森ビル辻社長、今秋開業する「虎ノ門ヒルズ」を語る(下)
森ビルは1月24日、今秋に開業を控える「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」(以下ステーションタワー)の記者説明会を開いた。ここでは「虎ノ門ヒルズ」の4棟目としてオープンする「ステーションタワーの計画概要と虎ノ門ヒルズの街づくりについて」を説明した森ビル代表取締役社長・辻慎吾氏のスピーチを取り上げる(一部省略あり)。
今秋オープンする「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」(以下ステーションタワー)について説明します。ステーションタワーの建築デザインは建築設計事務所OMAニューヨークの建築家、重松象平氏によるもので、グランドデザインのコンセプトは「アクティビティバンド」。新虎通りから赤坂・虎ノ門エリアに抜ける都市の軸線を意識し、その線上に人々の活動や緑が集積するようなデザインとなります。森タワーにつながるデッキはステーションタワーを貫通し、街をつなぐ要としての役割を担います。そのデッキの愛称が「T-デッキ」。T-デッキによって歩車分離を実現し、虎ノ門ヒルズのメインストリートにもなり、森タワーの「オーバル広場」とも連携して、人々をつなぐもう一つの広場となります。
ステーションタワー内の施設を紹介します。ステーションタワーには32フロア(15~44階)、約11万㎡のオフィスを整備します。基準階面積約3400㎡のグローバル水準のオフィスとして最高で最新の機能を備えます。特徴的なのは、オフィス専有部の8カ所にダイナミックな吹き抜け空間や上下階段をつなぐ階段を設け、レセプションやカフェテリア、リフレッシュルームなど多様な使い方ができる「マグネットゾーン」を整備したことです。今、人と人をつなぐオフィスの重要性が高まっています。私たちはコロナ禍前からその大切さに気付いていたからこそ、このようなオフィス環境を具現化できたのです。
ステーションタワーにはホテルも誕生します。客室数は205、コンセプトは街の施設や機能と連携する「街のホテル」。名称は「ホテル虎ノ門ヒルズ」で、ブランドは東京初進出となる「アンバウンド コレクション by Hyatt」です。街に開かれたレストラン、カフェ、ラウンジを備えたホテル虎ノ門ヒルズの誕生によって、次世代のビジネスパーソンにとって新たな選択肢となり、多様なゲストを迎え入れる環境が整うことになります。
虎ノ門ヒルズは交通結節点として、道路や鉄道などの交通インフラと直結した街づくりを行ってきました。いよいよ虎ノ門ヒルズ新駅が本格開業します。特筆すべきは街と駅をつなぐ広場です。広場名称は「ステーションアトリウム」。その面積は約2000㎡、3層吹き抜けにすることで天井高18メートルの明るくダイナミックな空間となります。これまで日本の地下鉄の駅に街と一体となった大規模な駅前広場がありませんでした。世界から人を迎える都市の駅には、これまでになかったような豊かな広場が必要だと考えていました。それが実現します。
その地下鉄駅前広場と直結した、約3000㎡の大型フードホール「T-マーケット」が登場し、新進気鋭のシェフが手掛ける27店舗が集結します。約80店舗、約1万4400㎡の商業空間にはT-マーケットのほかにも約2800㎡規模の大型セレクトショップ、都心最大級となる約2000㎡規模のウェルビーイング施設もオープンします。
虎ノ門ヒルズの街の中には様々なパブリックアートがあります。森ビルは「森美術館」を中心として文化・アートに力を入れてきました。文化・アートは人々の生活に豊かさをもたらすからです。ステーションタワーエントランス天井部にレオ・ビラリール氏の日本初展開となるパブリックアート、オフィスのスカイロビーにはラリー・ベル氏によるガラスのアート、外構部にはN・S・ハルシャ氏のブロンズ彫刻作品が展示されます。
このようにたくさんの魅力が集まった虎ノ門ヒルズという街に世界から人が集まり、新しいことが次々に起こっていく――。そんなグローバルビジネスセンターの要としてステーションタワー高層部に誕生するのが情報発信のための新拠点で、私達は「TOKYO NODE」と名付けました。
TOKYO NODEは最上部45~49階と8階に位置し、全体の規模は約1万㎡。46階のメインホール、45階の3つのギャラリー、49階のガーデン・プール・レストラン、8階のスタジオなどで構成された、極めてユニークな施設です。
それぞれの施設は単体利用も、連結した回遊型の会場として一体での利用も可能。さらに虎ノ門ヒルズフォーラム、アンダーズ東京、広場、新虎通りなど、街全体を発信の場としても活用できます。ビジネス、アート、エンタメ、テクノロジー、ファッションなど、ジャンルを超え、既存の形にとらわれずに発信できるのは、世界中を見渡しても前例のない舞台となるでしょう。
情報発信拠点の中心となるのは東京から全世界に向けて配信できる46階のメインホールで、座席数は338、ホール面積は約460㎡。リアルでの会場演出と体験価値の高いバーチャル配信をハイブリッドで行える、XR時代を想定した最新のホールで、新しいビジネスのプレゼンテーションから音楽などのライブパフォーマンス、ディナーパーティまで対応可能です。
45階の特徴は3つのギャラリー。360度の没入感を演出できるドーム型天井の「GALLERY A」、1000㎡を超える圧倒的大空間の「GALLERY B」、天井高12メートルの「GALLERY C」で、これら3つのGALLERYを合わせると「森美術館」に匹敵する規模となります。
そしてこの施設の象徴的な場所である、地上250メートルという都内随一の高さにある屋上に、オープンエアガーデンとインフィニティプールを配し、さらに世界トップレベルのシェフが手掛ける2つのレストランを配置しました。
ここではファッションショーやパーティの開催も可能で、ホールやギャラリー、レストランと一体的に活用できます。この唯一無二の環境が、訪れる人にとって特別の体験の場となるはずです。レストランの1つは、パリでアジア人初となるミシュラン フレンチ3つ星を獲得した小林圭氏監修のグリルレストランとなります。
業種、領域を超えて一流の才能やイノベーティブな企業が集結しているTOKYO NODEは、単なる施設にとどまらず、新しいものを生み出すための組織であり活動体です。NODEとは結節点を意味する言葉で、日本と世界をつなぎ、領域を超えて様々な要素をつなぐ、発信する都市。虎ノ門ヒルズを動かすエンジンとして機能していきます。人は予想できる未来ではワクワクしません。様々な出会いや化学反応で生まれる想像を超えた未来を世界は待っています。この期待に虎ノ門ヒルズという街は応えてくれるはず。
都市のあるべき姿を構想し実現する――。思えば、それが森ビルの都市づくりの歴史です。どのヒルズをとっても、その時代時代において次の東京のあり方を考え抜き、最先端の知見を結集し、そして虎ノ門ヒルズのグローバルビジネスセンターという提案を実現します。
そしてもう1つ、私達には完成させる都市開発プロジェクトがあります。「麻布台ヒルズ」です。「Modern Urban Village」をコンセプトにした全く新しい街が誕生します。自然と人が共生する環境を東京の都心で実現できる、広場のような街になります。ステーションタワーと麻布台ヒルズの2つのヒルズが23年秋に開業する予定です。この2つの街が東京に生まれることには大きな意義があります。
どちらも東京の都市の未来に必要な価値を提示しています。世界に先駆けてこれらの新しい価値を備え、東京は国際都市間競争に勝ち抜けるはずです。そしていつか、東京は世界一の都市になれるはずだと私達は考えます。東京の街力を高めることが、この国の未来を強くすると信じています。
これからも森ビルは都市をつくり、育み、ポテンシャルを引き出していきます。真のグローバルビジネスセンターを、この虎ノ門ヒルズで実現できたように、都市の未来像をビジョンとして示し発信するのが森ビルであり、挑戦する都市、ヒルズです。ここから始まる新しい東京に期待して下さい。
(一部省略あり)
【虎ノ門一・二丁目地区第一種市街地再開発事業の概要】
施行者:虎ノ門一・二丁目地区市街地再開発組合
所在地:東京都港区虎ノ門一丁目、二丁目の一部
施行地区面積 :約2.2ha
階数/建物高さ:
虎ノ門ヒルズ ステーションタワー(A-1街区)地上49階地下4階/約266m
グラスロック(A-2街区)地上4階地下3階/約30m
虎ノ門ヒルズ 江戸見坂テラス(A-3街区)地上12階地下1階/約59m
延床面積/用途:
虎ノ門ヒルズ ステーションタワー(A-1街区)=約23万6640㎡/事務所・店舗・ホテル・情報発信拠点・駐車場等
グラスロック(A-2街区)=約8800㎡/店舗・駐車場等
虎ノ門ヒルズ 江戸見坂テラス(A-3街区)=約8100㎡/事務所・住宅・店舗・駐車場等
着工:2019年11月
竣工:2023年7月(予定)
【虎ノ門ヒルズ全体概要】
所在地:東京都港区虎ノ門1丁目~3丁目、愛宕1丁目
開発区域面積:約7.5ha
延床面積:約79万2000㎡
オフィス面積:約30万5000㎡
住宅戸数:約730戸
店舗面積:約2万6000㎡
ホテル客室数:約370室
カンファレンス施設面積:約1万3300㎡
緑化面積:約2万1000㎡
(塚井明彦)