アラ商事、SDGsと「共創」本格化
アラ商事は、SDGsにつながる物づくりや他社との「共創」を本格化する。ネクタイをはじめとするネックウエアのオーダーやイージーオーダー、アップサイクル、リメイクなどを増やすとともに、これまで培ってきた技術や生地などを生かして他社からネックウエア以外の需要を掘り起こす。新型コロナウイルス禍が一段落し、贈答需要やビジネスパーソンの自家需要が回復。主力のネクタイは好調に推移するだけに、世界的な関心事や新たな収益源に照準を合わせる。
SDGsでは、ネクタイのオーダーやイージーオーダー、アップサイクル、リメイクなどに力を注ぐ。例えばアップサイクルでは、ネクタイを製造する際に残った生地で蝶ネクタイやラペルピン、缶バッジ、ヘアアクセサリーなどをつくる。リメイクでは、使い古したネクタイをスナップタイやポーチ、ペンケースなどに再生する。リメイクは百貨店業界の各社でイベントも実施しており好評だ。オーダーやイージーオーダーは過剰な在庫の抑制につながる。
他社との共創では、5月に開いた展示会でグループ会社が手掛けた生地を紹介。「グラフィカルジオメ」や「絹紡糸(けんぼうし)」、「モガドール」、「デニムライク」、「カットジャカード」など多彩で、オリジナルブランドの「アルファクリエーション」でネクタイやチーフ、マスク、ペンケース、ブックカバーなどもオーダーによって1つから生産できるとPRした。
商機の拡大では、ネックウエア以外の提案を積極化。「美と健康」のカテゴリーに乗り出し、シルクの枕カバー、アイマスク、睡眠用ネックマフラーなどを揃え、特に睡眠に関するニーズを取り込む。
MDを担当する皿谷啓氏は「ネクタイはもちろん、ネクタイを製作する技術を生かし、色々な企業とのコラボレーションを加速させていく。加えて、SDGsの取り組みも不可欠だ」と強調する。
今秋冬に向けては、コロナ禍で価値観が変わり、「良いモノを長く」という志向が強まったため、従来以上にクオリティーを追求する。
オリジナルブランドの「アールダム」が象徴的だ。焼けたようなグレイッシュワイン「バーントレッド」を経糸に用い、独特の光沢感とシャンブレーが印象的なグループ、メランジサテンなど無地のシリーズ、拡大するブライダル需要を見込んだ新小石丸を使用したフォーマルなどを打ち出す。
アールダムはマフラーのラインナップも充実させる。光沢感と心地良い風合いが特長の独自素材「シルクスフレ」に、新たにモダール(レーヨン)を経糸に使ってドレープ性を高めた「シルクモダール」の無地のマフラー、シルクを糸から起毛したニットマフラーなどを追加。カシミヤと異なりアレルギーのある人にも安心という利点もアピールする。
アールダムはマフラーのラインナップもシルクを中心に再編。「シルクスフレ」と銘打った、柔らかく肌に優しいミニマフラーを導入する他のオリジナルブランドも、個性を際立たせる。アレサンドロは「ブリティッシュライン」でリバーシブルネクタイをチーフとセットで提案。コーディネイト時に、ちらりと見える裏側のカラーが新鮮だ。若年層の支持を集めて売れ行きが良い「フォスカ」は、大剣と小剣のデザインが異なる「コンビネーションタイ」を用意。ベーシックなパターンの大剣に、うさぎなどの小動物、コーヒー、ラテアートなどを散りばめた小剣を合わせた。
ライセンスブランドは、デザイン性や世界観を重視。「カルバンクライン」は独自性の高いデザインで知られるが、新柄を加え、無地やマイクロパターンなども充実させた。「ポールスチュアート」では、シルク100%ながらウールのような素材感を出した新作が登場。「ダックス」や「ピエールカルダン」、「マリクレール」は、ブランドの“らしさ”を前面に出した。
展示会では、主要販路である百貨店の担当者に向けて、時系列に合わせた売場づくりも示した。ネクタイの動きが鈍い夏場には、着脱が容易な「スナップタイ」、芯地がなく軽いエアリータイ、定番のニットタイ、扇子をTシャツ、ポロシャツなどとの着こなしで、提案。秋の立ち上がりにはアールダムの無地のバリエーションを多種多様に並べる方法で、それぞれ購買意欲を喚起する。
ネクタイという中核を堅持しつつ、新たな収益源を育て、アラ商事はメーカーとしての存在感を高める方針だ。
(野間智朗)