高層化・複合化で拡大するエンターテインメント施設〈劇場・ホール・アリーナ編〉
再開発ビルなどの大型化、高層化に伴い、複合型施設が増加している。ホテルやオフィス、住宅や商業施設などにとどまらず、劇場やホール、アリーナ、さらにはスタジアムや水族館、プラネタリウムなどのエンターテインメント施設も増えてきている。ショッピングセンターにおいても商業施設だけでなく、遊びや体験ができる広場を館内外に設けたり、図書館などの公共施設やオフィス、マンション、病院などを併設したりする複合型も出てきている。ここでは複合化の動きを一覧表とし、今秋誕生したケン・コーポレーションの「Kアリーナ横浜」と、虎ノ門ヒルズステーションタワーの「TOKYO NODE」をクローズアップする。
街区の開発が進み、毎年のように大型高層ビルが誕生しているみなとみらい21地区の60・61街区に、ケン・コーポレーションが開発を進めてきた「Kアリーナプロジェクト(街区名:ミュージックテラス)」が完成。アリーナ棟に「Kアリーナ横浜」、ホテル棟に「ヒルトン横浜」、オフィス棟に「Kタワー横浜」が、9月24日にグランドオープンした。
同プロジェクトは、音楽アリーナのKアリーナ横浜(地上9階、延床面積約5万3852㎡)、ヒルトン横浜(地下1階~地上28階、同3万4815㎡、客室数339室)、オフィスビルのKタワー横浜(地下1階~地上23階、同2万9716㎡、貸床面積約1万5000㎡)からなる大規模複合施設。注目の施設は、なんといっても世界最大級の音楽アリーナ、Kアリーナ横浜である。
9月22日のKアリーナ横浜・ヒルトン横浜の合同開業式典には、来賓として衆議院議員の菅義衛氏と林芳正氏、横浜市長の山中竹春氏、横浜商工会議所会頭の上野孝氏、鹿島建設代表取締役会長の押味至一氏、三井住友銀行取締役会長の髙島誠氏、横浜銀行代表取締役頭取の片岡達也氏など、そうそうたる要人が召集された。
同式典に主催者として挨拶に立ったケン・コーポレーション代表取締役会長の佐藤繁氏は「横浜に世界的に有名なファイブスターホテル・ヒルトンホテルと、Kアリーナ横浜が誕生しました。これからは横浜で国際会議などの大きなイベントがあっても横浜に宿泊をしない、いわゆる“横浜またぎ”がなくなると確信しています。そして日本一、いや世界一の規模を誇る音楽専用アリーナ・Kアリーナ横浜は、2万人収容できること、全ての座席をステージ正面に向けて扇状に配置したこと、ワンデーコンサートができるようにしたこと、景観が美しいこと。さらに天井から120tの重さに耐えられる構造にするために、アリーナ周りの壁幅5mを二重壁にして近隣住民への音漏れや振動に配慮し、床は厚さ1mの鉄筋コンクリートで仕上げています」
「また、500人収容のラウンジと最高級のVIPルーム、11カ所のスイートルームとラウンジがあります。Kアリーナ横浜は全てのミュージシャン、音楽ファンの皆さんに夢と感動を与えます。横浜が音楽というキーワードで、日本一の国際都市へと発展されることを心よりお祈りいたします」と力強く語った。
続いて、ケン・コーポレーション常務取締役兼Kアリーナマネジメント代表取締役社長の田村剛氏が、Kアリーナ横浜の概要と特徴を以下のように説明した。
「Kアリーナ横浜は座席を約2万席確保していますが、スタンディングでは2万2000人まで可能です。世界にあるVENUE(会場、開催地)は多目的であったりスポーツ施設だったりで、Kアリーナのように音楽に特化したアリーナは世界にほとんど存在しません。全体のキャパシティではさいたまスーパーアリーナの方が大きいですが、コンサートやライブをするアリーナでは約1万7000人規模で、Kアリーナは日本の中で最大と言えます」
「Kアリーナ横浜の特徴については、音楽に特化した施設なので、音にこだわっています。全ての座席をステージ正面に向けた配置とし、スピーカーはフランス製のL-acousticsのスピーカーを採用、200個のスピーカーを使っているので、どの席に座っても均一な音を聞けます。ステージと客席が近いので、アーティストにとっては一体感を創出しやすい特性があり、全席がファブリックシートになっていて座り心地も抜群です」
「ライブを開催するには時間と労力が必要とされる会場設営を、大幅に短縮できる工夫も凝らしました。1つ目は11tトラックが乗り入れて搬入・搬出ができること。2つ目は大規模なステージセットにも対応できるよう、アリーナ内に480カ所の吊り点を確保し、総重量120tまで吊ることが可能です。3つ目はステージ上空に備えている昇降グリッドと呼ばれる舞台機構があり、その昇降グリッドが床まで降りてくるので高所で作業をしないで済むようになります。ステージ、スピーカー、照明など、基本的にライブで必要とされるものは会場にあるので、お貸しすることで、非常に使い勝手が良く、省力化も可能にします」
「舞台設備以外にも特徴があります。5階に400席ある飲食スペースのほか、Kアリーナ内に11の売店を設けています。6階には豪華なVIPラウンジがあり、ここで約100人の方が酒や食事を楽しめます。加えてこのフロアには11の個室があり、企業向けに年間契約販売しています。7階にあるバーラウンジはライブを見に来たゲストだけでなく、近隣で働く人や横浜に来街された方も利用でき、公演のない日でも利用できるようにする予定です。施設内外には6200口のコインロッカーを備え、荷物を持つ煩わしさから解放され、快適にライブコンサートを楽しめることも特徴といえます」
Kアリーナ横浜のこけら落とし公演は、横浜出身のアーティスト、ゆずが登場。9月29、30日、10月1日に「YUZU SPECIAL LIVE 2023 in K-Arena Yokohama」が開催された。
みなとみらい21地区にはKアリーナ横浜に先駆け、20年3月に47街区にオフィス・ホテル・ライブハウス型ホール(KT Zepp Yokohama、スタンディングで約2000人収容)で構成された「KTビル」と、20年7月には38街区にぴあが「ぴあアリーナMM」(着席時で約1万人、スタンディングで約1万2000人収容)がオープンした。
2014年の森タワーの開業から段階的に進化を続けてきた虎ノ門ヒルズが6日、4棟目となる「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」(以下ステーションタワー)を開業。開発区域面積約7.5ha、延床面積約79万2000㎡の街が完成した。開業を記念して行われたオープニングセレモニー「リボンカッティング」には、森ビル社長の辻慎吾氏、独立行政法人都市再生機構理事長の中島正弘氏、東京地下鉄社長の山村明義氏、OMAのパートナーおよびニューヨーク事務所代表の重松象平氏、ホテル虎ノ門ヒルズ総支配人のギヨーム・ポピー氏が参加し、華々しくオープンを飾った。
地下4階~地上49階、高さ約266m、延床面積約25万3210㎡のステーションタワーは、多用途複合の超高層タワー。虎ノ門ヒルズ駅と一体開発された開放的な駅前広場「ステーションアトリウム」、ステーションアトリウムと直結の食を中心としたマーケット「T-MARKET」、東京初進出となるアンバウンド コレクション by Hyattの「ホテル虎ノ門ヒルズ」、総貸室面積約10万7000㎡のオフィス、最上部にイベントホール、ギャラリー、レストラン、屋上ガーデンなどが複合した全く新しい情報発信拠点「TOKYO NODE」がある。
45~49階(一部8階)に誕生するTOKYO NODEには、約1万㎡の規模が充てられた。46階にTOKYO NODEの中心となるメインホール「TOKYO NODE HALL」があり、段床式で全面スクリーンと防音構造を備え、パフォーマンスから各種アワードやパーティまで、幅広い形式・レイアウトに対応。45階には360度没入空間を演出できる「TOKYO NODE GALLERY A」や、1020㎡の圧倒的な大空間を誇る「TOKYO NODE GALLERY B」、天井高12mで可変性の高い空間の「TOKYO NODE GALLERY C」がある。
地上250mの高さの49階には、オープンエアの広大なスカイガーデンと象徴的なインフィニティプールを配置。世界トップレベルのシェフが手掛けるレストランは45・49階、企業やクリエイターとの共創の場となる「TOKYO NODE LAB」がある8階には、カフェ&バーが設けられている。
TOKYO NODEが完成し、開館記念の企画第1弾として「Syn:身体感覚の新たな地平 by Rhizomatiks×ELEVENPLAY」(10月6日~11月12日)が開催されている。総面積1500㎡もの展示空間につくられた精巧な会場に、体験者自ら足を踏み入れる新たな没入型パフォーマンスだ。続く第2弾は、写真家で映画監督の蜷川実花氏が挑む空間体験型の展覧会「蜷川実花展:Eternity in a Moment」(12月5日~2月25日)が予定されている。会場は第1弾、2弾いずれも、TOKYO NODE45階のGALLERY A/B/Cとなる。
(塚井明彦)