀座もとじ」の本場大島紬を着て、新橋演舞場で芸者衆が唄を披露する「東おどり」が楽しめる。「浅草満喫福袋」は、履物職人による製造体験や人力車に乗れる「浅草文化体験プラン」(6組限定、5万6560円)と、「浅草花やしき」が貸し切れるなどの「キッズプラン」(6組限定、5656円)がある。
東武百貨店池袋本店は、「家計を応援!『集い』・『食』・『体験』推し!」をテーマに、大人数向けの食品の詰め合わせやサブスク福袋、体験型福袋などを揃える。店頭の客数増を予測し、売上げは前年の2割増を目指す。店頭で販売する商品の種類も15%増やし、全体のSKU数は約1割プラスとなった。事前予約型の福袋は店頭と「東武オンラインショッピング」で11~12月に受注し、年始販売は1月2~5日に行う。
集いの場が盛り上がる福袋として、約5万円相当の鮮魚を盛り合わせた「豪華!竜蝦(いせえび)の舟盛」(5点限定、3万円)、計1.6kgの肉で龍を表現した「ドラゴンミート」(3点限定、1万5000円)、北海道展バイヤー一押しの「北海道産かにの詰合せ福袋」(5点限定、5万5000円)などが登場する。
昨年に応募抽選倍率が最大1120倍となった人気のサブスク福袋は、「フルーツショップ青木」の「サブスク果物福袋」(5点限定、2万240円)、「九州屋」の「旬を12回楽しむ果物福袋」(6点限定、2万240円)など全10種類を用意。体験福袋としては、元プロ野球選手の篠塚和典さんの指導を受けられる福袋(12組限定、5000円)、演歌歌手・石原まさしさんとカラオケボックスでデュエットできる福袋(3組限定、2万240円)などを展開する。
そごう・西武は「笑顔」がテーマ。2023年の紛争や災害を乗り越え、24年の1年間を笑顔で過ごせるようにという願いを込めた。1月1~3日に「福袋大市」として売り出す。売上げは前年並みを目指す。
地域性も打ち出しており、「西武鉄道 笑顔がいっぱい福袋」(12組、2万240円)は西武鉄道池袋駅の駅長体験と西武鉄道グッズ、西武池袋本店レストランの食事をセットにした。「銚子電鉄社長 竹本勝紀氏と巡る ふらり銚子電鉄ニコニコ途中下車の旅 福袋」(7組14人、2万5250円)は、竹本勝紀社長が銚子電鉄と沿線観光を半日に亘り案内する。銚子電鉄はぬれ煎餅など、電鉄以外の事業も積極的に展開しており、そごう千葉店とも関わりが深い。
そのほか、そごう広島店の「サンフレッチェ広島コラボ体験福袋」(5組10人、3200円)、西武秋田店の「秋田おばこ・~”秋田ざんまい”農家のパーティコラボ福袋」(40点、4000円)など、各エリアの特色を生かした福袋を用意した。
西武池袋本店は、今年も1月1日に初売りを行う。最近は元日に休む百貨店も増えているが、「楽しみにしているお客様も多く、当店の特色のようになっている」(担当者)。今年の元日は「一粒万倍日」「天赦日」が重なるスーパーラッキーデーであるため、財布の紐も緩みやすいとにらむ。
担当者の個性光る、ユニークな福袋も
担当者のオリジナリティーが光る、ユニークな福袋も毎年の名物だ。松屋の新人社員が手掛けた「日本酒とワインの二刀流44本福袋」(1袋限定、4万4000円)は、今年ホームラン王となったメジャーリーガーの大谷翔平選手のホームラン数に合わせたセット。新旧の所属チームにちなみ、北海道の酒を含む日本酒と、カリフォルニアのワインを含むワインを各22本詰め合わせた。企画したのは、食品部食品二課和洋酒・食品ギフト係の大谷亮平氏。9月に地下1階の酒売場に異動したばかりだったが、「若い社員にも任せてもらえるので、(大谷選手と氏名が1文字違いである)自分の名前を活用して企画した」と話す。
東武百貨店池袋本店は、人気催事「IKEBUKURO パン祭り」で限定パンとして商品化される福袋(限定1人、2024円)を用意。応募用紙にパンのイラストを描いて応募し、抽選に当選すると「手づくりのデリとパン cafe cocona」の店主と一緒にパンづくりを体験できる。東武百貨店催事担当バイヤーの深井英孝氏が実際に試食し、バイヤーの目を通して商品化する。
そごう・西武からは、占いを受けられたりイラストを描いてもらえたりする福袋が登場する。「開運館 サブスク ワンポイント占い福袋」(5組、2024円)は西武池袋本店7階にある「開運館E&E」で、1月中は毎日ワンポイントの占いを受けられる。「キン・シオタニさんにイラストを描いてもらえる福袋」(10点、2万240円)は自分の名前(アルファベット表記)にイラストを描いてもらえる権利と、龍の絵や日めくりカレンダーなどのセット。
大丸東京店は、福袋のテーマ自体を「みんなの偏愛福袋」として、社員の偏愛を掘り下げた福袋を企画した。ウイスキーの製造過程を全て体験できる「小諸蒸留所特別ビスポークウイスキー樽福袋」(限定1点、777万円)、9匹の龍が彫刻された縁起物の「2024年辰年!龍 開運・改運福袋」(限定1点、1億1000万円)、ストリートアーティスト・バンクシーの絵画「2024万円!アート福袋!」(限定1点、2024万円)といった、ディープな世界を堪能できる福袋達が登場する。
(都築いづみ/中林桂子)