クイーポの「genten」、今秋冬は革の個性を生かし“穏やかな心地良さ”
クイーポの「genten(ゲンテン)」は今秋冬、革の特徴や風合いを打ち出し、使う人が心地良さを感じられるアイテムを充実させる。定番の牛革から羊革、稀少なラクダの革までを使用したバッグや財布などで、本物の植物の葉を革に入れ込んだオリジナリティあふれる商品も登場。ブランドのアイコン的シリーズの全面リニューアルにも着手する。
コンセプトは「Peace Of Mind 穏やかな革心地」で、“革心地(かわごこち)”は、ブランドデザイナーによってつくられたワード。天然素材である革の質感や職人の温かみのある手仕事から、穏やかなリズムを感じてほしいという想いを込めた。「ゲンテンにとって自然なものである革。人が穏やかに暮らすためには、こうした自然物に囲まれることが大事なのではないか。それに触れた時の心地良さを表現した」と、営業本部営業販促室の尾山俊介主任は語る。
その“革心地”を最も体現するのが、柔らかなシープスキンで仕立てた「パディ」シリーズ。仏産の軽量なウールシープを使用し、しっとりとしながらも、ふかふかとした感触が使う人に心地良さを与える。革の内側に綿を入れたパーツを網代のパターン状につなぎ、メッシュのように見立てたキャッチーなデザイン。タンニンなめしにより使い続けることで増すツヤと、深く濃くなっていく色の変化が楽しめる。ショルダーや手持ちタイプのバッグなど4型とポーチや財布の小物5型を、9月に展開する。
同月に、スペシャル感のあるユニークな財布も登場する。「フィトリート2」は、1枚の革の中に本物の植物の葉を閉じ込めた標本のようなシリーズ。2種類の異なるシダの葉を革に挟み込み、職人の手で磨き上げて葉の表情を浮き出した。使用する牛革は、革工芸に使用する高品質な無染色のヌメ革。表面の繊維のきめ細かさと革に含まれる良質なオイル効果で、シダの葉の繊細さを表すことに成功した。口金タイプの長財布1型で、一つ一つの個体差や、使うごとにあめ色に変化する趣が味わえる。
フィトリート2は今回がシリーズ2回目で、前回は21年秋冬に「フィトリート」としてカスミソウを採用した財布を発売した。大量生産できないことから、ほぼ完売したという。尾山氏は「毎シーズン展開していきたいとデザイナーとも話しているが、素材の開発に時間が掛かる」と、容易ではない製作に言及。「実際に本物の植物が入っていることが大事で、より自然らしさに特化した商品」(尾山氏)と強調する。
10月には「ハーミル」シリーズで、ラクダの革を使った長財布、二つ折り財布、マネークリップの3型が登場する。使用するのは中東国の食用副産物であるラクダの原皮で、手触りの良いしっとりとした質感と、シミや傷も含めた深みのある革の表情が、唯一無二の存在感を放つ。加工用の革で安定供給されるのは、主に牛、山羊、豚で、稀少なラクダの革はゲンテンでは10年ぶりの使用だという。「とても貴重だとされるラクダに加え、羊やパイソンなども負荷のない範囲で使っていきたい」(尾山氏)。
今回、定番シリーズ「マルチカットワーク」の全面リニューアルにも踏み切る。仕様とデザインを刷新し、タウンユース向けに「ボールドカットワーク」として8月末より販売する。素材は牛革で、開口しやすい「天ファスナー」、見開きの良い「オープンポケット」と「両あおりポケット」を採用。花と星をモチーフにしたオーナメントを胴体前面に集中させ、横縞状に連続させたシャープで落ち着いたデザインに変更した。トートバッグやトラベルに適したサイズ感のショルダーバッグなど4型を揃える。
尾山氏は今後について「つくり手やデザイナーの想いに共感して購入するお客様が増えてきている。職人の手仕事や、自然素材としての革の魅力など、商品の背景にある部分を伝えていきたい」と、熱意を込めた。
(中林桂子)