熱気高まる“サ活”(2)地域密着で独自性を深化する高島屋横浜店
サウナブームの熱波が、百貨店にも押し寄せている。サウナに関する催事やコンテンツを発信する店が増えてきた。当連載では、その事例を追っていく。第2回は、高島屋横浜店が手掛けるサウナのポップアップだ。すでに4回開催し、最初は手探りの状態だったが、ブラッシュアップを重ねて内容を充実させている。中でも地元の横浜市の温浴施設との連携に力を入れており、今年4月末から開催している第4弾は横浜市浴場協同組合の全面協力のもと、加盟している全施設とのコラボレーションを行った。ブームが続いているとはいえ、サウナを扱う催事やコンテンツが急増する中で、地域密着による独自性の創出に活路を見出している。
第1弾の「横浜髙島屋×サウナランド サウナに人生を奪われた人展」は、2021年11月3~16日に紳士雑貨売場のイベントスペースで行われた。同売場はその頃、アウトドアなど、コロナ禍を機に浸透したジャンルのイベントを行っていた。アウトドアの催事も好評だったが、「今まで百貨店がやっていなかったテーマをやりたい」と考え、サウナの企画を立ち上げた。
しかし最初は、「サウナ」というテーマでどのような売場をつくり、収益を得るかのイメージができず、企画は難航したという。そんな中、箕輪厚介氏が手掛けたサウナ専門誌「サウナランド」の存在を知った。何かヒントを得たいと考え声を掛けたところ、先方も好意的な反応で、「売場で雑誌の世界観を表現する」というアイデアがまとまった。「私達は専門的な知識がある訳ではないので、サウナを通じたライフスタイルなどを提案できたら、当店でやる意義があると考えた」と販売第2部紳士服ストアマーチャンダイザーの金子泰明次長は説明する。
当時はサウナを扱う百貨店催事がほとんど無かった上、コロナ禍ということもあり、そこまでの来客を予想していなかった。しかし、サウナを好きな客が多く集まり、催事は盛況。普段同店に来ない客も多く、20万円のサウナテントが2台売れるなど、売上げも好調だった。ただ、それが逆に「商品を十分に用意できなかった。各地の温浴施設のTシャツを展示したが、反響が大きく、売る分を用意しておけばよかった」(金子氏)と反省点にもつながった。
こうした第1弾の成果を踏まえ、22年4月27日~5月9日に第2弾「サウナはぜんぶ違って、ぜんぶいい『横浜髙島屋×サウナランド SAUNA GRADATION~サウナグラデーション~』」を開催した。場所は8階の催事場と規模を拡大し、サウナランドの力も借りながら、全国各地のサウナグッズを大量に用意。サウナ後に食べる「サウナ飯」の限定商品や、サウナ―に人気のドリンクも販売した。
前回、各地の温浴施設のTシャツの展示が好評だったことから、地元の温浴施設の特集も行った。これは金子氏が直接交渉に行き、「スカイスパYOKOHAMA」、「天然温泉 満天の湯」、「横浜天然温泉SPA EAS」、「綱島源泉湯けむりの庄」の4施設が出店。施設の紹介やグッズを販売し、横浜DeNAベイスターズとのコラボ商品の販売も行った。
売上げは前回の約2倍を記録。横浜の温浴施設の企画やベイスターズとのコラボ商品も好評で、「改めて横浜愛の強さを感じた」(金子氏)という。
これを受け、続く第3弾の「LOVE YOU~湯ぅ~YOKOHAMA」(同年10月5~18日)は、さらに地元色を深めた。金子氏が以前から注目していたという、横浜市金沢区の「亀遊館(キユウカン)」が加わり、地元の温浴施設が5施設出店。各施設と横浜DeNAベイスターズがコラボしたオリジナルサウナグッズも販売した。
さらに今年4月26日から開催している第4弾「らぶ湯yokohama ~サウナも銭湯も欲張りたい~」は、より横浜を盛り上げるため、横浜市浴場協同組合が協力。横浜の銭湯の魅力を伝える「わたしだって銭湯に行きたい」(~5月9日)を6階で、サウナ初心者の女子に向けた「わたしだってサウナ女子になりたい」(~5月2日)を4階で展開する。
横浜の銭湯は2012年におよそ95軒があったが、現在は約50軒と減少傾向にある。横浜市浴場協同組合の「横浜を盛り上げたい」という想いに共感し、全施設とコラボすることになった。6階では50施設と連動した湯めぐりスタンプラリーを開催し、暖簾や番台などフォトスポットも用意して、レトロな地元の銭湯の魅力を紹介。横浜DeNAベイスターズと各施設がコラボしたサウナハットも販売する。
4階はスカイスパYOKOHAMAとコラボし、高島屋横浜店の若手女子社員が使ってみたいと思うお洒落なサウナアイテムを開発・販売。サウナ業界は現在はブームが続いているものの、男性用の浴場しかない施設も多いため、「女性客を増やしたい」という意識があるそうだ。中でもスカイスパYOKOHAMAが積極的で、今回のコラボへと至った。ほかにも初心者にやさしい横浜市内のスパ施設が出店し、テントサウナなども展示している。
徐々に地元との協業の規模を拡大しているが、今後も同様の催事を検討しているという。「今回のコラボで、横浜市浴場協同組合がとても喜んでくださった。もっと時間を掛けて企画を練り、さらに横浜を盛り上げられる企画ができたら」(金子氏)。元々横浜エリアには地元愛が強い住民が多く、同店もそこに訴える企画を多く行ってきた。サウナ催事でも“横浜”を全面に押し出すことで、他の百貨店との差異化や、新客との接点の創出を狙う。
(都築いづみ)