2024年11月24日

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【連載】富裕層ビジネスの世界 オフィス・アパレル無しの巨大ビル「東急歌舞伎町タワー」の凄み

今年4月、東京・歌舞伎町の西武新宿駅近くに巨大なタワーがオープンした。不動産関係者のみならず小売り関係者を驚かせたのはその巨大さだけではない。これまでの巨大タワーにない、まったく新しいコンセプトでつくられたものだったからだ。

その名前は「東急歌舞伎町タワー」。東急とグループ会社の東急レクリエーションが、映画館の旧新宿ミラノ座やサウナの跡地4600㎡の敷地に、地上48階、地下5階、高さ225メートルの巨大タワーを建設したものだ。

開業以来様々なイベントが開催されている。4月17日には、ライブホール「Zepp Shinjuku (TOKYO) 」がオープン。こけら落とし公演が4日連続で行われ、新宿出身の人気バンドSUPER BEAVERを始め、東京スカパラダイスオーケストラや西川貴教、Little Glee Monsterなど豪華アーティストが出演した。

また、5月6日からは劇場「THEATER MILANO-Za」でもこけら落とし公演がスタート。窪田正孝や石橋静河らが出演する『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』が幕を開け、大盛況を博したという。

オフィスや物販店舗なしでエンタメ特化

このようにさまざまなエンターテインメントコンテンツが繰り広げられる歌舞伎町タワーだが、館内を巡ってみると大型ビルでよく見掛けるフロアがないことに気付く。オフィスや、アパレルなどの物販店舗が1つもないのだ。

通常の大型ビルでは、安定した家賃を得ることができるオフィスを下支えに、物販などを入居させる。ところが歌舞伎町タワーには、そうしたものが一切ない。これこそが歌舞伎町タワー最大の特徴で、ホテルとエンタメに特化しているわけだ。

フロア構成はこんな感じだ。

まず注目すべきは、前述した地下1階〜地下4階のZEPPホールだ。都心立地としては最大級となる1500人規模のキャパシティーを誇る。またステージと客席の距離が近いため、臨場感あふれる音楽体験ができると評判だ。

このフロア、深夜11時を過ぎると「ZEROTOKYO」というクラブになる。テクノやハウス、EDM、トランスミュージックに至るまで、さまざまなエンターテインメントコンテンツが繰り広げられ、朝まで楽しむことができる。

2階に上ると、電飾がきらびやかな世界が飛び込んでくる。「新宿カブキhall〜歌舞伎横丁」だ。1000㎡のフロアには祭りをテーマに、食と音楽、映像が融合した10店舗が軒を連ね、北海道から沖縄まで全国の味を朝5時まで楽しめる。フロアにあるステージでは全国の祭りなどが演じられ、訪日観光客に大人気だという。

ラグジュアリーな施設が目白押し

6〜8階は前述した新宿ミラノ座の名前を継承した劇場だ。907席の空間で演劇や音楽、映像といった多彩なエンタメコンテンツを楽しめる。そして9〜10階に入る映画館は2000席入る空間にあえて752席しか設けず、その全てが一般の映画館の2倍以上の広さを持つプレミアムシートという贅沢ぶり。しかも音響は全て故坂本龍一氏が監修したものだ。ゆったりとした空間で、素晴らしい映像と音を楽しむことができる。

こうしたエンタメ施設とホテルとを結んでいるのが、17階のダイニングバー「JAM17」だ。名前にはジャムセッションのように多様な感性が混じり合い、新しいエネルギーを発する社交場にしたいとの思いが込められている。フロアにはイタリアンスタイルのダイニングを中心に、バーやパーティールーム、そしてオープンテラスなどがある。ホテルの利用客とともに、一般客も利用可能だ。

そして18階にホテルのロビー、その上には2ブランドのホテルが入っている。39〜47階には97室のラグジュアリーホテルが、20〜38階までには538室のライフスタイルホテルが入居するといった具合だ。

歌舞伎町タワーの開発責任者は雑誌などのインタビューで、「新宿は、古くから文化人やアーティストらが集うなどカルチャーの裾野が広い。そうした街にこれまでにはない建物で新たな観光拠点をつくり、街全体の発展につなげたいと考えた」とした上で、「業界初の壮大なチャレンジ」だと述べている。

深夜営業に外国人が押し寄せる

さらにもう1つの特徴は、タワー内の施設が深夜まで営業していること。以前から「東京の夜は早くて楽しめない」といった声が訪日観光客から多く上がっていたが、深夜帯の開拓にも挑戦しているわけだ。2階の歌舞伎横町やタワー内のバーでは、朝方まで楽しむ外国人の姿が多く見られる。

これまでの大型ビルとは一線を画し、エンタメ特化型とも言える歌舞伎町タワー。そのコンセプトも「好きを極める」ととんがっている。こうした戦略は、今のところ成功していると言えそうだ。開業からわずか1ヵ月後の5月22日に来館者数が100万人を突破するなど、滑り出しは極めて好調。さらにデータが取れるホテルに限定されるが、インバウンド比率も80%を超えるなど、訪日観光客の支持も集めている。秋以降は中国の団体旅行も押し寄せそうで、さらに来館者数は増えそうだ。

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