コーセー、アフターコロナで口紅の拡販に本腰
コーセーは、13日からマスク着用が個人の判断に委ねられ、5月8日には新型コロナウイルス感染症法上の位置付けが「5類」に移行するのを踏まえ、これまで伸び悩んでいた口紅の拡販に乗り出す。同社はこれまで以上にマスク着脱の機会が増えると想定。リップメイクのニーズが高まることを見据え、新商品の投入や販促で購買意欲を喚起する。3月10日~12月31日の期間中、「唇を、裸にしない」をメッセージにキャンペーンも実施。マスク装着の有無にかかわらず、一人一人が楽しめる口元のメイクを提案する。
同社は「ヴィセ」で5月16日、ツヤと色が持続する口紅「ネンマクフェイク ルージュ」を発売する。唇に塗布すると分離する2種類のコート層の働きで、高透明度の膜が唇をコーティングしてマスクへの色移りを防ぐ独自技術を搭載。鮮やかな発色とツヤを長時間キープする。カラーは全6色、価格は1540円。
同社が行った男女500人へのアンケートでは、今後はリップメイクを楽しみたい人が多く、さらには「ラスティング(色持ち)効果」を求める人も多数いることが判明した。新型コロナウイルス禍ではマスクに付着しにくいマットタイプが人気だったが、それでは得られないツヤ感と、仕上がりの持続性の双方を兼ね備えたリップへのニーズの高まりに着目。近年人気のツヤがあり自然な血色感を与える“粘膜色”ルージュにフォーカスし、「ラスティング機能に特化した粘膜色のリップ」の開発に着手した。
「実は口紅においてツヤとラスティング効果の両立は難しい」と、同社研究所のメイク製品研究室リップメイクグループの森洋輔氏は化粧品研究者の立場から前置きする。口紅は、うるおいを与えるオイルと色味を付ける色素、それを固めるワックスで生成される。従来はラスティング効果を高めるのに、粉体を高配合して付着性を上げたり、皮膜形成剤で塗布膜全体に強靭さを与えたりする技術を応用するため、不透明でマットな膜になりやすかった。ツヤを出すオイルは剝がれやすいのが特徴で、化粧崩れにつながる原因となっていた。
そこで、それぞれの効果の両立に1つの化粧膜ではなく、2つの化粧膜で叶える発想に着地。「ツヤのあるフィルムコート層」と「密着性のあるカラー層」の2種類のオイルが、塗布後に2層に分かれる機能を持つ「口紅分離技術」の開発に成功した。
ポイントは2つのコート層をきれいに分離させることで、森氏はこれを「ハイクリアセパレーションテクノロジー」と呼ぶ。分離を促す成分の配合や、2層が混在しないよう分離をブーストさせる処方設計、フィルムコート層の厚みを維持する粘度設計などの研究を重ねた。これにより、唇上で2層がクリアに分かれて機能を発揮。透明なフィルムコート層がカラー層を厚く覆うことで、マスクなどにはフィルムコート層の一部のみが付着し、うるおいあるつややかな仕上がりの保持を実現した。
ツヤとラスティング効果の検証では、塗布から8時間後も同社の従来品より開発品の方が塗りたての状態が維持できており、マスクへの色移りも大幅に減少していることが確認できた。
商品発表会では、美術開発部ビューティークリエーションユニットのヘア&メイクアップアーティストの土橋脩氏によるデモンストレーションも行われた。男女のモデルに新商品を使用し、アドバイスを加えながらベースメイクとポイントメイクのテクニックを披露した。
同社の各ブランドの口紅やリップケアアイテムを対象に、トレンドのリップメイクを提案するキャンペーンを12月31日まで行う。店頭や公式サイト、鉄道の車内広告などを活用して展開する。
「自信がつく、元気が出る、心を明るくするといったリップメイクが持つ前向きなパワーを、ムーブメントとして盛り上げたい」と同社。復活の兆しを見せるメイク市場へのアピールに力を込めた。
(中林桂子)