2024年11月22日

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東急グループの渋谷まちづくり戦略「Greater SHIBUYA2.0」(上)

東急グループ渋谷まちづくり戦略“Greater SHIBUYA”最新情報発表会

2012年に開業した「渋谷ヒカリエ」をリーディングプロジェクトとして、100年に1度という東急グループによる渋谷再開発プロジェクトが進行している。同グループによる渋谷の街づくりは第2ステージに入り、今後も渋谷駅前や周辺部に再開発事業の完成が続く。そこで「東急グループの渋谷まちづくり戦略」を3回に分けて取り上げる。1回目は、東急株式会社渋谷開発事業部事業部長坂井洋一郎氏が解説した「Greater SHIBUYA2.0」を紹介する。


「Greater SHIBUYA2.0」を語る坂井部長

多様なカルチャーが集積しているエンタテイメントの街である渋谷で、我々東急グループはアイデンティティーを確立してきた一方、街の発展とともに安全性などの課題が浮き彫りとなったことを踏まえ、再開発は渋谷の強み――4社9路線が乗り入れ、19年度で1日当たり約330万人を誇る世界第2位のターミナル駅、多様な世代・文化的背景を持つ人々が自由に交流・活動している多様性など――を強化すること、課題――渋谷特有の谷地形、鉄道路線や国道246号による東西南北の分断、駅構内の複雑化、駅施設や駅周辺ビルの老朽化など――を解決することを大きな目的として進めています。

2002年に東急東横線と東京メトロ副都心線の相互直通運転が決定し、地上にあった東横線渋谷駅の線路が地下に潜ることで、その上部開発が可能になりました。05年には渋谷駅周辺地域が都市再生緊急整備地域に指定され、以降も国や東京都からの特区指定が開発の後押しとなり、12年に工事ヤードとして使用していた「東急文化会館」の跡地に「渋谷ヒカリエ」が開業。13年には東急東横線と東京メトロ副都心線との相互直通運転が開始、そして地上にあった東横線渋谷駅と線路跡地周辺に「渋谷ストリーム」と「渋谷スクランブルスクエア」の開発が始まり、鉄道改良を開発与件とすることで44万㎡ほどの建物規模を誕生させることが可能となりました。

こうした開発経緯を踏まえ、敷地に余裕がなかった渋谷駅周辺地域に開発余地が生まれたことで、再開発機運が高まり、渋谷スクランブルスクエア(第Ⅰ期)と同じ19年に「渋谷フクラス」が開業。そしてこれから開発される「Shibuya Sakura Stage」、続いて渋谷スクランブルスクエア(第Ⅱ期)が開業の運びとなり、駅中心5街区の整備が完成した暁には、東急・東急不動産による85万㎡のTODプロジェクトが完成します。TODとは車に頼らず公共交通機関の利用を前提に組み立てられた都市開発のことで、それは街と駅とのつながりを意識した駅・街一体開発で都心開発を創造していくという、我々が渋谷再開発で具現化する世界でも類を見ないプロジェクトとなります。

駅と街のつながりをつくるには、駅周辺の歩行者ネットワークの充実が不可欠。今日では渋谷を代表する景色となってきた歩行者デッキ、アーバン・コアによるネットワークの形成を行政や事業者などの様々なプレイヤーとともに駅ビル開発と連動して整備を進めることで、面的な街づくりが実現されていきます。

東急グループの広域渋谷圏(Greater SHIBUYA)構想

今後に向けては、渋谷スクランブルスクエアがⅠ期と一体となった安全で快適な広場空間を整備していきます。また、駅ビル事業の推進、それと一体となった駅周辺の基盤整備による人の集積と渋谷の価値向上に伴い、他社のデベロッパーも加わり、今、渋谷では100年に1度といわれる240万㎡規模の開発が進められています。

東急グループとしては第2フェーズに向けて、24年度開業計画の「渋谷アクシュ」(渋谷2丁目17地区)、23年11月竣工のShibuya Sakura Stage、27年度竣工予定の「Shibuya Upper West Project」を契機にして、さらに渋谷駅周辺へ開発エリアを拡大していきます。緊急整備地域内においては、駅中心5街区に85万㎡と同程度の規模で新しいプロジェクトを進めていく予定です。

渋谷の街はさらに面として広がり、今年の夏に「大橋会館」、10月に「Forestgate Daikanyama」の開業、24年春の「東急プラザ原宿『ハラカド』」(神宮前六丁目地区第一種市街地再開発事業)、25年2月に「代々木公園Park-PFI計画」の供用開始を控えています。

東急グループは“エンタテイメントシティSHIBUYA”と“Greater SHIBUYA(広域渋谷圏)構想”の2つのビジョンを掲げ、渋谷駅周辺における再開発を推進するとともに、地元、事業者など関係者と協力して街の課題解決と街の価値向上に取り組んできました。これらの取り組みにより、例えば渋谷ヒカリエが12年に開業した以前と比較して渋谷駅の1日あたりの乗降客数が約10%増加。渋谷に不足していたオフィス床に関しては再開発を通じ東京ドームの7.4個分の134.7万㎡が供給されました。渋谷スクランブルスクエアの展望台「渋谷スカイ」はインバウンドの盛り上がりもあり、今年3月には過去最高の動員数を記録する賑わいとなっています。

一方で人口動態の変化、テクノロジーの進化、国際都市間の競争激化、環境問題への関心の高まりなど、加速する社会変化に対し迅速な対応が必要になっています。そこで我々は100年後も持続可能な街づくりにおいて21年7月、新しい街づくり宣言「Greater SHIBUYA 2.0」を策定しました。

これまで掲げてきたビジョン、Greater SHIBUYA1.0をより強化していくことに加え、暮らす要素により注目し、「働く」、「遊ぶ」、「暮らす」の3要素の融合と、その基盤となる「デジタル」、「サステナブル」に取り組むことで相乗効果を生み出し、渋谷でしか体験できない「渋谷型都市ライフ」の実現を目指しています。

21年11月には、本戦略の推進に向けて東急不動産に「Greater渋谷戦略委員会」を発足しました。渋谷型都市ライフについては渋谷駅周辺のShibuya Upper West、Shibuya Sakura Stage、渋谷アクシュの3つの新規プロジェクトにも実現させていきます。

渋谷駅周辺将来開発イメージ

Greater SHIBUYA(広域渋谷圏)については、各エリアそれぞれの特性を生かし、新たな仕掛けやコミュニティの創出を渋谷中心地区と連携しながら行うことで、この街の楽しみ方をさらに拡大していきます。今夏に開業する大橋会館は池尻大橋エリアのクリエイターと協業して立ち上げる、カフェ、バー、レストラン、シェアオフィス、レジデンス、サウナなどを配置した施設となり、代々木公園Park-PFI計画は東京都初のPark-PFI事業で、東急不動産と東急の共同プロジェクトとなります。これに加え東急プラザ「ハラカド」、Forestgate Daikanyamaの開発も進んでいます。

東急グループにとって渋谷は創業以来の最重要拠点であり、我々の街づくりを象徴する街でもあります。渋谷の街の魅力向上に向けて、地域の皆様や行政などと協力しながら総合的に街づくりを推進していきます。

(塚井明彦)