ディーン&デルーカ、ポップアップに注力 全国30都市で61回開催
「DEAN & DELUCA(ディーンアンドデルーカ)」を運営するウェルカムは、期間限定で出店する「旅するDEAN & DELUCA POP UP STORE」の展開に力を入れている。同社は百貨店や生産者と協力関係を築きながら、既存店のない地域へのPOP UP STOREの出店を続け、2020~23年で日本全国30都市、61回の開催を計画。23年度は盛岡の川徳を皮切りに、24年6月までに全国27カ所での開催を予定する。
DEAN & DELUCAは、世界のおいしいものを集めた食のセレクトショップ。1977年にジョエル・ディーンとジョルジオ・デルーカによってニューヨーク・ソーホーにオープンしたマーケットストアだ。日本国内ではマーケットストアの19店舗、カフェの28店舗、スペシャルティストア(ワインストア)の1店舗を展開する。
同POP UP STOREは百貨店などがある全国の都市に出店して、マーケットストア、カフェからよりすぐりの商品を提供している。新型コロナウイルス禍で行動制限が続いた20年に「『見て、食べて、初めてわかるおいしさ』をより多くの人に体感していただく場をつくりたい」との思いから、コロナ禍前まで年に1~2回程度だった期間限定出店を全国14カ所に拡大。その後も規模を広げ、23年6月までに30道府県で61回開催され、レジ客数は37万人以上に上った。22年度は26回開催(開催日数314日)して約14万人が利用。23年度はすでに27カ所で開催が決定している。
期間限定出店とはいえ、店舗設計は既存のマーケットストアを模して徹底的に行う。商品数も厳選はしつつ人気商品や季節商品をラインナップ。限定トートバッグや、各会期に合わせた限定のハッピーバッグセットも用意する。調理やイートインの設備が整う会場では、マーケットでも人気のデリメニューのラザニア・キッシュ・シェフズサラダなどをキッチンで製造し、ドリンクメニューも取り揃える。
百貨店のバイヤーなどからの紹介で現地の生産者を訪ね、地域限定商品も共同で開発する。鳥取県では朝採れのブルーベリーでスイーツを、沖縄県では県産イチゴをフレッシュジュースにして販売した。
出店増加に伴い、販売員も充実させた。主幹のイベントプロモーションチーム以外に、販売に従事するスタッフをグループ内の約1800人から募集。延べ1250人が店頭で接客業務を行った。1会期あたり1~2週間という期間中、毎日3~4人が本社や各店からローテーションで参加。「モチベーションの向上」や「『おいしい』を伝える仕事の原点を見つめ直す機会」を参加目的とし、マーケット・カフェ店舗・キッチンスタッフ同士が普段とは異なる環境で交流することで、横のつながりにも発展をみせた。
中には、取引のある生産者を訪ね、店舗に並ぶ商品がどのようにつくられているのかを見る機会を自ら得たり、各地の文化や食の探求を仕事に生かそうと、観光やその土地の食文化に触れたりするスタッフもいるという。さらにポップアップの会場で実際に働いている姿を家族に見せるといった、ワーケーション的な新しい働き方も生み出されている。
5月から同POP UP STOREを開催した百貨店は、浜屋百貨店(5月25日~6月7日)、静岡伊勢丹(5月31日~6月11日)、大和富山店(6月14~27日)、大和香林坊店(6月16~29日)、川徳(7月15~11日)、丸井今井札幌本店(7月15~24日)で、8月には山形屋(8月2~15日)での開催を予定している。
(塚井明彦)