そごう横浜店の「アイスを愛す会」に熱視線 夏場の集客狙い初開催
芋の次はアイスだ――。近年の消費をけん引する「偏愛」に照準を合わせ、イモやギョーザなどに特化した催事を開いてきた、そごう横浜店。その最新版である「アイスを愛す会」が2日に始まった。15日までに、かき氷やアイスクリームで有名な7店舗が8階の催会場に集結。それぞれの味を、イートインスペースで楽しめる。子供の夏休みの期間でもあり、初日から時間を問わず賑わい、売上げは計画を上回る好調ぶりだ。
アイスを愛す会は2~8日を前半、9~15日を後半と分けた。前半には「大阪浪花家」(大阪府)、「羽二重餅總本舗 松岡軒」(福井県)、「カフェアキラ」(北海道)が、後半には「はじまりの紅茶」(静岡県)、「かき氷 氷連」(東京都)、「台湾雪花氷」(同)、「京かき氷 つみき」(京都府)が登場。各店に席を設けるのではなく、共用のイートインスペースを構えた。特定の店舗に客足が集中し、席を待つ時間が長くなると、効率が落ちるからだ。
客は入口で注文および決済した後、チケットを受け取って各店に渡しに行くが、この形式を採用した背景には「待つ間に作る過程を見られるようにする」(望月大貴営業Ⅲ部食品ギフト課食品催事係係長)狙いがある。待ち時間をエンターテインメントとして演出した。百貨店業界でも定例化した「アイスクリーム万博」と異なり、あえて物販を省いた理由とも重なる。「(イートインだけの方が)しずる感を出せる。かき氷は作る過程が映えるし、既製品を売るよりも“そこでしか得られないモノ”を重視した」(望月氏)
ラインナップにもこだわった。望月氏は「まず、いわゆる『インスタ映え』に適う店舗を前半と後半で1店ずつは呼ぼうと考えた。加えて、夏季限定でかき氷を販売する店舗にも白羽の矢を立てた」と説明する。望月氏は他の百貨店に催事で出た店舗を見たり、かき氷に関する記事を読んだり、かき氷業界の横のつながりを生かしたりしながら、自ら各店に声をかけて交渉。7店舗の誘致にこぎ着けた。
初めての催事で実績がなく、「忙しい」や「どれくらい売れるか分からない」などを理由に断られた店舗も少なくないが、いわゆる「ゴーラー」(かき氷の愛好家)なら誰もが知る大阪浪花家は「神奈川県には初めて出るが、認知してもらえれば大阪の店にも来てくれる」と考え、協力してくれたという。有名店でも、百貨店の集客力に対する期待は大きい。
アイスを愛す会の完成度について、望月氏は「80点」と自己採点する。足りない20点は店舗数と限定品。「前半も後半と同じ4店舗にしたかったし、限定品があればもっと多くのゴーラーを呼べた」と悔やむ。ただ、客の反応は上々だ。8月3日時点で売上げは目標を超えており、カフェアキラの各日限定20杯の「贅沢いちごのソフトパフェ」は初日に1時間半で完売。2日目も早々に売り切れた。男性が1人で来たり、ベビーカーを押す母親が併催する「ミッフィー zakkaフェスタ」や「ディズニープリンセス パーティーモーメント」と買い回ったり、店舗の集客力や買い回りも押し上げられた。
「夏場に家から出て百貨店を訪れたくなるためには――と考え、4~5年前からブームの『進化系かき氷』が思い浮かび、今年3月頃に企画した」。望月氏の思惑通り、閉場時間までイートインスペースには老若男女が入れ代わり立ち代わり現れる。昨年で4回目を迎えた「芋博」に続く、同店ならではの催事として愛されるのか。客の氷菓、いや評価が待たれる。
(野間智朗)