2024年11月22日

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エキソアレ西神中央、百貨店とSCの融合型で好発進

2022年4月1日にグランドオープンを果たした「エキソアレ西神中央」

百貨店からSCに転換した「エキソアレ西神中央」は単なるSCではない。西神中央で約30年間に亘って愛され続けた百貨店の強さと、SCが持つ本来の強さとを融合した商業施設として立ち上げた。西神中央のランドマークを目指した、エキソアレ西神中央のグランドオープンまでの取り組みを探った。

2022年4月1日にグランドオープンしたエキソアレ西神中央。同施設のある西神中央は、兵庫県神戸市西区の中心に位置する。同エリアは西神南、神戸研究学園都市と合わせて日本で最初の職住接近型として開発された「西神中央ニュータウン」で、三宮のベッドタウンとして発展した。駅を中心に住宅、商業、医療、公共機関などが集中し、神戸市の地域を活性化する「リノベーション・神戸」プロジェクトによる再整備が進む。

このプロジェクトの先駆けとして同施設はオープン。20年8月31日に閉じたそごう西神店を全面改装し、西神中央の新たなランドマークを目指して誕生した。そごう西神店の撤退表明に伴い、20年4月に賃貸者公募が開始され、双日とプライムプレイスが連名で公募に参加。20年8月中旬に優先交渉権を得て、双日が運営者、プライムプレイスがプロパティマネジャーとして共同運営することが決まり、プロジェクトは本格的に稼動し始めた。

百貨店跡地は地下2階~地上6階、商業フロアは1~6階、店舗面積は1万5600㎡。神戸市営地下鉄西神山手線の西神中央駅に直結し、商業施設「プレンティ」に隣接する。

「エキソアレ西神中央」は、駅直結の好立地で多くの客を呼び込む

そこに新たに立ち上げたのは、百貨店から生まれ変わったSC。当時オペレーションセンターサブマネジャーだった山端亮治氏は、そごう西神店の閉店当日、別れを惜しむ大勢が訪れる光景を見て「30年間に亘って街のシンボルとして愛されてきた百貨店であることを痛感した」と話す。

双日とプライムプレイスは、地域と深く関わってきた百貨店の形態全てを排除しなかった。新たなコンセプトは「日常にある良質な生活拠点」。百貨店の強みと歴史を引き継ぎ、プライムプレイスのSC運営のノウハウと融合させ、リーシングやゾーニングなどに反映した。「ショッピングセンターに転換しても、百貨店が築き上げた歴史と文化を継承してリニューアルのコンセプトに落とし込んだ」(山端氏)。

エキソアレ西神中央は、百貨店が閉じた3カ月後の20年12月4日に「西神中央駅ショッピングセンター」として先行オープン。「店を早く開けてほしい」、「食品の売場だけでも開けてほしい」という地元住民からの要望が神戸市に殺到したからだ。双日とプライムプレイスも、食品売場については当初より早期開業を提案。また地元住民の声を受けて神戸市からも早期開業の要望があったことから、1階の食品フロアと5階のレストラン・サービスフロアの一部の暫定オープンに踏み切った。

この暫定オープンは、一筋縄ではいかなかった。百貨店とSCの形態の違いが大きな壁となり、リーシングやゾーニングの練り直しに加え、移転交渉にも手間取った。55店舗中25店舗が百貨店とともに退店しており、フロア内は虫食い状態。百貨店とSCでは運営方法にも大きな違いがあり、消化仕入れとなっている百貨店の契約形態を、定期建物賃貸借契約に変更した。それぞれの異なるルールには不信感も生じていた。

しかしその後、双日とプライムプレイスが密なコミュニケーションに努め、課題解決に向けた会議を頻繁に開催。決断を早く下すようになったことで、現場は動きやすい環境に変化した。山端氏は「プライムプレイスの早期開業を可能にさせた最大の要因はコミュニケーションにあった。テナント側に一方的に話すのをやめ、理解し合うまで何度でも話し合い、信頼してもらうことに努めた」という。

暫定オープン直後は「待ってました」とばかりに客が押しかけ、しばらくの間「開けてくれてありがとう」の言葉が飛び交った。山端氏は「業務内容を伝えることより、何度も話し合いをしたコミュニケーションの方が優っていた」と振り返り、「地域の方々の期待に応えるという我々の思いを果たすことができた」とも語る。

そして、グランドオープンへと駒を進めた。しかし、すんなりとはいかなかった。営業しながらの工事となるため、段取り、スケジュールの調整などハード面で支障が出た。1階については退店しているテナントがあり、虫食い状態だったため、段取りを細かくスケジュール化して段階的に工事を進めていった。2~4階は解体工事を必要とするため、騒音と振動の発生を考慮。内装管理室や工事会社と連携した。百貨店時代からの食品フロアなどにある設備は老朽化がみられ、更新する必要もあった。

1階の食品は百貨店の強みを継承することを念頭に置き、当初は百貨店ブランドでテナント構成する計画で進んでいたが、誘致が困難を極めた。そこで発想を転換。地域で必要とされる形に切り替え、百貨店クオリティを維持することにした。フロアは洋菓子、和菓子、惣菜、ギフト、スーパーなどで構成。スーパーは「パントリー」で、洋菓子には「ケーニヒス クローネ」、「アンリ・シャルパンティエ」、「モロゾフ」、「ゴディバ」などが揃う。和菓子は「宗家 源吉兆庵/満華惣」、「神戸元町本高砂屋」などで、惣菜は「グリーン・グルメ」、「新宿さぼてん」などが出店。ベーカリーは「ドンク」だ。百貨店時代からの大理石の床は、そのまま利用して懐かしい雰囲気を出した。

1フロアで約1000坪ある2階以上はSCらしさを持たせた。エリアに大型店の集積がなかったことを踏まえ、それを中心に構成。隣接している商業施設のプレンティとはエリアで連携し、棲み分けできるかどうかを第1にリーシングした。導入した大型店は2階が「無印良品」、3階が「ニトリ」、4階が「TSUTAYA BOOKSTORE」、5階はレストランと学習塾・予備校などだ。

全61店舗がほぼ満床でグランドオープンしたエキソアレ西神中央は、見事に好発進。「百貨店時代から継続営業しているテナントからは『百貨店時代には来られなかった若いファミリーが多くみられ、驚いている』、『クリスマス当日の売上げが梅田にある百貨店を上回り、西日本一を記録した』といった声が挙がった」(山端氏)。「百貨店の閉店で一度失ったランドマークをエキソアレとして再生できた」と、山端氏は強調した。

双日とプライムプレイスは行政、地元企業、地域住民などと連携したエリアマネジメント活動を始めており、開業2年目も地域連携に力を入れていく方針だ。すでに開始した取り組みもいくつかあり、双日とプライムプレイスが共同でSCに隣接するプレンティ広場の利活用支援業務を神戸市から受託。エリアの活性化に向けて多彩なイベントを展開する。行政、地元のバス会社、双日、プライムプレイスが共同で、買物不便地域で商品を販売するバスを利用したプロジェクトの試験運転も実施している。

(塚井明彦)