2024年11月22日

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大丸松坂屋百貨店の「明日見世」第8弾は地域にスポット、低価格プランも導入

大丸東京店4階の「明日見世」は地域のものづくりにスポットを当て、第8弾をスタートした

大丸松坂屋百貨店が大丸東京店の4階に構えるショールーミングストア「明日見世(asumise)」は5月31日、「地域とつながる ものづくり」をテーマに第8弾をスタートした。国内の名品を揃えて好評だった第4弾「日本各地の個性をめぐる」のリバイバルとして展開する。新型コロナウイルスの収束化で増える外出と、夏の旅行シーズンを控えたタイミングに、各地域の人や資源、自然や技術などにフォーカスしたクラフトマンシップあふれる全23ブランドを集積する。期間は8月22日まで。

明日見世は「出会いの循環から新しい可能性を生み出す場」のコンセプトのもと、商品背景にある各地域の文化や産業などの認知度拡大に注力してきた。東京店は日本各地から旅行客が訪れることも多く、第4弾では「自分の地元だけどこのブランドは知らなかった」といった声も聞かれ、反響は大きかったという。本社経営戦略本部DX推進部デジタル事業開発担当の長谷裕香氏は「地域色を打ち出したビジュアル戦略が奏功した」と、振り返る。

今回より、商品の特徴をわかりやすく伝えるアイコンをポップに掲載する

こうした成功事例から「商品特徴をよりビジュアル化してお客様に伝えたい」(長谷氏)と、「アップサイクル」、「地域共生」、「MADE IN JAPAN」、「クラフトマンシップ」のアイコンを作成。該当するアイコンを各商品ポップに表示し、今回の2大テーマである「地域」と「ものづくり」を打ち出す。

静岡ならではの特色を詰め込んだ「Chakara(チャカラ)」。茶葉の香りが楽しめるアイテム

「Chakara(チャカラ)」は、5月31日にローンチしたヴィーガンレザーのブランドだ。静岡県浜松市に本社を置く自動車内装皮革の製造会社が「廃棄される地場の茶葉を生かして自社ブランドをつくりたい」と、茶葉を練り込んだレザーでバッグやマルチケースなどを商品化した。出店依頼時はまだブランド創設の途中で「明日見世の場でぜひ披露したい」と、今回の出店に至った。“メイドイン静岡”にこだわり、製造も地元で行う。革からほのかに香る“お茶の匂い”は「リアル店舗でしか味わえない商品の魅力」(長谷氏)としてアピールする。

「iriser-イリゼ-」は繊細で美しいガラスのアクセサリーをラインナップ

福島県相馬市に工房を構える「iriser-イリゼ-」は、ハンドメイドのガラス製アクセサリーブランドで、ピアスやネックレスなど世界観のあるアイテムを製作する。東日本大震災で人が流出し「活気を失った町に元気を取り戻したい」と、約7年前に工房を設立し、4年前にブランドが誕生。雇用を生み出し、地元の活性化に寄与している。大丸松坂屋の社員が福島県の地域創生組織に出向していたことをきっかけに、半年を掛けて交渉し出店につなげた。

「職人 MADE 大川家具」は、実際の家具をネコ用のサイズに仕上げた。ペットとお揃いのインテリアにもできる

「職人 MADE 大川家具」は、日本有数の家具の産地である福岡県大川市にある家具メーカーが集まって展開するブランド。人間用のソファをサイズダウンしたネコ用のソファ「ネコ家具」には、メーカーそれぞれの巧みな技術とデザインが生かされている。「地元が誇れる家具技術を広めたい」と、市が旗振り役となり、各メーカーに声を掛けたことから実現した。

「momono(モモノ)」は、稀少な「三光桃」のつぼみから抽出したエキスを配合する。高い保湿効果があり、年齢性別問わず使える

「momono(モモノ)」は、大分県中津市の特産品「三光桃」のつぼみから抽出したエキスを配合したスキンケアブランド。地元でOA機器の販売やシステムコンサルティングなどを行うオフィスワタナベの渡邊直二社長が、高齢化で桃の生産者が減少している現状を知り「地元農家を支援したい」と、農園の運営に乗り出したのが始まりだ。成長促進のため剪定した後、廃棄せざるを得なかった大量の桃のつぼみを生かせないかとアップサイクルした。

ほかにも、静岡の下駄メーカーがアーティストとコラボレーションし、ヒノキの間伐材でつくる現代的な下駄の「mizutori(ミズトリ)」や、ヘアメイクアップアーティストの篠原雅氏がプロデュースする北海道産素材のみを使用したアロマキャンドルや練り香水などの「RelmE(レルメ)」といった、地域色豊かなブランドが集まった。

新規導入した低価格プランでの出品商品を集めたブース。ミニマムな什器を用意して組み上げた

売場づくりでは新たな試みもある。15万円と低予算で出店できるプランを導入。既存の45万円、90万円のプランとは差別化し、展示区画を小スペース化して、積極的な接客で得た客の声をフィードバッグするサービスを省いた。それぞれの商品ポップには推奨箇所とブランドサイトのQRコードを掲載する。

価格をネックに出店を断念するブランドも少なくない。「新しい芽を持つブランドに焦点を当て認知度拡大を支援するのが、当初からの目的の1つでもある」(長谷氏)と、選択肢を広げて出店増を狙う。

明日見世はこれまで、様々な施策を講じて売場づくりを行ってきた。第7弾では、収益性向上と、その場で購入を希望する客に応じるため、自動販売機の設置にも踏み切った。予想以上に反応は上々で、売場の前を通り興味を持った客も取り込めているという。今後も、出店ブランドと顧客双方のニーズに柔軟に対応しながら、さらなる集客と収益化を目指す。

(中林桂子)