2024年11月22日

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東急たまプラーザ店、菓子売場を新装 売上げ前年の約1.3倍と好発進

3月2日に新装オープンした、東急たまプラーザ店の菓子売場。ショップの数は約20から約30に増えた

2日に新装オープンした東急百貨店たまプラーザ店の菓子売場が好調だ。百貨店ならではの国内外で有名なブランド、東急沿線で支持が厚いブランド、おやつやパーソナルギフトに強いブランドなどを新規に導入し、ショップの数を約20から約30に拡充。菓子売場の売上げは3月14日時点で前年の約1.3倍に膨らんだ。従来は少なかった若年層の姿も目立つ。同店は「近隣に住む親子3世代のファミリー」に照準を合わせ、2019年度(19年2月~20年1月)から全館規模の改装を推し進める。食品売場も19年3月に生鮮品やグローサリーなどを揃える「デイリーゾーン」を刷新。新型コロナウイルス禍でも売上げを伸ばしてきた。しかし、菓子売場はコロナ禍前から右肩下がり。リニューアルでV字回復を狙う。

同店の食品の売上げは65歳以上が半分を占め、55歳以上では約7割、45歳以上では約9割に上る。中高年のロイヤルティが高い反面、30代以下を取り込み切れていない。坪田憲一たまプラーザ店東急フードショー営業統括部食料品統括マネジャーは「次世代顧客の獲得が必要」と強調するとともに、「洋菓子が弱かった。生菓子も通常の百貨店より少ない。また、3000円台のギフトは充実していたが、より上の価格帯、あるいはパーソナルギフトに適した1000円台、日々の購入が見込めるおやつなどは手薄」と分析。菓子売場の再構築を決めた。

ポイントは①次世代顧客に響くワールドクラスなラグジュアリーブランド②パーソナルギフトを強化できる、単品に強いブランド③沿線ローカライズ――の3つだ。沿線ローカライズは「東急沿線や神奈川県のブランドの充実」を指し、坪田氏は「地元愛が強いお客様が多い」と意図を説明する。

①は「ピエール・エルメ・パリ」や「ピエール マルコリーニ」、「京橋千疋屋」、「叶 匠壽庵」を、②は「ナガラタタン」、「プレスバターサンド」、「POP UP SHOP by シュクレイ」、「モンロワール」、「ルピシア」、「山田屋まんじゅう」、「ラ・メゾン アンソレイユターブル パティスリー」(13日にオープン)を、③は「鎌倉ニュージャーマン」、「コパン・ド・フジモリ」、「和菓子専門店 TERADAYA」、「パティスリー ラ・マーレ・ド・チャヤ」(30日にオープン)を、それぞれ誘致。自主編集売場「諸国銘産」も新装し、東急沿線や神奈川県の銘菓を訴求するコーナーを設けた。

ピエール・エルメ・パリやピエール マルコリーニ、コパン・ド・フジモリ、京橋千疋屋が並ぶゾーンは従前、食品売場の最奥部に当たり、客足が乏しかった。幅広い世代や用途を見込めるブランドを配置して、その改善も目指す。

改装に伴い、店装や照明などの環境も整備。例えば各ブランドのサインの大きさや壁面の高さなどを工夫し、客の視認性と回遊性を向上させた。

新生・菓子売場は絶好のスタートを切った。初日の売上げは前年の3倍で、食品売場全体も同2倍と盛況。14日時点でも、菓子売場は同1.3倍と勢いが持続する。けん引役は洋菓子で、同1.8倍だ。以前のウィークポイントがストロングポイントに転換した。ブランド別ではピエール マルコリーニ、ピエール・エルメ・パリ、京橋千疋屋、モンロワール、POP UP SHOP by シュクレイが人気。シュクレイが展開する10以上のブランドのうち1つが3カ月間隔で登場するPOP UP SHOP by シュクレイは、2日から販売する「バターバトラー」が絶好調だ。ナガラタタンは手土産需要を引き出した。

行列が絶えない「POP UP SHOP by シュクレイ」。シュクレイが手掛けるブランドが、3カ月に1回の頻度で入れ替わる予定だ

菓子売場にとって3月のヤマであるホワイトデー商戦も「これまでにない賑わいで、土日の動員は驚くほどだった」(坪田氏)という。クリスマスやバレンタインデーなど、今後の歳時記需要への期待は大きい。

客層の変化はデータを収集中だが、「肌感覚では親子3世代が増えており、ある日には女子高生からTERADAYAの場所を聞かれた」(坪田氏)と手応えを掴む。今後は「LINE」を使った販促策を軸に、新客の固定化や既存顧客の買上げ促進につなげる。

2月1日付で就任した、東急たまプラーザ店の西野俊夫店長は「食品と化粧品は東急百貨店にとって重点カテゴリーであり、新しいお客様を呼ぶためにも重要。道路を挟んで反対側には東急モールズデベロップメントが運営する複合商業施設『たまプラーザテラス』があるが、そこからの来店がまだまだ少ない。『百貨店の菓子売場が新しくなったから、道路を渡って寄っていこう』と言われるように、東急モールズデベロップメントと連携し、たまプラーザテラスでも告知していきたい」と意欲を燃やす。

生鮮品やグローサリー、惣菜などはコロナ禍でも自家需要に支えられて売上げを伸ばしており、菓子売場もV字回復を描く。食品売場の視界は良好だ。

(野間智朗)