ベータ・ジャパン、新サービスで体験型ストアの開業と運営をサポート
2022/12/23 1:48 pm
ベータ・ジャパンは、販売を主目的としない体験型ストアを支援するサービス「by b8ta(バイ ベータ)」の販売を開始する。同サービスは、企業が体験型ストアを開業、導入、運営する上で必要なデータ分析ツール、什器制作や店舗デザインなどのハード面と、ブランディングやコンテンツ支援、接客トレーニングなどのソフト面の両方で支援するシステム。8つの項目で構成され、自社に必要な項目を選んで導入することができる。8月に部分的に販売を開始。同社のノウハウを求める企業からの声を受けて、12月9日に新規事業として正式に発表した。既に3社への導入が決定しており、2023年度中に30拠点での導入を目指す。
同社は、アメリカの「b8ta(ベータ)」からライセンスを取得し1月に独立。創業者が掲げたミッション「リテールを通じて人々に新たな発見をもたらす」の体現を継続し、商品体験に必要な店舗スペースと、自社のノウハウやデータ技術を活用した小売りシステム「RaaS(ラース)」の提案、提供を行う。自社におけるRaaSについて、「実店舗への出店をより手軽に実現するための包括的なサブスクリプションモデル」と定義する。
一般的なショールーミングストアと一線を画すのは、データが取得できること。店内の天井に設置されたAIカメラで客の行動を分析し、タブレットを活用して定量的なデータと定性的なフィードバックを蓄積し、出店企業のマーケティングに生かしてもらうというビジネスモデルだ。北川卓司代表取締役(以下、北川代表)は、「支持されているのは、ロケーションハントから日々のオペレーションまでを一気通貫でサポートするノウハウと知見」と、“売らない店”のカテゴリーをリードしてきた自負を覗かせる。
同社が展開する事業は2つで、1つ目は実店舗であるベータの運営。現在、国内に4つの常設店を持ち、来年春には大阪の阪急うめだ本店の8階にオープンが決定している。ポップアップショップも福岡や名古屋などで開催しており、今後も複数拠点での開催を目指す。“売らない店”というキーワードで多くのメディアが取り上げたことにも起因し認知度も上昇。多くの企業から「商業施設内に出店して欲しい」、「自社の店内スペースを体験型コーナーとして活用したい」といった声が寄せられた。
こうした背景からスタートさせたのが、2つ目の事業となるバイ ベータの外販だ。「“売らない店”売ります」をキャッチコピーに、自社で手軽に体験型ストアを始められるシステムを提供する。北川代表は「我々のノウハウを使っていただいた方が手軽に早くできる」とメリットを強調した。初期導入額について、40坪以上で同社の常設店舗を出店する場合だと約1億円必要だが、同サービスを利用すれば3分の1以下の金額で済むという。
同サービスは8つの項目で構成される。①ダッシュボード上で定量・定性データを管理し店内動向を可視化する「ソフトウェア」、②店内の行動分析を行うツールとして活用する「ハードウェア(タブレット)」、効率的な動線設計を叶える③「什器のデザイン・制作支援・店舗レイアウト」と④「店舗のデザイン・施工」、⑤店舗運営においてカギとなる接客をトレーナーが伝授する「売らないトレーニング」、⑥23年後半に開始予定の「b8taテスター(店舗スタッフ)の派遣」、⑦店舗や商品などの「PR・ブランディング支援」、⑧シーズンイベントや集客アイデアを考え実行する「店内イベント、集客案などのコンテンツ支援」。
8月に⑤を先行販売したところ、約60社から問い合わせがあった。具体的に話を進めていた約30社のうち、3社が来年春からの導入を決定。12月8日に都内で行われた事業発表会には3社も登壇し、導入理由や今後の展望などを語った。
愛知県・名古屋市に本社を置く「N2i」は、ウェブアプリケーションの開発を行うスタートアップ企業。ジェンダーレスアイテムに特化したECブランドの体験型ストア「my GAKUYA」を出店する。これまでポップアップショップの開催を続けてきたが、初の常設店として名古屋市の中でも賑わいのある栄エリアに出店する。篭橋裕紀代表取締役社長は「ブランドのファンを増やしたい」と、質の高い接客とブランドのキュレーションを行うため、⑤を導入する。「お客様からの体験データを、定性的なマーケットデータとして集約することを当社の強みにしたい」(篭橋社長)とも話し、それに必要な接客技術が得られるサービスを選択した。
東京都・渋谷区に本社を置く「兼松コミュニケーションズ」は、携帯電話ショップの運営や通信関連のシステムソリューションを行う。横浜駅構内に、取引先メーカーの新商品や、神奈川県の名産品や工芸品を取り扱うカフェを開業するに当たって①、②、③、⑤の4つを選択した。導入理由について、神田洋一郎エンターテイメント事業部部長は「商品の良さをしっかり知っていただく接客をする」ことの重要性に言及し、「新しい顧客との関係性を築いていけるのでは」と期待を込めた。
福島県・福島市に本社を置く東北最大規模のディーラー「福島日産自動車」も、①、②、③、⑤の4つを郡山店に導入する。市場調査したい商品があるという6社と話を進めており、AIロボットや大手家電メーカーの製品など異なる分野の商品とサービスを提供する。金子與志幸代表取締役は「郡山店に来店する年間約1万人のマーケティングデータを生かして、自動車とは異なる商品との販売シナジーを狙っている」と意気込み、「従来のBtoBのコミュニケーションからBtoCの付加価値をメーカーにフィードバックし、出品企業を増やしていきたい」と力を込めた。
今後の売らない店のマーケットについて、北川代表は「百貨店などでの店舗展開も含めてオンラインが伸びていく中、OMOの観点からもニーズが少なくなっていくことは考えにくい」と分析。「自社での運営が広がりにくいモデルだが、当社のサービス提供で(売らない店の展開が)加速し、広がっていくきっかけになれば」と、自信と期待を口にする。
現在も様々な分野の企業から引き合いが来ているという。30拠点の目標達成はそう遠くないようだ。
(中林桂子)