2024年11月24日

パスワード

購読会員記事

松屋銀座店で「林家たい平 うつわ展」、百貨店初開催

松屋銀座店5階のプロモーションスペースで開催している「林家たい平 うつわ展」。期間は6月21~29日

松屋銀座店は29日まで、「林家たい平 うつわ展」を開催している。落語家の林家たい平氏(以下、たい平氏)が一つ一つ手書きで染め付けした約150点の波佐見焼の器を展示。「食卓を囲んだみんなが笑顔になって福を招く!」という想いを込めてつくられた様々な絵柄や形、大きさの器を揃えて、販売も行う。百貨店での開催は初となり、初日にはたい平氏本人も登場。報道陣向けに会見が開かれ、波佐見焼への想いや自身の制作について語り、実際に染め付けするデモンストレーションやタイトル看板へのペイントも披露された。

今回用意された約150点の器は、長崎県波佐見町にある西山窯で制作された。昨年と今年3月に工房に行き、それぞれ1泊2日の間で朝7時から夕方5時まで作業して仕上げたという。たい平氏は元々器が好きで、20年以上前に知人の紹介で訪れたことをきっかけに西山窯での制作を開始。1年に2~3回足を運んで器づくりに勤しんでいるという。

期間中、販売される器の数々。価格は4320円~5万5000円

展示スペースには「蛸唐草(たこからくさ)」と呼ばれる伝統的な柄の大鉢や、制作前日に夢に出てきた「木の葉」を絵付けした長角皿、そのほかポップな印象のトマト柄や、大きなストライプ模様といった抽象的な柄など、バリエーション豊かな表情の器が並ぶ。

たい平氏は会見で、日本の磁器文化の現状について語った。西山窯は大きな工房で以前は多くいた従業員が、一昨年に訪れた際には大分少なくなっていた。というのも、近年安価な海外ブランドが国内に流入するようになり、日本のブランドが衰退していっているという。「技術がここで途絶えてしまうと、また職人を育成するのは大変だ。世界に日本の冠たる磁器の素晴らしさを残すためには、発信していくことが大事。何か自分にできることはないかと思った」(たい平氏)と、今回のうつわ展開催に至った経緯を説明した。

これまで波佐見焼の多くが有田焼として流通していた過去にも触れ、「波佐見焼は強度のある磁器で、日常使いできるのも魅力のひとつ」。続けて「日常の中にある美しさや笑い、楽しみも、自分のやっている落語とちょっと似ている」と、波佐見焼と自身の落語との共通点についても語った。

場所は銀座店5階のプロモーションスペース。紳士服や紳士用雑貨などの売場中央に位置する。開催場所について、当初はギャラリーなども考えたが「日常の中にあって輝くのが波佐見焼。あえて(夫婦など多くの人が訪れる百貨店の)5階で開くことに意味がある。すてきな試みで、どういう反応があるか自分でも楽しみ」と、たい平氏は笑顔を見せた。

美大でデザインを学んだ経歴を持つたい平氏。紙皿に植物や文字などのモチーフを自由に描いていく

プロモーションスペースに置くタイトル看板にも「蛸唐草」を付けていく

当日は、実際に本人による絵付けも披露された。用意された紙の絵皿に、自身が普段使っている面相筆で模様を描いていく。絵柄のインスピレーションは「器(の形)が教えてくれる」という。プロモーションスペースの入り口に置く看板も、その場で蛸唐草の絵付けをして完成させた。

会見の最後に、記者からたい平氏に今回のうつわ展の「なぞかけ」を求める場面があった。たい平氏は開店と同時に客で賑わう展示スペースに目をやり、数秒すると「『うつわ展』とかけて『6月21日から6月29日』までと解く。その答えは、『やっぱり時期(磁器)が大切』」。会見は大きな笑いと拍手で締めくくられた。

(中林桂子)