2024年11月25日

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「芋博」売上げ4年で4倍超 そごう横浜店も客も“ホクホク”

「フランダースフリッツ」には朝から行列が生まれ、連日午前中で完売した

そごう横浜店が大事に熱を入れ、“美味しい結果”を手にした催事がある。2019年に始めた「芋博(いもはく)」だ。文字通りサツマイモやジャガイモのスイーツ、惣菜などが全国から集う1年に1度の“イモの祭典”で、老若男女を問わず支持され、22年の売上げは19年の4倍以上を記録。客にとっても、同店にとっても“ホクホク”だ。

昨年の第4回芋博は12月6~21日に8階の催会場で開催。会場を一昨年の2倍に広げるとともに、29種類の焼きいもをはじめ、いもけんぴ、大学いも、サツマイモを使ったモンブランやかき氷、みたらし団子などジャンルを問わないスイーツを揃えた。イートインも1カ所から2カ所に増やし、サツマイモの天ぷらと塩味のソフトクリームの組み合わせで知られる「Tempura Motoyoshi いも」(東京都)、焼きいものかき氷を提供する「やきいも処 DoCo?弐番館」(山形県)が登場。その場で食べられる楽しさを強化した。

イモの範囲も拡大。ジャガイモのフレンチフライ、コロッケなどを用意した。甘味だけだと飽きが早いため、間に塩味を挟めるようにして“無限ループ”を促し、客単価を引き上げる狙いもある。

昨年の第4回はジャガイモも追加。「ビストロ南家」はフレンチフライを販売した

第4回も成功裏に終わった。地元の福井県では1日に2000本が売れた実績を有する「フランダースフリッツ」の「芋菓子屋 みたらし芋団子瓶」は連日午前中で完売。干しいもとは思えないみずみずしさが人気の「ほしいもの百貨」(茨城県)にも行列が絶えず、2カ所のイートインも盛況だった。売上げの約3分の1を占める焼きいもでは、第1回から名を連ねる「よっしーのお芋屋さん」(長野県)が断トツだ。店主の「よっしー」こと吉川ゆうじ氏の巧みな話術も客足を吸い寄せる。

第4回の売上げは第1回の4倍以上に膨らんだ。第3回から芋博を主導する大村隆介営業Ⅲ部食品ギフト課物産展係販売リーダーは、ヒットの理由とポイントを説明する。

「サツマイモのブームが長く、季節性もある。当店では12月の風物詩としても定着した。ポイントは、ただ有名店に出てもらうのではなく、会場のつくり方から相談し、できるだけオリジナルメニューの開発を依頼する。間にイベンターらを介さず、全て直接交渉しており、だからこそ出てくれた有名店もある。品揃えでは焼き芋が最重要で、次いでいもけんぴ、大学いも、干しいも。昔ながらでありながら若年層が注目する菓子の売れ行きが良い」

ブームを的確に捉え、出店者とコミュニケーションや提案を欠かさず、新規開拓にも努め、客の志向を分析して品揃えに反映する。しかも自分達で、だ。例えばフランダースフリッツは、大村さんが「インスタグラム」で見付け、電話で交渉して出店にこぎ着けた。芋博が売上げを伸ばし続ける背景には、こうした姿勢がある。

百貨店業界内でも注目される芋博だが、そごう・西武の他店や他社には広がっていない。サツマイモの特性、出店者の多さ、低い単価がネックだ。「芋博のメインは焼きいもだが、事前にサツマイモの熟成が必要で、品質へのこだわりが強い出店者に配慮すると12月はギリギリ。1月は初売りとクリアランスセールに関連した家族向けの催事があり、2月はバレンタインデーとの両立が難しく、3月以降は季節感にそぐわない。準備は夏頃に始めるが、出店者と個別に交渉するのも手間暇がかかる。単価も、焼きいもなら500~700円で、北海道物産展などと比べて低い」(大村氏)

継続には困難を伴うが、同店は今年も芋博の開催を予定。アフターコロナへの移行を踏まえ、焼き立てを食べられる、食べ歩きを楽しめるといった“ライブ感”を表現する方針だ。収益面も「商品単価を上げるのではなく、買い回りや再来店を増やす」(大村氏)ような工夫を凝らし、向上につなげる。

同じ“イモ”なら、サトイモやヤマイモ、タロイモやヤムイモなども仲間に入れられる。芋博は無限の可能性を秘めており、そごう横浜店の冬の風物詩としての存在感は、芋以上に…いや、今以上に際立っていきそうだ。

(野間智朗)