そごう・西武、NFTアートのマーケットを自社運営
そごう・西武はデジタルアートへの取り組みとして、NFTのマーケットプレイス(電子市場)の運営を始める。「NFTを媒体としたソーシャルネットワーキングの場」をコンセプトに、顧客接点の多い百貨店の強みを生かし、客とアーティストの交流の場を創出。デジタルアートを所有、応援するといった体験を提供し、注目を集める「NFTアート」の認知度向上と新たな客層の獲得を狙う。オープンは4月中旬で、3人の作家による約50作品を出品。3月14~27日には、西武渋谷店で事前告知イベントを開催。ウインドウや店内で、NFTアートをモチーフにした作品を展示する。
同社は近年、アートを大きな戦略の1つと位置付け、クリエイターによる店頭装飾やオーダー商品の受注会、直接交流できる似顔絵イベントなどを実施。西武渋谷店では、1980年代から若手の現代アーティストを発掘、起用し、企画展示や作品販売を積極的に行ってきた。
デジタルアートはこれまで複製が容易にできることから、偽物や改ざんされた作品が市場に出回るといった問題点があった。そうした中、ネットワーク上で取引記録を暗号化し記録する「ブロックチェーン」の仕組みを利用した「NFT(非代替性トークン)」により、複製が困難なNFTアートが実現。作品の真正性が守られ、作家への正当なロイヤルティの発生にもつながった。
同社は、今回の取り組みに百貨店ならではの3つの優位性を挙げる。1つ目は「百貨店が運営しているという安心感」で、興味はあるが利用する機会がなかった客や、NFTに心理的ハードルのある客に対して、信用できる利用機会を用意する。2つ目は、店舗内にアート売場を持ち、定期的に美術関連の催事を行う同社特有の「アーティストとのネットワーク」。既存のNFTに参入していないアーティストの紹介も可能にする。3つ目は「リアル空間の活用」。アクセスしやすい立地にリアルな場を持つ百貨店の利点を生かすことで、より多くの人にNFTアートを広めることができる。
使用するブロックチェーンは、他社のNFTマーケットプレイスでも流通可能なパブリックチェーンの「Ethereum(イーサリアム)」と「polygon(ポリゴン)」を採用。将来的にはクレジットカードでも決済できるようにする。
NFTアートは、高い注目度がありながらまだ一般的とは言えない。同社は自社のNFTマーケットプレイスをクローズな環境にとどめず、多種多様なNFTアートの流通を実現し、誰もが身近にアートを楽しめる土壌をつくる。